あおり運転と交通事故②
~前回からの流れ~
AさんとBさんは、京都市左京区内の道路で、あおり運転による交通事故を起こしました。
そして、AさんとBさんはそれぞれ京都府川端警察署で取調べを受けることになりました。
(※平成31年1月24日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)
・あおり運転で交通事故を起こしたら
前回の記事では、あおり運転自体にどういった犯罪が成立するのかを取り上げましたが、今回はあおり運転によって交通事故を起こしてしまった場合を検討していきます。
①危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法違反)
いわゆる自動車運転処罰法で規定された「危険運転」行為によって交通事故を起こし、人を死傷させた場合に成立するのが危険運転致死傷罪です。
あおり運転による交通事故で人が死傷する結果が発生すれば、危険運転致死傷罪となる可能性が出てきます。
危険運転致死傷罪となるためには、交通事故の原因となったあおり運転が「危険運転」であると認められる態様・状況である必要があります。
自動車運転処罰法2条(危険運転致死傷罪)
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
4号 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
あおり運転では、相手の車の直前に割り込みをしたり、車間距離を詰めたりといったケースも見られます。
そうした場合には、あおり運転をこの「危険運転」と判断され、危険運転致死傷罪となる可能性があるのです。
②過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法違反)
あおり運転が①で触れた「危険運転」とは認められなくとも、「過失」があったと判断されれば、自動車運転処罰法の過失運転致死傷罪となる可能性があります。
自動車運転処罰法5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
「過失」とは、大まかに言えば「不注意」のことで、注意義務に違反する状態やその結果を予見・回避できたのにしなかった落ち度のことを指しています。
例えば、交通事故の原因となったあおり運転が道路交通法上の運転者の義務に違反するようなものであった場合、道路交通法上の義務に違反する過失によって交通事故を起こしたということで過失運転致死傷罪が成立することが考えられます。
③傷害罪・傷害致死罪
前回の記事で取り上げたように、あおり運転に刑法上の暴行罪が適用される場合があります。
このようなケースで交通事故が起こり、相手が死傷してしまった場合には、傷害罪や傷害致死罪が適用される可能性があります。
刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法205条(傷害致死罪)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
暴行罪は、暴行を加えても傷害が発生しなかった場合の犯罪であり、暴行の結果傷害が発生したり、その傷害から死亡してしまったりすれば、傷害罪や傷害致死罪に問われることになります。
④殺人罪・殺人未遂罪
現在、あおり運転に関連した交通事故で殺人罪に問われている事案も報道されています。
刑法199条(殺人罪)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
「人を殺す」という認識や「殺してしまう(死んでしまう)かもしれないがそれでもかまわない」という認識をもってあえて人が死ぬ可能性のある行為を行い、その結果として相手が死んでしまえば殺人罪、死亡を免れれば殺人未遂罪となります。
あおり運転でも、人を殺そうとして行ったものや、あおり運転の結果相手が死んでもかまわない、死ぬかもしれないと思いながらあおり運転を行ったケースであれば、殺人罪や殺人未遂罪に問われる可能性も否定はできません。
では、今回のAさんとBさんにはそれぞれどういった犯罪が成立しうるのでしょうか。
次回はそちらとその弁護活動について触れていきます。
あおり運転が様々な犯罪に該当しうるように、それに関連した交通事故も、態様等の事情によって成立する犯罪が異なってきます。
刑事事件専門だからこそ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所ではこうしたあおり運転の交通事故にも対応が可能です。
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