【事例紹介】SMS認証代行と私電磁的記録不正作出罪

私電磁的記録不正作出罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)を使った本人確認手続き「SMS認証」を代行し、SNS(交流サイト)のアカウントを依頼者に不正取得させたとして、京都府警サイバー犯罪対策課と城陽署は25日までに、私電磁的記録不正作出・同供用容疑で、神戸市の男子専門学校生(19)や東京都国分寺市の男子大学生(18)ら男女5人を書類送検した。
(中略)
書類送検容疑は、専門学校生と大学生が、依頼者側の20~30代の男女3人と共謀し、何らかの方法で入手した他人の電話番号と認証コードを依頼者側に提供し、SNSサイトのアカウントを不正取得させた疑い。
(中略)
捜査関係者によると、専門学校生と大学生は、オンラインゲームのキャラクターやアイテムを売買するサイトで、「アカウント1500円」などと認証代行をほのめかす投稿をしていた。
不正取得したSNSアカウントの一部は、売春グループの誘客に使われていたという。

(7月25日 京都新聞 「「SMS認証」代行でアカウント不正取得疑い、男女5人書類送検 京都府警」より引用 )

私電磁的記録不正作出罪

今回取り上げた事例で登場した私電磁的記録不正作出罪という犯罪は、刑法第161条の2第1項で規定されています。

人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。(刑法第161条の2第1項)

刑法が規定する「電磁的記録」とは、「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもの」(刑法第7条の2)とされており、磁気テープや磁気ディスク、ICメモリーなどが当てはまります。
また、権利・義務に関する電子的記録とは、銀行の預金元帳ファイル、乗車券などが当てはまります。
加えて、事実証明に関する電子的記録は、キャッシュカードの磁気ストライプ部分の記録、売掛金その他の会計帳簿ファイルの記録、パソコン通信のホストコンピュータ内の顧客データベースファイルなどが挙げられます。

簡単にまとめると、他人の事務処理に間違いを生じさせる目的で不正に電磁的記録を作成した場合には、この私電磁的記録不正作出罪が適用されることになります。

では、ここで、今回取り上げた事例と私電磁的記録不正作出罪を照らし合わせてみましょう。
そもそも、報道で取り上げられているSMSとは、「ショートメッセージサービス(Short Massage Service)」の略称で、SMS認証とは、携帯電話のSMSを利用して認証コードをやり取りすることで本人確認をする仕組みのことを指します。
このSMS認証について本人以外が代行すると偽名でサイトに登録できてしまいますが、今回の事例ではそれを悪用し、SNSサイトで不正にアカウントを取得したということです。

先ほど確認したように、他人の事務処理に間違いを生じさせる目的で不正に電磁的記録を作成した場合に私電磁的記録不正作出罪が成立します。
本人確認をするためのシステムであるSMS認証を悪用して本人ではない別人がアカウントを作成したという今回の事例では、本人ではない名義のアカウントを作らせるという、他人の事務処理に間違いを生じさせる目的で、SMS認証を利用して本人を装ったデータを作ることになりますから、私電磁的記録不正作出罪にあたると考えられたのでしょう。

私電磁的記録不正作出罪などは、なかなか生活の中で触れづらい犯罪でしょう。
こうした犯罪に問われた際、自身のどういった行為が法律のどの部分に触れているのか等が分かりづらく、適切な対応が分からないというケースも考えられます。
だからこそ、犯罪の容疑をかけられた段階で弁護士に相談し、自分にかけられた容疑や自身の認識をきちんと整理しておくことが大切です。

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