【事例紹介】不法就労をあっせんしたとして逮捕された事例
不法就労をあっせんしたとして、入管難民法違反(出入国管理及び難民認定法違反)の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都府警組対1課と下鴨署は(中略)、入管難民法違反(不法就労あっせん)などの容疑で、コンサルティング会社役員の男(中略)、ベトナム国籍の人材派遣会社役員の女(中略)ら計3人を逮捕した。
(11月17日 京都新聞 「ベトナム人の20代女性2人に不法就労あっせん 容疑で男女3人逮捕」より引用)
3人の逮捕容疑は、(中略)ベトナム国籍の20代女性2人を、在留資格で認められていない仕事をさせる目的で京都市左京区の飲食店にあっせんした疑い。
在留外国人と不法就労
外国人が日本に在留するためには、原則として、上陸許可や在留資格が必要になります。(出入国管理及び難民認定法(以下では、「入管難民法」といいます。)第2条の2第1項)
在留資格を取得していれば自由に就労することができるわけではなく、取得した在留資格によって就ける職種などが限定されています。(入管難民法第19条第1項)
ですので、取得している在留資格で許可されていない仕事を行った場合には、不法就労になってしまいます。
例えば、「法律・会計業務」の在留資格を持っている人が、弁護士の職に就くことは可能ですが、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を必要とする通訳の職に就くことはできませんし、もしも通訳人として報酬を得ていたのであれば、不法就労になってしまいます。
今回の事例では、ベトナム国籍の女性2人を在留資格で認められていない仕事をさせる目的で飲食店にあっせんしたとされています。
飲食店で働くのに必要な在留資格とはなんでしょうか。
厚生労働省によると、外食業などの特定産業分野の各業務従業者は、特定技能の在留資格が必要だとしています。
今回の事例の報道だけでは、実際にどのような仕事だったのか明らかではないため、一概に特定技能の在留資格が必要だったとはいえませんが、あっせん先が飲食店であることから、特定技能の在留資格が必要だった可能性があります。
その場合には、特定技能以外の在留資格を所持していた場合には、不法就労にあたりますので、入管難民法違反が成立する可能性があります。
また、特定技能以外の在留資格が必要な仕事であった場合にも、その仕事内容にあった在留資格を有していない場合には、当然、不法就労にあたりますので、入管難民法違反が成立するおそれがあります。
不法就労を行い、入管難民法違反で有罪になった場合には、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは200万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科されます。(入管難民法第73条)
また、不法就労に専念していたと判断される場合には、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科されます。(入管難民法第70条第1項第4号)
不法就労のあっせん
入管難民法では、業として外国人に不法就労をさせる行為のあっせんや不法就労目的で自己の支配下へ置こうとしている者へのあっせんは禁止されています。
今回の事例の容疑者らが、上記の行為に該当するようなあっせんを行っていたのであれば、入管難民法違反が成立するおそれがあります。
あっせん行為により入管難民法違反で有罪になった場合には、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。(入管難民法第73条の2第1項)
また、過失のない場合を除いて、不法就労にあたることを知らなかった場合にも入管難民法違反は成立し、上記の刑罰を受けることになります。(入管難民法第73条の2第2項)
共犯と釈放
今回の事例では3人の容疑者が逮捕されています。
刑事事件では共犯が疑われる場合には、証拠隠滅の観点から、釈放が認められづらい場合が多いです。
証拠をイメージする場合には、犯行に使用した物など、いわゆる物的証拠を思い浮かべる方が多いと思います。
実は、刑事事件では、そういった物的証拠以外にも供述証拠と呼ばれるものが存在します。
供述証拠は、容疑者らの取り調べでの供述や、事件関係者の証言などの話した内容が証拠となります。
容疑者を釈放することで、容疑者らが連絡を取り合うことができるようになれば、容易に口裏合わせができてしまうことになります。
供述内容も証拠になりますから、口裏合わせにより、容疑者らの都合のいいように供述内容をすり合わせる行為は、証拠隠滅になってしまいます。
こういった事態を避けるためにも、共犯者がいるような事件では、釈放が認められづらくなっています。
しかし、共犯者がいれば絶対に釈放が認められないわけではありません。
例えば、弁護士が検察官や裁判官に働きかけを行うことで、釈放を認めてもらえる可能性があります。
刑事事件では、逮捕後72時間以内に、勾留の判断が行われます。
この勾留の判断前に、弁護士が検察官や裁判官に意見書を提出し証拠隠滅のおそれがないことを訴えることで、釈放される可能性があります。
また、勾留が決定してしまった後でも、弁護士は裁判所に準抗告の申し立てを行うことができます。
この申し立てが裁判所に認められれば、勾留満期を待たずに釈放されることになります。
勾留請求に対する意見書は、勾留が判断されるまでの間にしか提出できません。
ですので、遅くとも逮捕後72時間までには提出をする必要があります。
この機会を逃してしまうと、釈放を求める機会を3回のうち2回も逃してしまうことになります。
意見書の提出には入念な準備が必要になりますので、早期釈放を目指す場合には、早期に弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービスを行っています。
ご家族が逮捕された方、釈放を目指している方は、お早めに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。