歩道橋から自動車に向かって自転車を投げた事案について①

歩道橋から自動車に向かって自転車を投げた事案について①

逮捕の瞬間

14歳の少年が歩道橋から自動車に向けて自転車を投下し、逮捕されてしまった場合における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事例

京都市に住むAくんは、14歳の中学2年生です。
Aくんはあまり両親の言うことを聞かず、学校にもほとんどいかないで、友人の家を転々とする生活をしています。
ある日、Aくんと友人たちは、歩道橋から自動車に向かって自転車を落とすイタズラを思いつき、すぐに実行に移しました。
Aくんは自転車を自動車に向けて投下したところ、自転車はフロントガラスを破壊し、運転手に直撃してしまいました。
運転手は重傷を負ってしまい、現場に駆け付けた警察官に、現行犯逮捕されてしまうことになりました。
(事例はフィクションです。)

Aくんの犯罪行為について

Aくんには、殺人未遂罪、または、傷害罪が成立することになるでしょう。
道路交通法違反の罪(道路における禁止行為)にも問われる可能性があります。
Aくんらの行為は、ただのイタズラでは済まないと言えるでしょう。

殺人未遂罪(刑法第119条、203条)

殺人の実行に着手し、これを遂げなかった場合に殺人未遂罪が成立します。
一般的に、殺人の実行と言われるのは、「行為者が殺意をもって他人の生命に対する現実的危険のある行為を開始したとき。」と説明されることが多いようです。
事例の場合は、走行している自動車に向けて、ある程度の高さから、質量のある物を投下する行為には、フロントガラスを破って運転手に当たるなどした結果、他人の生命を害する現実的危険性があると認められるものと思われます。

実行の着手時期は、Aくんらが自動車に向けて自転車を歩道橋から投下したあたりにおいて認められると言えるでしょう。
殺意を持って上記行為を行えば、被害者の死亡結果が生じなくても、殺人未遂罪が成立することになります。

また、殺意の有無も問題となるでしょう。
Aくんらが他人の死亡を想定していなかったとしても、「自転車を投下することで他人が死亡することはありうるだろう。」と思って投下したのであれば、殺意は認定される可能性があると思われます。
これを未必の故意と言います。
未必の故意は、罪となる事実の発生を積極的に望まなくても、結果的に生じる可能性がある、かつ起きてもやむを得ないと考える故意を意味します。

傷害罪と殺人罪の成否

殺人罪においては、殺意が重要となりますが、殺意が認められなければ罪にならないのかというとそうではありません。
殺人罪が立証できない場合においても、他の罪で立証されていくことになるでしょう。
事例の場合では、Aくんらが自転車を投下する行為によってけがを負わせていますから、傷害罪(刑法第204条)も視野に入れる必要があると言えます。

殺意を否定する場合は、作成される調書の記載内容などに注意する必要があります。
作成された調書は重要な証拠となるからです。
当然、調書の内容だけで殺意があったかどうか判断されるわけではありませんが、殺意があったと判断されることを防ぐためにも、取調べ対策を行い、意に反した供述調書の作成を防ぐことが重要になってきます。

例えば、驚かすつもりで自転車を投下していて運転手に直撃させるつもりはなく、自らの行為によって人が死亡する可能性があるとは微塵も思わなかった場合もあるでしょう。
そのような場合には、自転車を運転手や車に当てるつもりはなかったこと、自転車を投下することで人が死ぬような危険性はないと思っていたことを主張していくことが重要になってくると考えられます。

道路交通法違反の罪

道路交通法第76条4項4号により、「道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること」は禁止されています。
成人であれば、同法第120条1項9号により、5万円以下の罰金に処される罪です。

事例については、殺人罪あるいは傷害罪の成立に加えて、道路交通法違反も成立する可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービスを行っています。
ご家族が逮捕された方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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