~事例~
京都府警宇治署は20日、器物損壊と公選法違反(自由妨害)の疑いで、京都府宇治市の男(73)を再逮捕した。
(※2022年7月20日19:32京都新聞配信記事より引用)
容疑を認めているという。
再逮捕容疑は、7月1日午前1時ごろに宇治市内のビル外壁に張られた政治活動用ポスター1枚を破り、2日午後9時すぎに同じ外壁に張られた参院選向けの同ポスター2枚を刃物で切った疑い。
男は、8日に政治活動用ポスターを切ったとして器物損壊容疑で現行犯逮捕された。
~選挙ポスターと公職選挙法(公選法)~
先日、参議院議員選挙が行われたことは皆さんの記憶にも新しいでしょう。
こうした選挙の際、候補者の選挙ポスターが掲示されているところを見たという方も多いのではないでしょうか。
今回取り上げた事例では、逮捕された男性は、政治活動用ポスターと参院選向けの選挙ポスターを刃物で切ったという事実で逮捕されています。
そのうち、参院選向けの選挙ポスターを切ったという事実については、公職選挙法違反(公選法違反)の容疑がかけられていることが分かります。
公職選挙法(公選法)では、以下のように選挙の自由を妨害する行為を処罰する旨を定めています。
公職選挙法第225条
選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
第1号 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき。
第2号 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。
第3号 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者若しくは当選人又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人を威迫したとき。
今回の事例のように選挙ポスターを切る行為や、選挙ポスターを破る行為、落書きする行為などは、このうち第2号の「…文書図画を毀棄し、…選挙の自由を妨害したとき」に当たると考えられます。
ここで、今回取り上げた事例では、男性は報道されている事件の前、7月8日に政治活動用ポスターを切ったことで器物損壊罪の容疑で現行犯逮捕されているとされています。
この政治活動用ポスターを切った件については、なぜ公職選挙法違反(公選法違反)ではないのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
公職選挙法(公選法)では、法律が適用される範囲について、以下のように定められています。
公職選挙法第2条
この法律は、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の選挙について、適用する。
つまり、選挙以外のものについては公職選挙法(公選法)の対象ではないということになりますから、今回取り上げた事例でいえば、参院選向けの選挙ポスターは公職選挙法(公選法)の対象となりますが、選挙に向けたものではない一般の政治活動用ポスターは公職選挙法(公選法)の対象外となることから、切って毀棄した場合には器物損壊罪が成立するにとどまるということになるのでしょう。
今回取り上げた報道でも、公職選挙法違反(公選法違反)と器物損壊罪が並べられているのは、一般の政治活動用ポスターと参院選向けの選挙ポスターが混ざっていたためだと考えられます。
今回取り上げた事例だけでなく、参院選ではほかにも選挙ポスターへの毀棄行為によって公職選挙法違反(公選法違反)で摘発された事例が報道されており、例えば、以下のような報道が見られます。
・参院選期間中に東京選挙区の候補者のポスターに黒のフェルトペンで落書きをしたという公職選挙法違反(公選法違反)の容疑で男性が逮捕された事例(2022年7月22日京都新聞配信記事より)
・参院選候補者の選挙ポスターに泥を塗ったという公職選挙法違反(公選法違反)の容疑で男性が逮捕された事例(2022年7月10日TBS NEWS DIG配信記事より)
選挙という民主主義の根幹にかかわる犯罪であるため、公職選挙法違反(公選法違反)は重い刑罰が設定されています。
「たかがポスターを破っただけ」「ポスターに落書きをしただけ」と思われるかもしれませんが、先ほど掲載したように、こうした選挙の自由を妨害したことによる刑罰は「4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」です。
早めに弁護士に相談し、どのような活動を行うべきなのかきちんと把握することが重要です。
公職選挙法違反(公選法違反)は、選挙にかかわる犯罪であるため、起こり得る期間が限定されており、馴染みのない犯罪顔しれません。
刑事事件を中心に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした馴染みの浅い犯罪に対しても、刑事事件を数多く取り扱う弁護士がご相談に乗ります。
まずはお気軽にご相談下さい。