被害者対応

1.被害者ができることは何がありますか? 

捜査段階

(1)捜査機関に動いてほしい(被害届、告訴、検察審査会)

【被害届】
被害の事実を警察などの捜査機関に申告する届出をいいます。

【告訴】
犯罪の被害者その他の一定の者が、捜査機関に被害事実を申告し、さらに、犯人の処罰を求める意思を表示することをいいます。

※犯罪の中には(名誉棄損罪、器物損壊罪等)、告訴がなければ公訴が提起されないものがあります。これを親告罪と言います。ですので、加害者の処罰を希望される場合には告訴が必要ですので注意が必要です。

また、通常、告訴期間は犯人を知った時から6か月ですので注意が必要です。

【検察審査会】
検察官が不起訴とした事件について、検察審査委員が不起訴の相当性を審査する制度です。

起訴相当な事件に関しては、裁判所によって指定された弁護士が公訴を提起して、公判を開始される可能性があります。

(Q&A)

①被害届と告訴の違いは何?

告訴は、犯人の処罰を求める意思表示です。

告訴を受理した捜査機関は捜査を開始しなければならず、捜査開始の有無が警察の判断にゆだねられる被害届とはこの点で大きく異なります。

②自分の子どもが犯罪にあったのですが、親が告訴できますか?

できます。

刑事訴訟法231条1項は、「被害者の法定代理人は独立して告訴をすることができる」と規定されています。

但し、お子様の2次被害を考えると、お子様の意思を尊重すべきであり意に沿わないような告訴を行うことには熟慮が必要と考えます。

③告訴は取消しできるの?

公訴の提起があるまでは取下げができます。

ただし、告訴の取消しをした場合は、更に告訴をすることができないので取下げには慎重さが要求されます。

(2)被害者がどうなったのか知りたい(被害者連絡制度、処分結果等の通知)

【被害者連絡制度】
被害者への連絡通知制度として、警察においては、被害者連絡制度が設けられています。
通知の内容は以下のものです。

 ・犯人と思われる者の検挙の旨
 ・被疑者の氏名
 ・処分状況(送致先検察庁、処分結果、起訴された場合には係属裁判所)

【処分結果等の通知】
告訴した人は、検察官から、処分結果(起訴の有無等)や不起訴にした場合には不起訴理由の通知をうけることができます。

(3)身体的・精神的損害についてお金を支払ってほしい(示談・犯罪被害者等給付金制度)

【示談】
示談する方法があります。

加害者に弁護士がついていた場合、示談金の落としどころや不利な示談を結ばされるか不安に思うことがあるかもしれませんが、被害者の方も弁護士をつけることにより妥当な解決を図ることができます。

※なお、示談は捜査段階だけでなくそれ以後も可能ですが、加害者の早期解放と社会復帰により被害弁償に見通しを立てるべく、早期に行うことがよい場合もあります。

【犯罪被害者等給付金制度】
殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死を遂げた犯罪被害者の遺族または重傷病または障害という重大な被害を受けた犯罪被害者に対して、国が給付金(遺族給付金等)を支給する制度です。なお、申請は捜査段階に限りませんが時効消滅(※)との関係で期間制限はあります。

国からの給付金ですので、加害者の資力の有無はといません。

ただし、不支給事由、給付制限、時効消滅の問題等がありますので、犯罪被害者等給付金制度についてご相談がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へお問い合わせください。

(※)時効消滅
裁定申請については、当該犯罪行為による死亡、重症病または障害の発生を知った日から2年で消滅時効となります(但し、やむを得ない事由によりこれらの期間内に裁定申請をすることができなかったときは、理由のやんだ日から6か月以内)。加えて、当該死亡、重傷病または障害が発生した日から7年経過すると申請ができなくなります。

公訴提起後

(4)事件の情報を知りたい(記録の閲覧・謄写請求)

第1回公判前は検察官に対し請求することによって(刑事訴訟法47条但書)、第1回公判後は裁判所に対し請求することによって、捜査機関による捜査記録及び裁判所における公判記録の一部を閲覧・謄写できます。

(5)加害者に対して自分の思いを伝えたい(心情意見陳述、被害者参加制度)

【心情意見陳述】
被害者は、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見を述べることができます。被害に関する心情とは、被害を受けたことで抱くに至った気持ちをいい、被告事件に関する意見とは、被害に関する心情を含む被告事件に関連する被害者らの考えをいいます。

心情意見は、検察官や被害者に選任された弁護士に代読させる運用もなされています。

※意見陳述の内容は情状証拠になることがあります。

【被害者参加制度】
一定の犯罪(※)について、①情状に関する事項についての証人(情状証人)に対して尋問すること(被害者による情状証人に対しての弾劾を認める規定)、②被告人に対する質問(心情意見陳述などの実効性を確保するための規定)、③事実・法律の適用に関する意見の陳述が可能となります(被害者論告といい、被害者自身の立場から求刑意見を述べることが可能)。

