1.不起訴処分とは
すべての刑事事件は原則として検察官のもとに集まり、検察官が最終的な処理することとなります。
検察官が当該事件について必要な捜査を遂げた後に、公訴を提起(起訴)するか否かを最終的に決めることとなります。
この検察官による最終的な処分のことを「終局処分」といいます。
検察官の行う終局処分には、大きく分けて、起訴処分、不起訴処分、家庭裁判所送致があります。
起訴処分の中には、公判請求するもの(正式な裁判にかけること)と略式起訴といって罰金を支払うことによって手続きから解放される簡易な手続きとがあります。
なお、略式処分は簡易な手続きですが、前科はつきます。
一方、不起訴処分とは、容疑者である被疑者を起訴しない、つまり、裁判にかけることはしないという処分をいいます。
起訴するかどうかを決定するのは検察官ですから、検察官が不起訴処分をすれば、これにより事件は終了することになります。
したがって、勾留により身柄拘束を受けていた場合は直ちに釈放されますし、前科が付くこともありません。
2.不起訴の種類
不起訴処分は、理由に応じて、いくつかに分類できます。
(1)訴訟条件を欠く場合
訴訟条件とは、訴訟を適法に成立させて実体審理を進め、判決を言い渡すことが出来る条件のことをいいます。
つまり、これを欠く場合は、公訴提起が無効となり、あるいは審理を進めることが出来ず、または、裁判所が有罪・無罪と判決することが出来ないということです。
訴訟条件には、被疑者が死亡した場合や既に判決が出た事件である場合、時効の完成、親告罪の告訴を欠く場合など複数あります。
これらは、本来は裁判官が判断する事項ですが、訴訟条件を欠く場合には公訴提起が無効となるので、事前に訴訟条件を欠いていることが明らかである場合には、起訴権者である検察官が、不起訴処分を行うのです。
そして、このうち実務上重要なのは、親告罪の告訴を欠く場合です。
親告罪の場合、起訴までに告訴がなされる必要がありますから、検察官による起訴がなされる前に被害者に告訴を取り下げてもらうよう交渉する余地があります。
(2)被疑事件が罪とならない場合
刑事責任を問えない14歳未満の刑事未成年者の場合や正当防衛、心神喪失などにより、罪に問えないことが明らかな場合や、嫌疑のかかっている事実が認められたとしても、そもそも犯罪には当たらないような場合に、検察官は不起訴処分をします。
(3)犯罪の嫌疑がない場合(嫌疑なし、嫌疑不十分)
被疑事実につき、被疑者がその行為者でないことが明白なとき、又は犯罪事実を認定すべき証拠のないことが明白なとき、又は犯罪事実を認定すべき証拠の無いことが明白なときを「嫌疑なし」といいます。
一方、被疑事実につき、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分な時にする処分を「嫌疑不十分」といいます。
無罪の証拠を集めることや捜査機関が収集した証拠の信用性が低いことなどを主張し、不起訴が相当であると検察官を説得することが重要です。
(4)起訴猶予
被疑事実が明白な場合において、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況により訴追を必要としないときにする処分を起訴猶予といいます。
不起訴処分の中で圧倒的な割合(90%程度)を占めており、事件の約60%が起訴猶予処分により終結します。
起訴猶予に当たって考慮される事項は、上記起訴猶予の意味より
- 犯人に関する事項
- 犯罪行為に関する事項
- 犯行後の状況に関する事項
です。
①犯人に関する事項とは前科、前歴の有無です。前科、前歴がなければ起訴猶予に傾きやすく、一方で特に同種前科・前歴がある場合には起訴される可能性が高まります。
次に、②犯罪行為に関する事項については、犯罪行為の内容が悪質であればあるほど起訴の可能性が高まります。
更に、③犯行後の状況については、被疑者の方の反省の有無や特に「被害弁償・示談」が最も重要となります。
起訴猶予を勝ち取るためには、被疑者が犯行を認めた上で、被害者への被害弁償や示談交渉を進めておく必要があります。
被害弁償や示談は、被疑者本人で行うことは非常に難しいです。
早期の釈放や前科を回避するためにも、不起訴獲得が得意な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
3.不起訴のメリット
不起訴を勝ち取ることで多くのメリットを得ることができます。
例を挙げると
①前科がつかない
努力してせっかく取得した資格がはく奪されるということがなくなります。
また資格取得を目指している方は受験資格を失わずにすみます。
②釈放される
厳しい取調べから解放され、ご自宅に帰ることができます。
③解雇を回避できる可能性がある
もし、身体拘束されていることが会社に判明していなければ、ご自宅に帰ることができますので職場復帰できます。
また、会社に判明していたとしても、逮捕されたとしても不起訴処分になることで、解雇にならないケースもありえます。
③裁判をすることなく事件が終了する
テレビドラマでよく見る、法廷に行く必要がなく精神的な負担がなくなります。
④示談をしていれば、民事裁判も起こされないため事件は完全解決する。
もし、被害者と示談ができていれば事件解決です。新たな一歩を歩むことができます。
4.弁護士がつくことにより不起訴処分につながりやすい
まず、問題となっている事件が、親告罪の場合には、告訴を取り下げてもらうことにより、不起訴処分を獲得できるよう示談を含め被害者との交渉に当たります。
その他の場合、被疑事件がそもそも犯罪にならない場合や、犯罪には該当しても証拠が乏しいと考えられるような事件では、検察官に対して不起訴処分として早期に身柄を解放するように働きかけます。
そして、罪を認める場合には、真摯な反省の意思や今後の更生の可能性が高いこと、再犯の恐れがないこと、更生に向けての環境が整備されていること、被害者との示談が成立していること等を主張し、検察官に起訴猶予処分とするよう働きかけます。
この場合に、もっとも強力な事情となるのが被害者との示談が成立していることです。
示談については、「示談で解決したい」へ
5.少年事件(20歳に満たない者の事件)には不起訴処分はない!?
前述のように、検察官の行う終局処分には、大きく分けて、起訴処分、不起訴処分、家庭裁判所送致があります。
少年事件の特殊性として、嫌疑がある場合、事件は全て家庭裁判所に移され、少年審判手続きに移行します。
つまり、成人の刑事事件における起訴猶予のように捜査機関限りで事件を終了させることは認められていません(「全件送致主義」といいます)。
これは、少年事件の専門機関である家庭裁判所に、今後の少年の判断をゆだねるもので処罰をするかどうかよりも少年の教育を重視すべきという考えが根底にあるからです。
もっとも、不起訴処分がないとしても示談は有効な手段です。
特に近年は、被害者への配慮が重視されていることに加え、少年自身が被疑者に対して誠実に対応する姿勢を示すことは少年の今後の更生にとっても非常に重要なことです。
また、少年の身体が拘束されている場合、示談成立により身体拘束から解放することにつながりやすい側面もあります。
※少年事件については、「少年事件」へ
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