アプリ開発エンジニアが開発中のアプリを無断で第三者に販売した事例

アプリ開発エンジニアが開発中のアプリを無断で第三者に販売した事例

サイバー犯罪をする男性

IT企業に勤めるアプリ開発エンジニアが、会社で開発中のアプリを無断で第三者に販売した事例について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都府中京警察署は、京都市内のIT企業でアプリ開発エンジニアとして働く男(26)を、男が会社で開発中のアプリのコピーを会社の許可なく複数の第三者に販売したとして、背任罪の疑いで逮捕した。
取調べに対し男は、「ほとんど自分が作ったようなものなので、会社のものというより自分のアプリという感覚だったので、自分のものを売る感覚だった。すでにアプリは完成しているのに会社が動作確認をするといってなかなか発売してくれなかったので、自分で売ろうと思った。」として容疑を認めている。
(フィクションです)

背任罪とは

刑法247条 
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

背任罪は、身分犯といって、殺人犯のように誰もがその犯罪主体となれる犯罪ではなく、主体となりうる人が一定の立場にある人に限定されている犯罪です。
背任罪における身分は、「他人のためにその事務を処理する者」です。

本件で、背任罪の疑いで逮捕されたエンジニアの男性は、問題となったアプリの開発担当として、その開発と管理を任されていたようです。
したがって、エンジニアの男性は、勤務するIT企業のためにアプリの開発および管理等の事務を処理する者ですから、背任罪の主体となりうる者といえそうです。

また、背任罪が成立するためには、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」が必要です。
本件では、男は、勤務先の事業の一環で開発中のアプリを、会社の許可なく勝手に販売しています。
したがって、男は自分の利益を図るという目的を有していたといえそうです。

次に、背任罪が成立するためには、男が「任務に背く行為」をしたことが必要です。
「任務に背く行為」とは、他人の事務の処理者として当該具体的事情の下で当然になすべきものと法的に期待される行為をせず、信任関係に違背することを言います(大判明治44年10月13日、大判大正3年6月20日)。
本件でいうと、男は、会社のアプリ開発担当として、アプリを開発し社外に漏れないように管理することが期待されていたにもかかわらず、あろうことか会社に無断で商品であるアプリを第三者に販売して会社を裏切っています。
したがって、男の行為は任務に背く行為であったといえそうですから、背任罪が成立する可能性があります。

財産上の損害の有無

背任罪は財産犯の一種なので、単なる裏切り行為であれば背任罪は成立しません。
背任罪が成立するためには、「本人に財産上の損害を加えた」ことが必要です。
本件では、男は会社に損害を与えたと言えるのでしょうか?
会社は、男の行為により会社が金庫や銀行に預けていた現金が減少したわけでも、財産的価値のあるアプリのデータがなくなったわけでもありません。
この点について、判例は、経済的見地から本人の財産全体を考慮して、既存の財産が減少したとき又は将来取得するはずだった利益を喪失したときに、財産上の損害が加えられたと解しています。(最決58年5月24日)。
本件でいうと、たしかに男の行為により、会社の既存の財産は減少していません。
しかし、男がアプリを複数の第三者に売却してしまったため、これらの第三者に対して会社が当該アプリを売ることで得られた代金を会社は得ることができなくなったと言えそうです。
したがって、本件では、男は会社に財産上の損害を加えたとして、背任罪が成立する可能性があります。

できるだけ早く弁護士に相談を

背任罪は被害者のいる犯罪です。
検察による起訴するかしないかの判断や、裁判官の量刑や執行猶予をつけるかどうかの判断において、被害者との間に示談がまとまっているかどうかは大きな意味を持ちます。
示談をするにあたっては、被害者に対して真摯に謝罪した上で背任行為によって生じた損害を弁償することが必要です。

もっとも、被害者は、背任行為という裏切りをしてきた加害者に対して強い処罰感情を有していることが考えられます。
したがって、示談交渉のために被害者と連絡を取ろうとしても拒絶されてしまうかもしれませんし、交渉に応じてくれたとしても示談の内容として妥当ではない要求をされる可能性もあります。

そこで、示談交渉は自分でするのではなく、交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。
加害者と直接連絡を取ることを頑なに拒否する被害者でも、弁護士相手であれば、交渉に応じてくれることも少なくありません。
また、当事者でない弁護士が第三者的な立場で示談内容を取りまとめることで、双方が納得する妥協点に至ることができるかもしれません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、背任罪など刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分の獲得のほか、量刑を軽くしたり執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
逮捕された方への弁護士の派遣無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。

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