在留資格取得の目的で偽装結婚したとして、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
在留資格を得るために偽装結婚をしたとして、京都府警生活保安課と中京署などは24日、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで、京都市北区の団体職員の男(45)ら男女3人を逮捕した。
(5月24日 京都新聞 「在留資格得るために偽装結婚疑い、元技能実習生の中国人女ら3人を逮捕 京都府警」より引用)
(中略)
3人の逮捕容疑は共謀し、技能実習生として(中略)在留資格があった店員の女に日本人の配偶者として新たな在留資格を取得させるため、(中略)男を夫とする虚偽の婚姻届を下京区役所に提出し、(中略)戸籍に記録させた疑い。
(後略)
偽装結婚と婚姻の無効
偽装結婚とは、婚姻する気がないにもかかわらず、戸籍上、婚姻することをいいます。
民法第742条1項では、人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないときは婚姻を無効とすると規定しています。
偽装結婚では、夫婦間に婚姻する意思がありませんので、婚姻は無効となります。
偽装結婚と電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪
今回の事例では、在留資格を得るために偽装結婚をしたとして、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪の容疑で逮捕されています。
偽装結婚をした場合、なぜ電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪の罪に問われるのでしょうか。
刑法第157条1項
公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第158条1項
第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
上記の条文が、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪の根拠条文になります。
電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪を簡単に説明すると、公務員に戸籍簿などのデータへ事実とは異なる情報を記録させ、その誤情報が記録された戸籍簿などを閲覧可能な状態にさせると成立します。
婚姻する際は、区役所などに婚姻届を提出することになります。
その後、提出された婚姻届を基に公務員が戸籍簿のデータに婚姻の情報を記録します。
繰り返しになりますが、偽装結婚は婚姻の意思はありませんので、婚姻は無効となります。
ですので、偽装結婚で婚姻届を提出した場合、実際には婚姻は無効であるにもかかわらず、戸籍簿に婚姻が有効であるといった事実とは異なった記録がなされることになります。
一度、戸籍簿に記録されてしまうと、事実とは異なった記録がされた戸籍簿を閲覧することが可能になりますので、偽装結婚をした場合には、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立することになります。
今回の事例では、在留資格の取得のため、虚偽の婚姻届けを下京区役所に提出し、戸籍に記録させたと報道されています。
在留資格の取得のための婚姻は婚姻の意思があるとはいえませんので、偽装結婚にあたりますし、当然婚姻は無効になります。
実際に、容疑者らの婚姻が在留資格の取得目的だったのであれば、公務員である下京区役所の職員に、戸籍簿へ事実とは異なった記録をさせ、その登記簿を閲覧可能な状態にさせているので、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立する可能性があります。
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次回のコラムでは、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪の嫌疑をかけられた場合の弁護活動についてご紹介します。