価格高騰の腹いせに商品をSNS上で酷評した事件
価格高騰の腹いせに、PC関連商品についてSNS上で事実に反して酷評したとして信用毀損罪の疑いで男が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都府中京警察署は、PCを自作する趣味を持つ自営業の男性(27)を信用毀損罪の疑いで逮捕した。
男は、PCを自作した動画をSNS上に投稿することを趣味としていたところ、昨今の半導体不足とマイニング(仮想通貨の取引システムに協力する見返りに、報酬を得ること)の需要による、グラフィックボード(PCの画像処理を担う部品)の高騰で思うようにPCを組むことができず腹を立てていた。
そこで、男は、腹いせにグラフィックボードを専門的に製造しているA社の最新GPUを購入していないにも関わらず、「A社最新グラフィックボードで自作PCしたら発火して故障!返品交換してくれと頼んでも無視!高すぎ!買う価値なし!」というタイトルでSNSに動画を投稿したとされる。
(フィックションです)
信用毀損罪とは
刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法233 条は、信用毀損罪と偽計業務妨害罪の2つの罪を規定しています。
本件で問題となっている信用毀損罪は、233 条の「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し(…)た者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」という部分で規定されています。
「虚偽の風説を流布し」とは、客観的事実に反する噂・情報を不特定又は多数の人に伝播させることをいいます。
本件では、男は、実際には所有していないA社のグラフィックボードを使った自作PCが不具合を起こして発火したという客観的事実に反する情報を、動画化してSNS上に投稿しています。
SNS上へ投稿すると、当該SNSを利用する不特定の人に伝播することになりますから、男の行為は「虚偽の風説を流布し」たと判断される可能性があります。
法人の商品の品質を貶めることは「人の信用を毀損した」にあたるか
信用毀損罪が対象としているのは「人の信用」です。
判例によると、ここでの「人」とは生身の人間である自然人だけでなく法人も含みます(大判昭和7年10月10日)。
よって、本件では、男がA社の信用を毀損したと言えるかどうかが問題となりそうです。
まず、男が酷評したのは、A社そのものではなく、A社の商品であるグラフィックボードですが、この場合にも人の「信用」を毀損したと言えるのでしょうか。
判例によると、「信用」とは、「人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限定されるべきものではなく、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含むと解するのが相当である」とされています(最判平成15年3月11日)。
したがって、A社の販売する商品であるグラフィックボードの品質に対する社会的な信頼も「信用」に含まれることとなり、信用毀損罪が成立する可能性があります。
また、条文には「(人の信用を)毀損した」者に刑罰を科すと規定されています。
では、信用を毀損するような行為がされたことに加え、現実にA社の信用が低下するという結果が必要なのでしょうか。
この点、判例は、現実に信用毀損の結果が生じる必要はないとしています(大判大正2年1月27日刑録19輯85頁)。
したがって、男がSNS上に投稿した動画によって、A社の信用が実際に低下しなかったとしても信用毀損罪が成立する可能性があります。
できるだけ早く弁護士に相談を
信用毀損罪のように被害者のいる犯罪では、示談を成立させることが非常に重要です。
早期の示談締結ができれば、起訴猶予による不起訴処分となる可能性がありますし、起訴されたとしても、示談が成立していることを踏まえて量刑が軽くなる可能性もあるからです。
もっとも、本件のように大切な商品を貶めすような行為をした加害者が、示談交渉のために被害者と連絡をとろうとしても拒絶される可能性が高いでしょう。
そこで、示談交渉は弁護士にお任せすることをおすすめします。
加害者と接触することを拒絶する被害者も、弁護士を通じてであれば示談交渉に応じてくれる可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、信用毀損罪を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分の獲得や量刑を軽くすることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
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