【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件②

【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件②

ナイフを持つ人

前回のコラムに引き続き、妻を包丁で刺し殺したとして殺人罪の容疑をかけられている事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都市伏見区小栗栖の集合住宅で女性(77)が死亡した事件で、京都府警山科署は9日、司法解剖の結果、死因は出血性ショックだったと発表した。(中略)同署は80代の夫が女性を包丁で刺したとみて調べている。
同署によると、(中略)夫から「妻を刺した」と110番があった。夫は自身の体も刺して搬送され、重傷という。無理心中を図った可能性があり、夫の回復を待って殺人容疑で事情を聴く方針。

(4月9日 京都新聞 「77歳女性の死因は出血性ショック死 80代夫が包丁で刺し無理心中か 京都市伏見区」より引用)

同意殺人罪

刑法第202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

同意殺人罪には、嘱託殺人承諾殺人があります。
承諾殺人とは、簡単に説明すると、相手の同意を得てその人を殺すことをいいます。
承諾殺人における同意は、この同意は真意に基づく同意である必要があります。

例えば、一緒に死のうと提案し相手に殺してもいいか確認した際に相手は冗談だと思って同意した場合には、実際に殺されることを認識していないわけですから同意を得ていたとはいえません。
ですので、相手が殺されることを認識したうえで同意している場合でなければ、承諾殺人にはあたらないことになります。

今回の事例では、容疑者である夫が妻を包丁で刺し殺し、自らの身体も包丁で刺したとされています。
また、報道によると無理心中を図った可能性があるようです。
無理心中の場合、前もって相手に殺すことに対して同意を取っていた可能性があります。
ですので、今回の事例で被害者が容疑者に殺されることに同意しており、同意のうえ、容疑者が被害者を刺し殺したのであれば、承諾殺人にあたり、殺人罪ではなく同意殺人罪が成立する可能性があります。

とはいえ、殺された被害者に同意の有無を確認することは不可能ですから、同意があったにもかかわらず、殺人罪が成立してしまう可能性があります。
そういった事態を避けるためにも、容疑者本人の供述も重要な証拠になってくるでしょうから、取調べの対策を立てておくことが重要になります。

初めての取調べでは緊張や不安からうまく話せない可能性があります。
また、警察官や検察官は供述を誘導してくる可能性があり、その誘導に乗ってしまった結果、自分に不利になる供述調書や意に反した供述調書を作成されてしまうおそれがあります。
事前に弁護士に相談をして、供述内容を整理しておくことで、こういった事態を避けられるかもしれません。

繰り返しになりますが、被害者が死亡してしまっている場合には同意の有無を確認することは難しく、実際に同意を得ていても殺人罪が成立してしまうおそれがあります。
刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に相談をすることで、殺人罪の成立を避けられる可能性がありますから、殺人罪の容疑をかけられている場合には、お早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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