京都市上京区で起きた準強制性交事件を弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都府警上京署は30日、準強制性交の疑いで、京都市上京区の会社員の男(25)を逮捕した。
逮捕容疑は5月21日午前3時ごろ、自宅で知人の男子大学生(22)=同市=に酒を飲ませ、酔いつぶれて抵抗できない状態にして性的暴行を加えた疑い。容疑を認めているという。
上京署によると、2人はSNS(交流サイト)で知り合った。5月下旬に、男子大学生が同署に被害を申告したという。
(6月30日 京都新聞 「男子大学生を酔わせ、性的暴行を加えた疑い 25歳の会社員男を逮捕」より引用)
準強制性交等罪
準強制性交等罪は、刑法178条第2項で「人の心身喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または心身を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。」と規定されています。
ここで言う心身喪失とは睡眠や泥酔、失神等の状態に陥り、性的なことをされている認識ができない場合のことです。
また、抗拒不能とは、性的なことをされている認識はあるが、拘束や恐怖などで物理的もしくは心理的に抵抗することが困難な場合を指します。
強制性交等罪とは異なり、準強制性交等罪が成立するにあたって、性交等をする際に暴行や脅迫が用いられる必要はありません。
ですが、準強制性交等罪は、上記で説明したような「心神喪失」や「抗拒不能」といった、被害者が抵抗することが困難な状態を利用したり、抵抗することが困難な状態にさせたりして性交等を行う犯罪ですから、手段などは異なったとしても、「抵抗が困難な被害者に性交等をする」という部分では、強制性交等罪と重なる部分があるといえます。
そのために、強制性交等罪に「準」ずる=準強制性交等罪とされているのです。
今回の事例では、逮捕された男性は被害者の男性を酔いつぶして性交等に及んでいるようです。
酔いつぶれた被害者は、性的なことをされている認識ができない=「心神喪失」の状態であったと考えられますから、そこに性交等をしたということで準強制性交等罪の容疑のかけられるに至ったのでしょう。
そして、準強制性交等罪では、加害者や被害者の性別に制限がありません。
ですから、今回取り上げた事例のように、男性同士の事件であっても準強制性交等罪は成立します。
「女性相手ではないから成立しない」「女性が加害者側であれば大丈夫」といったこともありません。
類似裁判例
では、準強制性交等罪を犯してしまった場合、どういった刑罰が下る可能性があるのでしょうか。
準強制性交等罪のできる前、旧刑法の準強姦罪で起訴された事例になりますが、類似裁判例を紹介します。
この裁判例の被告人は、他2人と共謀し、被害者を泥酔させて心神喪失にした上で、性的な行為を行いました。
この件だけでなく、被告人はさらに共犯者複数名と別の被害者2名に対して泥酔させた上での性的な行為を行っていました。
被告人はこの複数件の準強姦罪で有罪となり、懲役14年となりました。
(平成16年11月2日 東京地方裁判所)
この裁判例では、複数の同種余罪があったことや、複数人での犯行であったことから、悪質性が高いと判断され、これだけ重い判決となったのでしょう。
準強制性交等罪で有罪となった場合は強制性交等罪と同様に、5年以上の有期懲役となります。(刑法177条)
裁判例でみたような、余罪の有無や共犯者の有無、犯行の態様はもちろん、被害者への謝罪・弁償の有無や今後の監督体制など、どういった判決が下されるかは様々な事情が考慮されます。
事件全体の見通しはどういったものなのか、どういった弁護活動が適切なのかといったことも含めて、まずは弁護士に相談してみましょう。
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