同乗者相手でもひき逃げになる?①

2019-06-07

同乗者相手でもひき逃げになる?①

Aさん(20歳男性)は、自身の友人であるVさん(20歳男性)を後ろに乗せ、京都市右京区内の道路をバイクで走行していました。
すると、Aさんがよそ見運転をしてしまったことから、対向車と接触してしまいました。
対向車の運転手とAさんに怪我はありませんでしたが、Vさんはその事故により全治3週間の怪我を負ってしまいました。
Aさんは事故を起こしてしまったことに動揺して、Vさんと対向車の運転手をおいてその場から逃げてしまいました。
すると翌日、Aさん宅に京都府右京警察署の警察官がやってきて、Aさんはひき逃げ事件の被疑者として、過失運転致傷罪と道路交通法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
話を聞いたAさんの家族は、対向車の運転手に怪我がないのにひき逃げとなってしまうのか不思議に思い、交通事件も扱う刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(※令和元年6月2日産経新聞配信記事をもとにしたフィクションです。)

・そもそもひき逃げとは

最近は交通事故が報道される機会も多いですが、その中でもひき逃げ事件は、皆さんの目に触れることも多いでしょう。
しかし、ひき逃げという行為がどういった犯罪に当てはまるのか、具体的な犯罪名はなかなか知られていません。

ひき逃げはよく使われる単語ではありますが、「ひき逃げ」という犯罪名は存在しません。
よく言われる「ひき逃げ」は、交通事故の中でも人身事故を起こしてしまった場合に発生する道路交通法上の義務に違反したことを指しています(物損事故の場合は「当て逃げ」となります。)。
その義務とは、道路交通法の以下の条文に定められています。

道路交通法72条1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

このうち、前段の規定については「救護義務」(負傷者の救護をする義務)、「危険防止措置義務」(道路上の危険を防止する措置をする義務)と呼ばれており、後段の規定については「報告義務違反」(事故について警察に報告する義務)と呼ばれています。
ひき逃げは、人身事故を起こしているにも関わらず、この義務を果たさずに逃げていることから、道路交通法上の義務に違反する道路交通法違反となるのです。

そして、ひき逃げの場合、そもそも人身事故を起こし、人を死傷させてしまっています。
この部分に関しては、道路交通法ではなく、いわゆる自動車運転処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)に定められています(今回は過失=不注意によって事故を起こしてしまった場合に限定して紹介します。)。

自動車運転処罰法5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

これがいわゆる過失運転致死傷罪と呼ばれる犯罪で、過失による人身事故の際に適用される犯罪です。
すなわち、ひき逃げの場合、多くはこの過失運転致死傷罪と、先ほど紹介した道路交通法違反の2つが成立することになるのです。

では、Aさんの場合、どういった経緯からひき逃げと判断されるのでしょうか。
次回の記事で詳しく検討します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ひき逃げなど交通事故に関連した刑事事件も取り扱っています。
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