(事例紹介)殺人未遂事件と裁判員裁判

~事例~

妻の不倫を疑い、首を絞めて殺害しようとしたとして、殺人未遂の罪に問われた京都府京丹後市の無職の男(48)の裁判員裁判の判決公判が15日、京都地裁であった。川上宏裁判長は、懲役2年6カ月(求刑懲役6年)を言い渡した。
判決によると、昨年11月18日、当時住んでいた京都市山科区の自宅で、妻=当時(50)=の首にタイツを巻き付けるなどして、意識を失うまで締め続けた。また、意識が回復し逃げようとした妻の首を両手で絞め、顔面溢血のけがを負わせるなどした。
(後略)

(※2022年9月15日20:05京都新聞配信記事より引用 )

~殺人未遂事件と裁判員裁判~

今回取り上げた事例では、男性が殺人未遂罪に問われ、懲役2年6月実刑判決を受けたという報道がされています。
この報道を見ると、この殺人未遂事件の裁判は裁判員裁判として行われたようです。
裁判員裁判という制度が始まってから13年が経ちますが、どういった事件が裁判員裁判となり、どのように裁判が進んでいくのか、具体的に知っているという方はそれほど多くありません。

裁判員裁判については、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」、通称「裁判員法」で定められています。
裁判員法では、裁判員裁判とする対象の事件について、以下のように定めています。

裁判員法第2条第1項
地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第3条の2の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
第1号 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
第2号 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

裁判員法第2条第1項では、該当する事件について「裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う」と定めているため、裁判員法第2条第1項第1号・第2号に当てはまる事件は、起訴されれば基本的には全て裁判員裁判となります。
ただし、裁判員法第3条では、裁判員裁判の対象となった事件でも通常の刑事裁判とする場合の例外を定めています。

裁判員法第3条第1項
地方裁判所は、前条第1項各号に掲げる事件について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。

最近では、暴動事件での殺人罪などの容疑で起訴された被告人の刑事裁判が裁判員裁判の対象から除外されたという報道もありましたが、それはこの裁判員法第3条以降に定められているものによると考えられます(参考記事)。

裁判員裁判の対象となるのは、先ほど確認した裁判員法第2条第1項第1号・第2号に当てはまる事件です。
第1号では「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」、第2号では「裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)」という条件になっています。
大まかに考えると、「容疑をかけられている犯罪の刑罰に、死刑・無期懲役・無期禁錮が定められている事件」と「故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた犯罪の容疑がかけられている事件」が裁判員裁判となるということになります。

例えば、今回の事例の殺人未遂罪を考えてみましょう。
殺人未遂罪は、殺人罪に当たる行為に着手したものの、殺人罪の結果となる「人の死亡」には至らなかったという犯罪です。

刑法第199条(殺人罪)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

刑法第203条(未遂罪)
第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。

殺人罪の刑罰には死刑・無期懲役が含まれており、殺人未遂罪も同様です(実際に下される刑罰は未遂罪であることから減軽されることが多いです。)。
このことから、殺人罪だけでなく、殺人未遂罪裁判員裁判の対象となり、起訴され裁判となる場合には基本的に裁判員裁判になるのです。
殺人罪とは異なり、殺人未遂罪では人は亡くなっていませんが、設定されている刑罰の重さから裁判員裁判の対象となるのです。

裁判員裁判となった場合、一般の方が裁判員として有罪・無罪の判断や、有罪であった場合の刑罰の重さの判断に加わります。
裁判官がフォローするとはいえ、法律や刑事事件に詳しくない一般の方ですから、被告人の事情や主張を適切に伝えていくには、通常の刑事裁判よりも注意を払って主張を行っていかなければなりません。
そのため、裁判員裁判を見据えた刑事事件では、特に慎重に準備が必要となります。
弁護士に早期に相談・依頼をしておくことで、裁判員裁判までの期間を十分に使いながら準備を行うことが期待できます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、裁判員裁判対象事件であっても、刑事事件を多く取り扱う弁護士がご相談・ご依頼を受け付けています。
0120-631-881では、専門スタッフがご相談者様のご状況に合わせたサービスをご案内中です。
まずはお気軽にお問い合わせください。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら