滋賀県で傷害致死事件①
滋賀県長浜市で居酒屋を営んでいるAは、店で大学の卒業コンパをしていた大学生が酒に酔った勢いで店の机や椅子を投げ始めたため、ほかのお客さんに迷惑がかかると思い、「暴れるのであれば帰ってくれ、迷惑だ」と大学生のグループを注意しました。
すると、酔った大学生のうちの一人Vが、「こっちは客なのに何言ってんねんおっさん」と言ってきたので、これに腹を立てたAはVの顔面を右こぶしで思い切り殴ってしまいました。
Aには全く殺意はなかったものの、Vが酔っていたこともあり、殴られた拍子に大きく態勢を崩し、近くに倒れていた先ほど自分が投げていた机の角に頭をぶつけてしまいました。
Aは、頭から血を流して動かなくなったVを見て冷静になり、すぐに救急車を呼びましたが、救急隊が駆けつけてきたときには、すでにVは亡くなっていました。
救急隊と共に現場に駆け付けた滋賀県木之本警察署の警察官により、Aは傷害致死罪の容疑で逮捕されてしまったため、Aの妻は今後の見通しや示談交渉について依頼するため、京都府や滋賀県の刑事事件を取り扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです。)
~傷害致死罪~
刑法205条は、「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する」と傷害致死罪を規定しています。
本事例のAは、殺意をもってVを殴りつけたわけではありません。
ですから、殺人罪の故意をもっていたわけではありません。
しかし、AはVの顔面を殴っているため、少なくとも暴行の故意が認められ、その暴行によって生じた怪我によってVが死亡しているといえます。
よって、Aには傷害致死罪が成立することになります。
なお、VらはAの店の机などを投げており、店の客や店自体に迷惑をかけているということができます。
こうしたことから、Aには正当防衛が成立するのではないか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、Aが暴力を振るったのはVに暴言を吐かれたためであるので、店や客を守るために行った暴行とは言えず、Aに正当防衛が成立する可能性は極めて低いといえます。
正当防衛が成立するために必要な要件のひとつとして、自分や第三者の権利を守るためにした行為でなければいけない、という要件があるためです。
~裁判員裁判~
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項2号により、傷害致死事件は裁判員裁判対象事件となっています。
裁判員裁判とは、通常の刑事裁判とは異なり、刑事裁判の第1審に職業裁判官だけでなく、一般の市民の方も裁判員として審理や判決の内容を判断する手続きに参加してもらう裁判です。
裁判員裁判は、裁判員として一般の方が参加するため、通常とは異なった手続きが多数設けられています。
その一つが、公判前整理手続が必ず行われることです。
公判前整理手続とは、第1回公判の前に、検察官や弁護人と裁判官とで事前に協議を行い、争点や証拠の整理を行う手続きです。
あくまで公判前の準備手続きですので、裁判員の方たちはこの手続きには参加しませんが、実際の公判になった際には、公判前整理手続で整理された争点と証拠に絞って裁判が進行し、公判前整理手続終了後に新たな証拠を提出することは原則としてできないことになっています。
ですので、この公判前整理手続でどのような争点が考えられ、どのような証拠が必要なのかをしっかりと検討しつくしておく必要があります。
特に、否認している事件では、この公判前整理手続がどれだけ充実しているかによって、判決にまで大きな影響を及ぼすことになります。
本事例のAは、Vの顔面を殴ったことやそれによりバランスを崩したVが怪我をし死亡したことについては争わないと考えられるので、主な争点は、犯罪の成否ではなく、量刑に影響を及ぼすAに有利な事情若しくは不利な事情がどれくらいあるかということになりそうです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が京都府・滋賀県の刑事事件にお困りの方のご相談に対応いたします。
傷害致死事件は、被害者の方が亡くなられている重大な刑事事件です。
重大な刑事事件だからこそ、弁護士の専門的な分析を相談で聞くことで、今後の見通しや取るべき方針を判断する手助けとなります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、在宅で捜査されている方向けのサービスも逮捕・勾留されている方向けのサービスもご用意しておりますので、まずは0120-631-881から、相談者様・依頼者様に合ったサービスをご予約下さい。