副流煙で覚醒剤取締法違反に?

副流煙で覚醒剤取締法違反に?

副流煙覚醒剤取締法違反に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市左京区に住んでいるAさんは、区内にあるクラブXに足を運びました。
クラブXの個室の一角で飲酒をしていたAさんですが、その付近で他の客が何かをあぶって煙を吸っている様子でした。
Aさんもその副流煙を吸ってしまいましたが、しばらくすると気分が高揚してくるようでした。
Aさんは、「この煙はきっと覚醒剤などの違法薬物だろう」と気付きましたが、「自分自身で使用しているわけではない」と考え、その場に3時間以上留まり続けました。
すると、京都府川端警察署の警察官がクラブXに訪れ、捜査の結果、Aさんから覚醒剤の陽性反応が出たため、Aさんは覚醒剤使用による覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、「副流煙を吸ってしまっただけで、故意に覚醒剤を使用したわけではない」と主張しています。
Aさんは、逮捕の知らせを受けた家族が依頼した弁護士との面会で、事件について相談してみることにしました。
(※神戸地裁姫路支部判令和2.6.26を参考にしたフィクションです。)

・副流煙を吸って覚醒剤取締法違反に?

多くの方がご存知の通り、覚醒剤を使用することは覚醒剤取締法違反となる、犯罪行為です。

覚醒剤取締法第19条
次に掲げる場合のほかは、何人も、覚醒剤を使用してはならない。
第1号 覚醒剤製造業者が製造のため使用する場合
第2号 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者が施用する場合
第3号 覚醒剤研究者が研究のため使用する場合
第4号 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
第5号 法令に基づいてする行為につき使用する場合

覚醒剤取締法第41条の2第1項
覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。

覚醒剤使用事件では、捜査機関によって尿検査などが行われ、その検査の結果陽性反応が出ることで逮捕・勾留されてさらなる捜査が行われるといった流れをたどることが多いです。
今回のAさんも、京都府川端警察署の捜査によって陽性反応が出たことから覚醒剤使用による覚醒剤取締法違反を疑われているようです。

しかし、Aさんは、あくまで副流煙の影響で陽性反応が出ただけで自分で覚醒剤使用をしたつもりはないと主張しているようです。
たしかに、多くの犯罪は故意犯=犯罪にあたる行為であることを認識しながらその行為をすることが犯罪成立の条件となる犯罪です。
今回問題になっている覚醒剤取締法違反も故意犯です。
今回のAさんは覚醒剤使用の故意がなかったと主張していることになるでしょう。

こうした問題について、今回の事例の基となった神戸地裁姫路支部の判決では、以下のように判断されています。

「周囲の者が覚せい剤を吸い始めたことを認識して、なお、その場にい続けたということであれば、もはや、覚せい剤を吸引することで使用する故意に書けるところはないというべきである。」
「覚せい剤の自己使用についての故意は、薬理作用のある物質を体内に摂取している状態に身を置き続けていることについて故意があれば足り、他人が吸引しているものであれば自己使用に当たらないというのは、法律の当てはめについての認識を誤ったに過ぎず、被告人の故意を否定するものではない。」
(以上、神戸地裁姫路支部判決令和2.6.26より)

つまり、周囲の者が覚醒剤を吸っていて、その副流煙を自分が吸うことになっていると分かっていながらあえてその場にとどまり続けたということは、「覚醒剤副流煙を吸い続けることになる」と認識しながらあえてそれを許容したということになるため、覚醒剤使用の故意が認められるということです。

もちろん、副流煙によって覚醒剤の陽性反応が出たというケース全てにこうした判断が適用されるというわけではありません。
例えば、副流煙を吸ってしまっている状態であると全く認識できない環境で副流煙を吸ってしまっていたケースでは、判断も異なってくるでしょう。
こうした判断は、事件ごとの細かな事情によって異なるのです。
だからこそ、まずは専門家に事件の詳細を話した上で、どういった判断が下される可能性があるのか、取調べ等でどういった対応をすべきなのかといったことを判断・アドバイスしてもらう必要があるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、覚醒剤取締法違反などの薬物事件についてのご相談・ご依頼も受け付けています。
もちろん、逮捕されてしまっている刑事事件でも対応が可能です。
刑事事件にお困りの際はお気軽にご相談下さい。

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