フィッシングメールによる詐欺事件②電子計算機使用詐欺罪

2020-10-01

フィッシングメールによる詐欺事件②電子計算機使用詐欺罪

フィッシングメールによる詐欺事件で、特に電子計算機使用詐欺罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市南区に住むVさんに、「私は銀行の委託を受けて、口座の不正利用を調査している業者のものです。あなたの銀行口座が不正に利用されていないかチェックするために、URLにあるサイトで口座情報を登録してください」といったメールを送り、Vさんを架空の業者のサイトに誘導すると、口座番号や契約者情報、暗証番号といった情報を入力させました。
そうしてVさんの口座情報等を手に入れたAさんは、その情報を利用してネットバンキングのVさんのアカウントにアクセスし、Vさんの口座から自分の口座に200万円送金しました。
後日、見覚えのない送金に気付いたVさんが京都府南警察署に被害を訴えたことでAさんの犯行が発覚。
捜査の結果、Aさんは不正アクセス禁止法違反電子計算機使用詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・電子計算機使用詐欺罪

前回の記事では、今回のAさんのフィッシングメールを送る行為や、フィッシングメールで取得した情報を用いてVさんのネットバンキングのアカウントにアクセスした行為が不正アクセス禁止法違反となることに触れました。
今回の記事では、Aさんのもう1つの逮捕理由である電子計算機使用詐欺罪について触れていきます。

電子計算機使用詐欺罪は、刑法に定められている犯罪の1つです。

刑法第246条の2
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。
※注:「前条」とは、刑法第246条に規定されている詐欺罪のことを指します。

オレオレ詐欺などで詐欺罪という犯罪名はよく聞かれるところですが、電子計算機使用詐欺罪という罪名はなかなか聞きなれないかもしれません。
詐欺罪が「人を欺いて財物を交付させた」場合に成立するのに対し、電子計算機使用詐欺罪は、簡単に言えば人ではなくコンピューターを騙した場合に成立します。
電子計算機使用詐欺罪の「電子計算機」とは、簡単に言えばコンピューターのことです。

今回のAさんは、ネットバンキングのVさんのアカウントにアクセスして自分の口座に送金を行っているのですが、これは本当は行為者がVさんではない(Aさんである)にも関わらず、コンピューターに行為者がVさんであるかのように偽って指令を出し処理をさせ、それによって不正にお金を自分のもとに送って手に入れていることになります。
そのため、Aさんには電子計算機使用詐欺罪が成立すると考えられるのです。

・不正アクセス禁止法違反と電子計算機使用詐欺罪

まとめると、今回のAさんには、フィッシングメールを送ったことによる不正アクセス禁止法違反と、Vさんのアカウントにアクセスしたことによる不正アクセス禁止法違反、ネットバンキングを利用してVさんのお金を自分のもとに送ったことによる電子計算機使用詐欺罪の3つの犯罪が成立すると考えられます。
そして、これらは全て手段と目的の関係にあります。
フィッシングメールを送ったのはVさんのアカウントにアクセスするためであり、VさんのアカウントにアクセスしたのはAさんのもとにお金を送金するためだ、という関係です。

このように、複数の犯罪を犯してしまった時、その関係性が目的と手段となっている場合を「牽連犯」と呼び、以下の刑法の条文に基づいて刑罰の重さが決められます。

刑法第54条
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

つまり、今回のAさんでいえば、フィッシングメールを送ったことによる不正アクセス禁止法違反は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(不正アクセス禁止法第12条第4号)、不正アクセス行為による不正アクセス禁止法違反は「3年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(不正アクセス禁止法第11条)、電子計算機使用詐欺罪が「10年以下の懲役」(刑法第246条の2)であるため、最も重い電子計算機使用詐欺罪の「10年以下の懲役」という範囲内で刑罰が決められることになるのです。

フィッシングメールに関わる詐欺事件では、このように複数の犯罪が成立しうる上、その関係性などの検討も必要になってきます。
さらに、詐欺行為の被害者が複数の地域に散らばり複数人存在するケースもあり、弁護活動を広範囲にわたって行うことが求められることも考えられますから、全国の刑事事件に強い弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門弁護士フィッシングメールによる詐欺事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
京都支部以外にも12都市に支部があるため、複数の地域での詐欺事件が問題になる場合でも安心してお任せいただけます。
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