~事例~
京都中央信用金庫は21日、元職員の男性(35)が新型コロナウイルス対応の実質無利子・無担保融資を利用した取引先に対し、必要のない手数料を不正に要求し、一部を受け取った疑いがあると発表した。
(※2022年9月21日15:09京都新聞配信記事より引用)
京都中央信金によると、不正があったとされるのは、男性が本店営業部渉外係だった2020年9~10月。取引先2社に虚偽の説明を行った上で、保証料などの手数料を要求し、うち1社から32万9千円を受け取った疑いがある。残る1社にも280万円を求め、この会社が同信金に問い合わせたことで問題が発覚した。
男性は不正な要求や手数料の受け取りを否定したが、同信金は20年12月30日付で懲戒解雇し、京都府警下京署に告発。京都地検が今月14日、男性を詐欺罪と詐欺未遂罪で起訴したという。
(後略)
~不正請求と詐欺罪~
今回取り上げた事例では、信用金庫に勤務していた男性が、取引先に対して本来不要である手数料を不正請求し一部を受け取ったとの容疑で、京都府下京警察署に告発され、京都地検に起訴されたという報道の内容となっています。
この男性にかけられた容疑は、詐欺罪と詐欺未遂罪と報道されています。
男性が行ったとされる不正請求と、詐欺罪の成立条件を照らし合わせて確認してみましょう。
刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
刑法第250条
この章の罪の未遂は、罰する。
刑法第246条第1項では詐欺罪が、刑法第250条では詐欺罪を含めた刑法の「第37章 詐欺及び恐喝の罪」の未遂罪が規定されています。
詐欺罪は、「人を欺」くことと、それによって「財物を交付させ」ることによって成立する犯罪であり、「財物を交付させ」るまで至れば詐欺罪が既遂(達成された)と考えられます。
しかし、「人を欺」くことをしたものの、「財物を交付させ」るまで至らなかったような場合には、詐欺罪の実行に着手したものの結果まで至らなかったとして、詐欺未遂罪に問われることとなると考えられます。
今回取り上げた事例では、報道によると、男性は、本来不要であるはずの手数料を取引先に不正請求し、その一部を受け取ったとされています。
報道では、男性は虚偽の説明によって、必要のない手数料などを取引先の2社に要求し、うち1社から手数料の名目でお金を受け取ったとされています。
本来不要な手数料だと分かっていたのであれば取引先が男性にお金を支払うことはなかったでしょうから、報道の内容が事実であれば、男性がその支払いに関する重要な事実を偽って取引先にお金を引き渡させた=「人を欺いて財物を交付させた」=詐欺罪が成立することになります。
また、報道では、男性が不正請求を行った2社のうち1社は、男性にお金を支払う前に信用金庫に問い合わせを行い、今回の事件が発覚したとされています。
この場合、この1社については男性にお金を支払う前=「財物を交付」する前だったということになりますから、男性は「人を欺」く行為を実行に移したものの、「財物を交付させ」るという詐欺罪の結果までは至らなかったということになります。
このことから、お金の支払い前に発覚した1社については、詐欺未遂罪の容疑がかけられているものと考えられます。
今回取り上げた事例では、すでに男性は詐欺罪・詐欺未遂罪の容疑で起訴されたと報道されています。
刑事裁判の詳細な流れなどは、なかなか一般の方に浸透していないこともあり、起訴され刑事裁判を受けることになったということ自体に強い不安を感じる方も少なくありません。
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