(事例紹介)家出させて未成年者誘拐罪に問われた事例

~事例~

京都府警山科署は29日、未成年者誘拐の疑いで、京都市山科区、トラック運転手の男(41)と、妻で無職の女(31)を逮捕した。
(中略)
2人の逮捕容疑は21日午前7時ごろ、大阪府在住の無職少女(17)に対し家出をするよう誘い出し、大阪府内にある鉄道駅近くから自宅まで誘拐した疑い。
(後略)

(※2022年5月29日22:58京都新聞配信記事より引用)

~未成年者の家出と未成年者誘拐罪~

今回取り上げた事例では、男性とその妻の女性が未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されています。
逮捕容疑である未成年者誘拐罪は、刑法で定められている犯罪の1つです。

刑法第224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

刑法第224条では、未成年者を略取するか誘拐した場合に、3月以上7年以下の懲役となることが定められています。
未成年者を略取した場合には未成年者略取罪が、未成年者を誘拐した場合には未成年者誘拐罪となり、どちらもその刑罰が3月以上7年以下の懲役になるということです。
今回取り上げた事例では、このうち未成年者誘拐罪が逮捕容疑となっています。

刑法第224条の条文に登場する「略取」も「誘拐」も、未成年者を元々の生活環境から離れさせて、自分や第三者の支配下に置くということは共通している行為です。
しかし、「略取」と「誘拐」はその手段として用いるものが異なります。
「略取」は手段として暴行や脅迫を用いて、相手の意思に反して連れ出すイメージの行為です。
例えば、未成年者に対して「ついてこなければ殺すぞ」などと言ってその場から連れ去ったり、歩いている未成年者を無理矢理車に乗せてその場から連れ去ったりしたケースでは、未成年者略取罪となることが考えられるでしょう。

一方、「誘拐」は、誘惑や欺罔(人を騙すこと)を用いて連れ出すようなイメージの行為です。
例えば、未成年者に対して「ついてくれば好きなものを買ってあげる」などと言って連れ出したり、そういった事実はないのに「お母さんが倒れたから病院まで連れて行く」などと嘘をついて連れ出したりした場合には、未成年者誘拐罪に問われることが予想されます。

こうした手段の違いによって、刑法第224条の未成年者略取罪なのか未成年者誘拐罪なのかということが分かれます。

では、今回取り上げた事例のようなケースではどうでしょうか。
未成年者誘拐事件というと、「未成年者を連れ去ろう」という意識のもと行われるというイメージがあるかもしれませんが、先ほど挙げた通り、「誘拐」とは、大まかに言えば、誘惑や欺罔を手段として未成年者を元々の生活環境から離して自分や第三者の支配下に置くことを指します。
この「誘拐」という行為は、未成年者本人の権利だけでなく、未成年者の保護者の権利(未成年者を監護する権利)も侵害するものと解されています。
ですから、たとえ未成年者本人の同意があったとしても、その親などの保護者の同意がない状態で未成年者をその生活環境から離れさせてしまえば、未成年者誘拐罪となりえます。

今回の事例は、報道では男性と女性が女子高生に対して家出に誘ってその生活環境から連れ出したという内容になっています。
つまり、未成年者本人は家出に乗り気であったとしても、その保護者に対して同意を得ていなかったのであれば、その家出に協力して未成年者を元々の生活環境から離したということは、家出の際の滞在場所を提供するという誘惑を用いて未成年者を連れ出したということで「誘拐」になり得るということになります。

いわゆる誘拐事件のイメージから、積極的に未成年者を連れ出したり連れ去ったりする行為がなければ誘拐罪にならないのではないかと考えられる方もいらっしゃいますが、繰り返すように、未成年者本人とその保護者が同意した上で生活環境から離れたものであるかどうかということが、未成年者誘拐罪となるかどうかにとって重要なことの1つです。
今回のケースのように「家出をした未成年に協力した」という場合でも未成年者誘拐罪に問われる可能性は十分存在します。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にも、こうした未成年の家出に関わる未成年者誘拐事件のご相談やご依頼はしばしばございます。

未成年者誘拐罪は、親告罪といって、告訴がなければ起訴されない犯罪です(刑法第228条)。
そのため、示談によって告訴を取り下げてもらったり、告訴を出さないという約束をしてもらえれば、起訴されずに事件が終了する(刑事裁判にならない)ということになります。
未成年者誘拐罪の示談交渉相手は未成年者の保護者ということになりますから、被害感情が強かったとしても自然なことでしょう。
こうした場合に当事者だけで謝罪や示談交渉を進めて余計にこじれてしまうというケースもありえます。
刑事手続への対応のアドバイスを受けることも含め、専門家であり第三者である弁護士にサポートを求めることが有効でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、未成年者の家出に関連した未成年者誘拐事件についてもご相談いただけます。
まずはお気軽にご相談ください。

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