【事例紹介】ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件①
ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪の容疑で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事案
(前略)京都府警右京署によると、同日午前7時50分ごろ、同センターの男性職員(65)=西京区=が同僚の男にサバイバルナイフで左脇腹を刺されて重傷を負い、救急搬送された。同署は殺人未遂の疑いで、下京区小稲荷町、同センター職員の男(59)を緊急逮捕した。
(11月16日京都新聞「ごみ処理場の男性職員が同僚に刺され重傷 殺人未遂の疑いで緊急逮捕」より引用)
(中略)「殺してやろうと思って刺したのではない」と容疑を否認している。
殺人未遂罪
刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
大まかに説明すると、殺人罪は人を殺した場合に成立する犯罪です。
ただ、人を殺せば必ずしも殺人罪が成立するわけではなく、殺人の故意がある場合にのみ成立します。
殺人罪の故意とは、簡単に言えば、人を殺そうとする意志です。
例えば、交通事故で人を死亡させてしまった場合、加害者は被害者を殺そうと思って事故を起こしたわけではないでしょうから、殺人罪ではなく過失運転致死罪などの別の罪が成立することになります。
一方で、殺す意思をもって車で人を轢き殺した場合には、故意が認められますから、殺人罪が成立することになります。
また、殺人罪は未遂であっても罰せられます(刑法第203条)ので、殺す意思を持って人に危害を加えた結果、その人が死に至らなかった場合でも殺人未遂罪として罰せられることになります。
本件では、容疑者が同僚の左脇腹をサバイバルナイフで刺し、殺人未遂罪の容疑で逮捕されたようです。
本件の容疑者は「殺してやろうと思って刺したのではない」と容疑を否認していると報道されていますが、容疑者に被害者を殺そうとする意志があったかどうかは、どのように判断するのでしょうか。
繰り返しになりますが、殺人罪や殺人未遂罪が成立するためには、人を殺そうとする意志が必要です。
ですが、加害者が人を殺そうと思って危害を加えたのかについては、加害者以外知りようがないことです。
であれば、加害者が殺す意思を持っていたかどうかは加害者にしか判断できず、加害者が殺す意思はなかったと容疑を否認すれば、故意がないことを否定できませんから、殺人罪は成立しないことになってしまいます。
ですので、殺す意思があったかどうかについては、加害者の供述以外にも、動機や凶器の有無、危害を加えた箇所や回数、加えた力の強さなど客観的な部分も含めて総合的に判断されます。
例えば、ハンマーで人の頭を数十回殴って殺してしまった場合に、殺すつもりはなかったと、殺す意思を否定した場合であっても、ハンマーで頭を数十回殴れば人が死ぬことは誰でもわかることですから、殺す意思があったとして殺人罪が成立する可能性が高いです。
本件では、容疑者が被害者の脇腹をサバイバルナイフで刺したとされています。
腹部には重要な臓器が多数ありますし、サバイバルナイフであれば1度刺されただけでも致命傷を負いかねません。
ですので、本件では、殺す意思があったと判断され殺人未遂罪が成立するおそれがあります。
また、殺す意思があったかどうかについては、様々な観点から複合的に判断されますので、本件も含め、ナイフで腹部を刺した場合でも殺人罪や殺人未遂罪は成立せず、傷害罪、傷害致死罪にとどまる可能性もあります。
殺人罪と釈放
殺人罪や殺人未遂罪は、他の犯罪と比べて科される量刑が重くなる可能性が高いため、逃亡のおそれがあるとして釈放や保釈が認められづらい犯罪です。
刑事事件では、逮捕されてから72時間以内に、検察官が勾留請求をする必要があるかを判断します。
勾留請求が必要だと判断された場合には、検察官によって勾留請求がなされ、裁判官が勾留の判断を行います。
弁護士には検察官が勾留請求を行う前と裁判官が勾留の判断を行う前の計2回、勾留請求に対する意見書を提出する機会、すなわち釈放を求める機会があります。
この2回の機会を失ってしまうと、勾留満期である勾留決定後10日までに釈放を求めることができるのは勾留決定後に行う裁判所への準抗告の申し立ての1回のみになってしまいます。
勾留満期を迎える際には、一度だけ勾留期間を10日間延長することができます。
この際にも弁護士は勾留延長請求に対する意見書を検察官や裁判官に提出することで、釈放を求めることができますし、勾留延長が決定した後に準抗告を申し立てることが可能です。
また、釈放されずに起訴された場合には、裁判所に対して保釈請求を行うことになります。
保釈の場合には、勾留中の釈放とは異なり、保釈金を納める必要があります。
保釈が認められた後に保釈金を納めることで、身体拘束が解かれることになります。
先ほども述べたように、殺人罪や殺人未遂罪の場合は釈放が認められづらく、一度も釈放や保釈がされないまま裁判に突入してしまう可能性が高いです。
釈放や保釈が認められづらいとはいえ、必ずしも釈放や保釈が認められないわけではありません。
弁護士が釈放や保釈の必要性、家族の監督により逃亡のおそれがないことを訴えることで、釈放や保釈が認められる可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
弁護士に相談をすることで釈放や保釈を実現できる可能性がありますので、ご家族が逮捕された方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
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