【事例紹介】睡眠薬を飲ませたとして傷害罪の容疑で逮捕された事例
睡眠薬を飲ませて薬物中毒症状を生じさせたとして傷害罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
知人女性に睡眠薬を飲ませて薬物中毒症状を負わせたとして、京都府警中京署は8日、傷害の疑いで、京都市上京区、准看護師の男(32)を逮捕した。
(5月9日 京都新聞 「「二日酔いの薬やし」偽り睡眠薬飲ませる、女性が一時意識不明の状態に 知人の准看護師の男を容疑で逮捕」より引用)
逮捕容疑は(中略)、同市中京区のバーで、友人の女性会社員(32)に「二日酔いの薬やし飲んどき。めっちゃこれ効くから」などと話して睡眠薬を飲ませ、女性を店内で一時意識不明の状態にし、嘔吐(おうと)させるなど薬物中毒症状にした疑い。
同署によると、男は「薬を飲ませたことは間違いないが、何の薬を飲ませたかはあいまい」と容疑を一部否認している。
睡眠薬と傷害罪
刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
傷害罪を簡単に説明すると、人にけがを負わせた際に成立する犯罪です。
例えば、人を殴ってけがをさせたりすると傷害罪が成立します。
今回の事例では、睡眠薬を飲ませて薬物中毒症状を生じさせたとして傷害罪の容疑で逮捕されたと報道されています。
睡眠薬を飲ませて薬物中毒症状を生じさせた場合にも傷害罪は成立するのでしょうか。
刑法第204条では、「人の身体を傷害した者」について規定していますが、「傷害」とは何なのでしょうか。
「傷害」について、判例では「身体の生理機能の障害または健康状態の不良な変更」だと考えています。
今回の事例の被害者は一時意識不明の状態になったり、嘔吐するなどの薬物中毒症状に陥ったようですので、被害者の生理機能が害されたといえそうです。
ですので、睡眠薬を飲んだことによる薬物中毒症状は傷害罪の規定する「傷害」にあたる可能性があります。
傷害罪と認識
人の生理機能を害したからと言って必ずしも傷害罪が成立するわけではありません。
例えば、人を蹴ってけがを負わせた場合には、故意に暴行を加えた結果、人の生理機能を害しているわけですから、けがを負わせるつもりがなかったとしても傷害罪が成立します。
一方で、薬を飲ませたことで健康被害が起きた場合などの暴行によらない場合には、薬を飲ませるなどの行為により、相手の生理機能を害する可能性があることを認識している必要があります。
ですので、今回の事例では睡眠薬を飲ませることで、薬物中毒症状を引き起こす可能性があることを認識している必要があるといえます。
報道によると容疑者は「薬を飲ませたことは間違いないが、何の薬を飲ませたかはあいまい」と容疑を一部否認しているそうで、「二日酔いの薬やし飲んどき。めっちゃこれ効くから」などと話して睡眠薬を被害者に飲ませたそうです。
容疑者が二日酔いの薬を飲ませるつもりが誤って睡眠薬を飲ませてしまったのであれば、傷害罪は成立せず、過失致傷罪が成立する可能性があります。
また、容疑者が睡眠薬を飲ませるつもりで二日酔いに効く薬だと偽って飲ませた場合には、准看護師である容疑者には睡眠薬を飲ませることで薬物中毒症状を生じさせる可能性、つまり、生理機能を害する可能性があることを認識できたと思われますから、傷害罪が成立する可能性があります。
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