[事例紹介]京都府与謝野町で人身事故②

[事例紹介]京都府与謝野町で人身事故②

前回に引き続き京都府与謝野町で起きた人身事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府与謝野町で昨年12月、乗用車が民家の外壁に衝突し4人が死傷した事故で、京都家裁は24日までに、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の疑いで家裁送致された舞鶴市の自衛官の男(19)を検察官送致(逆送)することを決めた。
(中略)
家裁の決定によると、男は、昨年12月7日午前2時ごろ、同町石川の国道176号を時速約100キロで走行し、雨で路面がぬれていた道路のカーブを曲がりきれずに民家の外壁に衝突。同乗者=当時(19)=を死亡させ、他の同乗者3人にも重軽傷を負わせたとしている。
男は昨年12月に宮津署に自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで逮捕され、3月に京都地検舞鶴支部が危険運転致死傷の疑いに切り替えて家裁送致していた。
(6月24日 京都新聞 「民家衝突し同乗者死亡「痛ましく結果は重大」 19歳自衛官を検察官送致」より引用)

今回の記事では、危険運転致死傷罪について解説していきます。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪も、前回の記事で取り上げた過失運転致死傷罪と同様に、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)に定められている犯罪です。
危険運転致死傷罪で有罪になると、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合には1年以上の有期懲役に処されることになります。(自動車運転死傷行為処罰法第2条)

また、自動車運転死傷行為処罰法が掲げる危険運転行為は以下になります。
①アルコールや薬物より正常な運転が困難な状態での運転
② 制御できないようなスピードでの走行
③制御する技能を持たずに走行させる行為
④ 人や車の通行を妨害する目的で、走行中の車の直前に進入し、その他通行中の人や車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度での運転
⑤ 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法での運転
⑥ 高速自動車国道や自動車専用道路(道路法において、車の通行を妨害する目的で、走行中の車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止または徐行をさせる行為
⑦ 赤信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑧ 通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度での運転

危険運転致死傷罪による裁判例

今回のAさんは、危険運転致死傷罪に問われていますが、危険運転致死傷罪の裁判例としては、以下のような裁判例が見られます。

被告人は、最高速度が時速60キロメートルに法定されている湾曲状の道路を、進行を制御することが困難な時速80キロメートルで走行し、退行歩行してきた被害者2人に対処しきれず、衝突してしまいました。
被害者のうち1人は加療約2週間の怪我を負い、もう1人は死亡してしまいました。
裁判所は、被告人の行為を、先ほど挙げた危険運転行為のうち、「②制御できないようなスピードでの走行」に当てはまり、危険運転致死傷罪の構成要件に該当すると判断しました。
また、被告人はスピードの出しすぎを同乗者に注意されていることや、安全に走行することが困難である時速80キロメートルで走行していたことから、被告人が進行を制御することが困難だと判断されるような高速度で走行していたことを認識していた(=危険運転行為をしていた故意がある)と認められ、危険運転致死傷罪が適用されることになり、被告人には懲役4年が言い渡されました。(以上、平成16年8月6日長野地裁判決)
※なお、この裁判例の時には、危険運転致死傷罪は自動車運転処罰法ではなく、刑法に規定されていました。

今回の事例でも、Aさんは自分の運転技術を誇示するために制御することができないようなスピードを出しており、裁判例で挙げた事例と同様、危険運転行為のうち②に該当すると判断され、危険運転致死傷罪に切り替えられたのではないかと考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、数多くの刑事事件を解決に導いた実績があります。
危険運転致死傷罪過失運転致死傷罪でお困りの際には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にお問合せください。
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