偽装心中!愛人をだまして一人で心中させた男が殺人罪で逮捕
愛人をだまして一人で心中させた男が殺人罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事案
京都府伏見警察署は、京都市伏見区に住む薬品関係の会社を経営する男(45)を殺人罪の疑いで逮捕した。
京都府伏見警察署によると、男は妻子ある身であったが不倫関係にある秘書から「奥さんと別れて私と結婚してほしい。できないなら一緒に死のう」と心中を迫られた。
男は心中するつもりはなかったが、その場にあわせ「一緒に心中しよう」と答え、致死量を超える薬を2人分用意し、相手に先に飲ませて自殺させ、自分は飲まなかったとのこと。
(フィクションです)
殺人罪と自殺関与罪
刑法199条 殺人罪
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
本件で男は、199条の殺人罪の嫌疑で逮捕されています。
しかし、亡くなった女性は、男が用意した致死量の薬を自ら飲んで自殺したとのことですので、殺人罪ではなく202条の自殺関与罪とはならないのでしょうか?
刑法202条 自殺関与罪
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ(…)た者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
202条の自殺関与罪は、さらに自殺教唆罪と自殺幇助罪に分かれます。
自殺教唆罪とは、自殺意思のない者を唆して自殺を決意させ、自殺を行わせることです。
自殺幇助罪とは、自殺の決意を有する者の自殺行為を援助し、自殺を遂行させることです。
本件では、女は自分から一緒に死のうと心中をもちかけていますから、男が一緒に死んでくれるという条件付きであるものの自殺の決意を有していたといえそうです。
加えて、男は、致死量の薬を用意して自殺行為を援助し、女に自殺を遂行させています。
したがって、202条の自殺幇助罪が成立するのではないでしょうか?
偽装心中
結論として、判例は、偽装心中のケースでは一貫して199条の殺人罪を適用しています。
最高裁は、女性から心中を申し出られ同意したが、途中で気が変わったのに後を追うように誤信させて女性のみに毒物を飲ませて死亡させた偽装心中の事案にて、被害者は加害者の欺罔の結果、加害者の追死を予期して死を決意したのであり、「その決意は真意に添わない重大な瑕疵ある意思」であるから、殺人罪に該当すると判示しています(最判昭和33年11月21日)。
本件も、被害者の女性は、加害者の男性が一緒に死んでくれると騙されて、死ぬことを決意したようですから、仮に男に死ぬつもりがないと知っていれば、被害女性は死のうとはしなかったでしょう。
そうすると、被害女性の死ぬ決意は、真意に添わない重大な瑕疵ある意思といえます。
判例に従えば、本件でも殺人罪が成立する可能性が高いでしょう。
身体拘束の長期化のおそれ
殺人罪は、刑法の規定する犯罪の中でも法定刑が重くなっていますから、裁判の結果下される量刑も重くなる可能性が高いため、逃亡のおそれがあるとして釈放や保釈が認められづらい犯罪です。
警察に逮捕された被疑者は、逮捕から72時間以内に、「勾留」という逮捕に引き続く10日間の身柄拘束の必要性について、検察官と裁判官から判断されます。
弁護士は、検察官と裁判官に対し、勾留に対する意見書を提出することができますから、このタイミングで釈放を求めることができます。
したがって、早い段階で弁護士に相談して、意見書を提出する機会を逃さないことが大切です。
仮に、釈放されずに起訴された場合、次にすることができることは裁判所に対する保釈請求です。
保釈が認められた場合、保釈金を支払うことで身体拘束から解放されます。
たしかに、殺人罪は釈放や保釈が認められずらいものの、絶対に釈放や保釈が認められないわけではありません。
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