前回のコラムでは証人威迫罪がどういった場合に成立をするのかを解説しました。
今回のコラムでは脅迫罪に焦点を当てて、証人威迫罪と脅迫罪の違いについて解説していきます。
事例
京都府警伏見署は12日、傷害と証人威迫、脅迫の疑いで、京都市伏見区、不動産業の男(50)と、証人威迫の疑いで知人の会社員男(49)=同区=を逮捕した。2人は容疑を否認しているという。
(1月12日 京都新聞 「「口の利き方に気をつけたほうがええ」 居酒屋で女性殴り、証人も脅迫 容疑で50歳男ら逮捕」より引用)
不動産業の男の逮捕容疑は、(中略)女性(中略)を殴り右肘に打撲を負わせた(中略)女性に被害届を取り下げさせるため、女性の勤務先を知人の会社員男と訪れて面会を要求。断った上司の男性(39)を「口の利き方に気をつけたほうがええ」などと脅迫した疑い。
脅迫罪
証人威迫罪と脅迫罪の違いを考える前に、脅迫罪について簡単に見ていきましょう。
脅迫罪は刑法第222条1項で「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
脅迫罪が成立する場合を簡単に説明すると、世間一般の人が恐怖を感じるような、害を与える告知をした場合です。
今回の事例では、被害女性を殴りけがをさせた容疑者が被害女性に会うために女性の勤務先を訪れ、面会を断った男性を「口の利き方に気をつけたほうがええ」と脅迫したと報道されています。
もしかすると被害男性は、面会を断った際に「口の利き方に気をつけたほうがええ」と言われたことで、部下である被害女性のように殴られるかもしれないと恐怖を感じたかもしれません。
世間一般の人が被害男性と同様の立場に立った時に、報道されている容疑者の一連の行動により危害を加えられるのではないかと恐怖を感じる場合には、脅迫罪が成立する可能性があります。
証人威迫罪
次に証人威迫罪について簡単に振り返りましょう。
証人威迫罪は「捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族」に、正当な理由のない面会の強制、強談、威迫を行った場合に成立します。
「面会の強制」は面会を要求すること、「強談」は要求に応じるように迫ること、「威迫」は言動により不安にさせることをいいます。
また、証人威迫罪で有罪になると、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処すると規定されています。(刑法第105条の2)
証人威迫罪と脅迫罪
証人威迫罪と脅迫罪では、法定刑が同じですし、不安や恐怖を感じさせるような言動をしている点で似通っているように感じられます。
「証人威迫罪と脅迫罪ではなにが違うの?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
証人威迫罪と脅迫罪の違いについて考えていきましょう。
まず、決定的に違う点として、証人威迫罪が対象になるのは、「捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族」に限られます。
ですので、同じように相手が恐怖を感じるような言動をした場合に、相手が被害者やその親族などであれば証人威迫罪は成立しますし、そうでないのであれば証人威迫罪は成立しません。
また、証人威迫罪と脅迫罪では、法律で定められている対象とする行為の範囲が異なります。
証人威迫罪は、正当な理由のない面会の強制、強談、威迫を対象としているのに対し、脅迫罪は脅迫行為を対象としています。
正当な理由のない面会の強制や要求に応じるように迫った場合に、脅迫罪は成立しませんが、証人威迫罪は成立する可能性があります。
また、脅迫罪が成立するためには、身体や生命などに害を与える告知が必要です。
一方で、証人威迫罪では、害悪の告知がなくても、不安になるような言動だと認められる場合は成立します。
例えば今回の事例では、容疑者らが被害女性の勤務先に訪れて面会の要求をしたとされています。
害悪の告知をしているわけではありませんので、上記の行為だけでは脅迫罪は成立しません。
しかし、面会を要求する正当な理由がなかった場合や、不安にさせるような言動だったと認められる場合には証人威迫罪が成立することになります。
証人威迫罪と脅迫罪では、法律が対象としている人の範囲や成立する対象となる行為の範囲が異なります。
おそらく被害者保護などの観点から、証人威迫罪は脅迫罪よりも刑罰の対象となる行為を広く規定しているのでしょう。
脅迫事件では、一般の人が恐怖を感じるかどうかにより脅迫罪が成立するかどうかが判断されます。
脅迫事件の中には、一般の人が恐怖を感じるといえるのか、判断が難しいケースも存在します。
脅迫罪の成立の可否は事件の内容次第で異なりますので、脅迫罪でご不安な方は一度、弁護士に相談をしてみるのがいいでしょう。
また、脅迫罪には当たらないと思われる事案であっても、脅迫罪の嫌疑にかけられてしまうことがあるかもしれません。
弁護士に相談をすることで、そういった冤罪を晴らすことができるかもしれません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
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