電力小売りで特商法違反事件②
~前回からの流れ~
Aさんは、とある会社Xに、訪問販売を行う営業の社員として勤務しています。
ある日Aさんは、京都市南区に住むVさん(別の大手電力会社Yと契約中)の自宅を訪ねると、大手電力会社Yの社員であると偽って、「現在Vさんが契約している料金プランよりも別の料金プランの方が安くなるから料金プラン変更をした方がよい」などと言って、大手電力会社Yでの料金プラン変更に見せかけ、会社Xへの新規契約を結ばせました。
後日、大手電力会社Yからの通知で料金プランの変更がなされていないことや、全く別の会社Xとの新規契約がなされていることに気づいたVさんが京都府南警察署に相談したことにより、Aさんは特商法違反(不実告知)の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年5月29日産経新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・特商法の「不実告知」
先日の記事では、Aさんの行っている訪問販売が、消費者の利益の保護等を行っている「特定商取引に関する法律」、通称「特商法」に従わなければならない「特定商取引」であることに簡単に触れました。
では、そもそも今回のAさんは、特商法のどの部分に違反して特商法違反となり、逮捕されてしまったのでしょうか。
特商法では、訪問販売についてその6条で禁止する行為を定めているのですが、その一部を見てみましょう。
特商法6条
1項 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
1号 商品の種類及びその性能若しくは品質又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
2号 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
3号 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
4号 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
5号 当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回又は当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(略)
6号 顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項
7号 前各号に掲げるもののほか、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
この規定に違反し、「不実のことを告げ」た場合には、特商法違反の中でも「不実告知」や「不実の告知」と言われる違反となります。
特商法にいう不実の告知とは、簡単に言えば虚偽の説明、実際とは異なる説明ということです。
つまり、訪問販売でこの1号~6号の事項について虚偽の説明をすれば不実告知による特商法違反ということになるのです。
・Aさんの場合
では、Aさんの場合を見てみましょう。
Aさんは訪問販売の際、実際にはXという会社の社員であるにも関わらず、大手電力会社Yの社員であると名乗り、実際には会社Xとの新規契約であるのに大手電力会社Yの料金プラン変更のように装って契約を結んでいます。
そもそも訪問販売に来た人の所属の会社が違うということになれば、商品の種類や品質に大きくかかわってくることは間違いないでしょう。
さらに、実際の契約の内容も大手電力会社Yの料金プラン変更と会社Xとの新規契約であれば、内容が全く異なることになります。
そうなればVさんが契約するかどうかという判断にも大きくかかわってくる事項であるともいえます。
ですから、Aさんの偽った事項は、少なくとも特商法6条1項の1号や7号に該当すると考えられ、不実の告知がなされているとされる可能性が高いでしょう。
そうなれば、これらは訪問販売時にAさんが契約を取るために行ったことであるので、特商法違反となることが考えられるのです。
特商法違反はたびたび報道されることもありますが、まだ世間一般に浸透しているとは言い難い犯罪です。
容疑をかけられて逮捕された方はもちろん、逮捕されたご家族・ご友人も、特商法違反事件の流れや見通しが分からずに困ってしまうということも多いでしょう。
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