横領したお金で奨学金の返済から高級車の購入まで私腹を肥やした経理責任者を逮捕

横領したお金で奨学金の返済から高級車の購入まで私腹を肥やした経理責任者を逮捕

財産犯

経理責任者が会社のお金を横領して奨学金の返済や高級車を購入していた事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例解説

京都府伏見警察署は、京都市伏見区内にある総合病院の経理責任者A(45)を、勤務先の現金を横領していた疑いで逮捕しました。
Aは、業務で病院の財務管理を担当しており、銀行からお金を引き出すための払戻請求書に捺印を行い、これを使って現金を引き出していました。
その際、事前に用意していた白紙の払戻請求書にも同様の方法で捺印し、引き出したお金を私的に使用していた疑いが持たれています。
きっかけは、自身の子供が大学の奨学金の返済に苦しんでいると知り、なんとかしたいという思いから前述の方法で会社のお金を流用し始めたようですが、奨学金の返済が終了した後も会社の金を密かに引き出して家族旅行や高級車の購入をしていたようです。
勤務先病院の同僚が、奨学金の返済に悩んでいたAさんが急に海外旅行に行くようになったことを不審に思い、病院の管理職に報告したことで調査が入り、犯行が発覚しました。
被害額は8000万円にのぼり、病院が被害届を提出したため、彼女は業務上横領罪の疑いで逮捕されました。
(フィクションです)

業務上横領罪とは

刑法253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

刑法は、横領罪として単純横領罪(刑法252条)、業務上横領罪(刑法253条)、占有離脱物横領罪(刑法254条)を規定しています。
単純横領罪とは、「自己の占有する他人の物を横領」する罪であり、業務上横領罪とは、「『業務上』自己の占有する他人の物を横領」する罪です。
両罪は、横領した他人の物が『業務上』自己が占有する物であったかどうかで区別されます。
業務上横領罪「業務」とは、金銭その他の財物を委託を受けて占有・保管することを内容とする職業もしくは職務をいうと解されています。

京都府伏見警察署によると、本件では、逮捕された女性は、病院の経理担当者として、病院のお金を管理する立場にあり、各種支払業務を行っていたようです。
したがって、彼女の職務は業務上横領罪における「業務」に該当し、業務上横領罪が成立する可能性があります。

ところで、彼女は「他人の物を占有」していたと言えるのでしょうか?
窃盗罪などにいう「占有」とは、物に対する事実上の支配を言いますが、横領罪における「占有」とは、物に対する事実上の支配だけでなく法律上の支配も含むと解釈されています(大判大正4年4月9日)。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人のものを処分しうる状態のことを言います。

本件Aは、経理担当者として容易に銀行窓口で現金を引き出すために使用する払戻請求書と印鑑を使って病院のお金を引き出すことができたようです。
したがって、Aは病院の現金という他人の物を占有していたと言えそうです。
病院のお金を勝手に引き出して私的に使用した場合には、業務上横領罪が成立する可能性があります。

そして、本罪の行為は、横領することです。
横領とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、他人の物に対し経済的用法に従って所有者でなければできないような処分をする行為です(最判24年3月8日)。
本件Aは、病院のお金を引き出し、奨学金の返済や高級車の購入のために使ったようです。
このようにお金を使うことは、その所有者にしか許されない行為ですから、彼女のした行為は横領に当たる可能性があります。
以上から、本件では業務上横領罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

本件では病院が被害届を提出したことで、事件化し彼女は逮捕されています。
加害者と被害者は見ず知らずの他人ではなく、元々物を預けるというような関係性があることから、被害弁償がされれば被害届を出さない被害者もいらっしゃるようです。
したがって、きちんと謝罪と被害弁償をすれば被害届が提出されず、事件化を防げる可能性があります。
仮に事件化されたとしても、謝罪と被害弁償をして示談をまとめることができれば、不起訴処分を得られる可能性があります。

もっとも、どのような示談内容であれば妥当なのかは法律に詳しくない人にとってはわからないのではないでしょうか。
被害者が、裏切られた怒りから過度な条件を提示してくる可能性もあります。
そこで、示談交渉は、交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、横領事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分罪の減軽執行猶予付き判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部ご相談ください。

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