花火大会でチケット不正転売防止法違反
Aさんは、京都府宮津市で開催される人気の花火大会の有料席のチケットを、行く気がないにも関わらず何枚も取得し、SNSなどで定価よりかなり高額の値段で買い取りを募集しました。
実はAさんはこの花火大会以外にもこうした手口でチケットの高額転売を繰り返しており、今回もチケットの転売により利益を得るつもりでした。
すると、京都府宮津警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんはチケット不正転売防止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・花火大会でチケット不正転売防止法違反
夏も真っ盛りの時期となり、各地で花火大会も開催されています。
人気の花火大会では、有料席のチケットも販売されており、座って花火を見ることができたり、いい位置で花火を見ることができたりするところもあるようです。
今回は、この花火大会の有料席のチケットについて、刑事事件となってしまったようです。
Aさんに容疑がかけられているチケット不正転売防止法違反という犯罪は、つい先日、令和元年6月14日に施行された、チケット不正転売防止法(正式名称:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)に違反する犯罪です。
この法律では、主に①チケットの不正転売、②チケットの不正転売を目的にしたチケットの取得が禁止されています。
・チケット不正転売防止法の対象は
チケット不正転売防止法が対象としているチケットは、全てのチケットというわけではありません。
チケット不正転売防止法では、①「興行主等(興行主(興行の主催者をいう。以下この条及び第5条第2項において同じ。)又は興行主の同意を得て興行入場券の販売を業として行う者をいう。以下同じ。)が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該興行入場券の券面に表示し又は当該興行入場券に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて表示させたもの」(2条3項1号)であり、②「興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者(興行主等が当該興行を行う場所に入場することができることとした者をいう。次号及び第5条第1項において同じ。)又は座席が指定されたもの」(2条3項2号)であり、③「興行主等が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める事項を確認する措置を講じ、かつ、その旨を第1号に規定する方法により表示し又は表示させたもの」(2条3項3号)を満たすチケットが対象とされています。
③については、入場資格者が指定されているチケットについては入場資格者の氏名及び電話番号、電子メールアドレス、その他の連絡先(2条3項3号イ)、座席が指定されたチケットについては購入者の氏名及び連絡先(2条3項3号ロ)が「次に定める事項」とされています。
多くの大手チケットサイトでは、チケット購入の際には①や③の確認を求められることが多いため、チケットサイトを通じて購入したようなチケットの多くが当てはまると考えられます。
また、今回のAさんの花火大会の有料席の場合には、日時や場所の指定はもちろんしてあると考えられます。
ですから、入場資格者や席が指定されていれば、Aさんの転売した花火大会のチケットもチケット不正転売防止法の対象になる可能性が高いと考えられます。
・チケットの不正転売とは
チケット不正転売防止法では、チケットの不正転売について、「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」(チケット不正転売防止法2条4項)とされています。
つまり、興行主に無断で、反復継続の意思をもって、販売価格を超える価格でチケットの転売をした場合に、チケット不正転売防止法のいうチケットの不正転売にあたるのです。
今回のAさんの場合、公式のリセールサービスなどを使っていないことから、興行主に許可を取って転売をしているとは考えにくいです。
また、過去にも同様のチケットの転売をしていることや、花火大会のチケットを複数取得していることから、花火大会のチケットの転売について反復継続の意思があるとも考えられます。
さらに、Aさんは定価よりも高額にチケットを転売していますから、チケット不正転売防止法のいうチケットの不正転売をしていると考えられます。
チケットの不正転売をしてしまった場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくはその両方が科されます(チケット不正転売防止法9条1項)。
なお、チケットの不正転売目的にチケットを取得した場合にも、同様の刑罰を受ける可能性があることにも注意が必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうしたチケット不正転売事件のご相談も受け付けております。
チケット不正転売防止法はまだ施行されて日が浅い法律ですが、刑事事件を専門に扱う弁護士だからこそ、迅速で丁寧な対応が可能です。
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