友人から預かっていた高級ワインを無断で飲んでしまった男が横領罪の疑いで逮捕された事例

友人から預かっていた高級ワインを無断で飲んでしまった男が横領罪の疑いで逮捕された事例

手錠とガベル

友人から預かっていた高級ワインを無断で飲んでしまった男が横領罪の疑いで逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都府中京警察署は、京都市中京区に住む会社経営の男性A(45)を横領罪の疑いで逮捕した。
京都府中京警察署によると、自宅に取引先を招いて接待をすることになったAは、取引先の重役がワイン愛好家であると知り、話の種にでもなればいいと考えて、海外のワインを専門的に取り扱う店を経営する知人Bに、希少価値の高いワインを接待中だけ数本自宅に置かせてもらえないかと頼んだ。
Bは、大切に扱い接待が終わり次第返却することを条件に、希少価値の高い百万円以上する非売品のワインを1日だけ預けることに承諾した。
ところが、Aは、接待当日に取引先の重役とワインの話で盛り上がり気が大きくなり、ワインを開けて振る舞ってしまった。
それを知って怒ったBは京都府中京警察署に被害届を提出した。
(フィクションです)

横領罪とは

刑法252条1項
自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。

本件では、Aは、経営者の知り合いであるBから、希少価値の高いワインを一時的に家に置かせてもらうという約束だったにもかかわらず、そのワインを飲んでしまい横領罪の疑いで逮捕されています。
横領罪とは、簡単にいうと他人から預かっている物などを売ったりしてしまうと成立する犯罪です。
まず、252条1項に書かれている通り、横領罪を犯すことができるのは、他人の物を占有している人に限られます。
本件では、Aは、ワイン専門店を経営するBからの高級ワインを預かっていますから、Aには横領罪が成立する可能性があります。

次に、横領罪の客体は、条文上「自己の占有する他人の物」とされていますが、文字通り自己の占有する他人の物すべてが客体となるわけではありません。
偶然に自己が占有することになった物を横領する行為については、刑法254条の占有離脱物横領罪が成立します。
したがって、252条の横領罪の客体となるのは、持ち主から頼まれて預かった場合のように、委託信任関係を原因として支配下にある他人の物に限定されます。
本件では、Aは、Bが大事に持っていたワインを接待日限定で預かっていたようですから、このワインは、252条の横領罪の客体となる可能性があります。

そして、本罪の行為は、横領することです。
横領とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、他人の物に対し経済的用法に従って所有者でなければできないような処分をする行為です(最判24年3月8日)。
例えば、物を売るという行為や、食べ物などを消費するという行為は、その所有者にしか許されない行為ですから、横領に当たります。
本件では、Aは、接待日にワイン好きの取引先の重役と話が弾むことを期待して、その日限定でワインを数本預かっていたにもかかわらず、その任務に背きワインをその場で振る舞ってしまったようです。
したがって、Aの行為は横領にあたり、横領罪が成立する可能性があります。

加えて、横領罪が成立するためには、故意すなわちAが横領にあたる行為を認識しながら実行したことが必要です。
Aは、Bから本件ワインを購入したわけではなく、接待日に飾りとして家に置かせてもらっていただけですから、Bのものであると認識していながらあえてワインを消費したと言えそうです。
したがって、故意もあったということになり、横領罪が成立する可能性があります。

詐欺罪

今回の事例ではAの意図によっては、横領罪ではなく詐欺罪が成立する可能性があります。

詐欺罪とは簡単に説明すると、財物の交付について重大な事項について嘘をつき、嘘を信じた相手から財物を受け取ると成立する犯罪です。

例えば、AがはなからBにワインを返すつもりがないのに、接待が終わり次第返すと嘘をついてBからワインを受け取ったのであれば詐欺罪が成立します。
ですが、今回の事例では気が大きくなったAがワインをふるまってしまったようなので、おそらくBからワインを預かった段階で騙し取ろうと考えていたわけではないでしょうから、横領罪が成立すると考えられます。

なるべく早く弁護士に相談を

横領罪は他の多くの犯罪と同様に被害者のいる犯罪です
しかし、加害者と被害者は見ず知らずの他人ではなく、元々物を預けるというような信頼関係があるという特徴があります。
知らない仲ではないため、被害弁償がされれば被害届を出さない被害者もいらっしゃるようです。
したがって、きちんと謝罪と被害弁償をして示談をすれば、被害届が提出されず、事件化を防げる可能性があります。
横領罪の場合、被害者と加害者は知り合いではあるものの、被害者からすると加害者は、信頼して物を預けていたのにその信頼を裏切った人物ですから、逮捕されずに自由に動ける場合でも加害者自ら示談交渉を行うのは得策ではありません。
場合によっては、妥当な金額とは言えない金銭や条件を要求されるかもしれません。
そこで、示談交渉は、交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、横領事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が、被害者側と示談交渉を行うことで示談を成立させることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部ご相談ください。

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