前回のコラムに引き続き、息子を騙り現金をだまし取ったとして、詐欺罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都府警中京署は23日、詐欺の疑いで、住所不定、自称建設業の男(24)を逮捕した。同署は特殊詐欺事件の現金回収役とみている。
(8月24日 京都新聞 「高齢女性の息子なりすまし1550万円詐取 容疑で24歳男逮捕、認否保留」より引用)
逮捕容疑は氏名不詳者らと共謀し、(中略)、京都市中京区の女性(85)宅に息子などになりすまして電話をかけ、「現金が至急必要だ」などとうそをつき、女性の自宅近くの路上で2回にわたって現金1550万円をだまし取った疑い。(後略)
勾留と釈放
刑事事件では、逮捕されると72時間以内に勾留の判断が行われます。
勾留が決定してしまった場合には、最長で20日間身体拘束を受けることになります。
では、この勾留の決定はどのような基準で決められるのでしょうか。
刑事訴訟法第60条1項
裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
1号 被告人が定まった住居を有しないとき。
2号 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3号 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
刑事訴訟法第60条1項が規定するように、裁判所が勾留を決定するためには、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある状態で、なおかつ、①住居が定まっていること、②証拠隠滅をするおそれがあると疑うのに相当な理由があること、③逃亡するおそれがあると疑うのに相当な理由があること、の3つのうちどれかに当てはまっている必要があります。
証拠隠滅と聞くと、犯行に使用した物などの物的証拠を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
刑事事件では、物的証拠の他に供述証拠と呼ばれる証拠が存在します。
被害者や容疑者の供述、目撃証言などが供述証拠として扱われるのですが、裁判所が勾留を決定するうえで、物的証拠だけでなく供述証拠の隠滅のおそれがないかどうかを考えて判断を下します。
ですので、家宅捜索が終了しているなど物的証拠を隠滅する可能性が低い場合であっても、被害者に働きかけて供述内容を変更させるおそれがあると判断されれば、勾留が決定してしまう可能性があります。
今回の事例では、容疑者は現金回収役を担ったのではないかと報道されています。
現金回収役ということは、当然被害者の顔を知っていますし、今回の事例では被害者宅の近くで受け渡しが行われていますので、被害者の住居を知っている可能性が高いと思われます。
被害者の顔や住居を知っている場合は、容疑者が被害者に接触したり働きかけを行うことが可能ですので、証拠隠滅のおそれがあると判断される可能性が高いです。
証拠隠滅のおそれは勾留の要件の一つですので、今回の事例のような場合では、勾留が決定してしまう可能性が高く、釈放も認められづらい可能性があります。
弁護士が証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことを主張することで、釈放を認められる場合があります。
弁護士は勾留が判断される前(逮捕後72時間以内)であれば、検察官や裁判官に意見書を提出することができますし、勾留が決定した後でも裁判所に準抗告の申し立てを行うことができます。
意見書や準抗告で、親族の監督により証拠隠滅や逃亡をさせないことや勾留が続くことでの不利益などを主張することで、釈放される可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
繰り返しになりますが、意見書の提出は逮捕後72時間以内にする必要があり、時間との勝負になります。
ですので、ご家族が詐欺罪などの刑事事件で逮捕された方は、お早めに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で承っております。