なお、被害者やその法定代理人から委託を受けた弁護士もかかる制度の申し出をすることができます。

※一定の犯罪

  1. 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  2. 強制性交等罪(「旧 強姦罪」)・準強制性交等罪(「旧 準強姦罪」)・(準)強制わいせつ
  3. 業務所過失致死傷、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱(無免許の場合を含む)、過失運転致死傷の罪(無免許の場合を含む)の罪
  4. 逮捕および監禁の罪
  5. 略取誘拐、人身売買の罪
  6. ②~⑤の犯罪行為を含む犯罪
  7. これらの未遂罪

(6)身体的・精神的損害についてお金を支払ってほしい

(刑事和解、損害賠償命令、示談、犯罪被害者等給付金制度)

【刑事和解】
被告人と被害者が、示談等の内容を刑事裁判の公判調書に記載することを共同して求める制度です。

これにより、裁判所を通じて示談が成立したのと同様の効果を得ることができ、もし、加害者が支払いを怠った時などに、強制執行をすることが可能となります。

金銭の支払いが分割払いである場合や、被告人が不動産等の執行できるような財産を有している場合に本制度を利用するメリットがあります。

【損害賠償命令】
一定の犯罪について、簡易・迅速な手続きによって、被告人に被害者への損害賠償を命じるよう裁判所に申立てることができます。民事訴訟に比して労力と費用の負担が少ない点がメリットとして挙げられます。

一方、損害賠償名理恵の審理および裁判は、刑事被告事件の終局裁判の告知があるまでは行われませんので、示談のような極めて早期の解決は望めません。

また、交通事故等で過失層や後遺症が問題となる事件など、複雑な論点がある場合にはなじまない制度です。

被害者の方が損害賠償命令制度を利用しようとする場合には、被害者との間で別途委任契約を締結する必要がありますので、損害賠償命令制度について何か疑問がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へお問い合わせください。

(※)一定の犯罪

  1. 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、
  2. 強制性交等罪(「旧 強姦罪」)・準強制性交等罪(「旧 準強姦罪」)・(準)強制わいせつ
  3. 逮捕および監禁の罪
  4. 略取誘拐、人身売買の罪
  5. 上記②~④の犯罪行為を含む犯罪、
  6. これらの未遂罪

【示談、犯罪被害者等給付金制度】
示談、犯罪被害者等給付金制度は捜査段階の記述と同じです。

2.加害者に自分の住所や個人情報を知られたくないのですが、何か方法がありますか?

法律・実務上、例えば下記のような制度・運用があります。

(1)逮捕状・勾留状の被害者情報秘匿

性犯罪等では、加害者に住所・氏名を知られると再び被害が発生する可能性等が心配されます。

そこで、性犯罪やストーカー事件等については、匿名で逮捕状・勾留状を発布する運用がなされています。

(2)被害者特定事項の秘匿

一定の犯罪(性犯罪等)に関しては、被害者の情報が公開の法廷で明らかにされると被害者の方に2次被害が生じてしまいます。

そこで、裁判所は一定の場合、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができます。

例えば、起訴状の朗読において被害者特定事項を明らかにしない方法で行われたり、証拠書類の開示にあたっては被害者特定事項がマスキングされたり、法廷で尋問をするに際しても制限が施される等の規定が設けられています。

(3)【改正情報(平成2812月までに施行)】~犯罪被害者等・証人の保護方策の拡充~

イ.証人の氏名・住居の開示に係る措置

検察官が証人等の氏名及び住居を知る機会を与える場合等において、

  1. その証人等又はその親族に対し、身体・財産への加害行為又は畏怖・困惑行為がなされるおそれがあるときは、弁護人には氏名・住居を知る機会を与えた上で、これを被告人には知らせてはならない旨の条件が付されました。
  2. 前期の行為を防止できないおそれがあると認めるとき、その証人等の氏名又は住居を知る機会を与えないで、これらに代わる呼称及び連絡先を知る機会を与える措置が導入されました。

ロ.公判廷での証人の氏名等の秘匿措置

裁判所は、一定の場合に、証人等から申出があるときは、検察官及び被告人または弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、証人等特定事項(氏名及び住所その他)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができます。

(4)被害者が証言する際の保護(「付添い」、「遮蔽」、「ビデオリンク」、「退廷」制度)

【付添い制度】

裁判所は、証人を尋問する場合において、証人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の供述中、証人に付き添わせることができます。

【遮蔽制度】

裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が被告人の面前において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、被告人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができます。

【ビデオリンク制度】

訴訟関係人等が、テレビモニターを用いてその姿を見ながら、マイクを通じて証人尋問を行うものです。現行法は、同じ裁判所構内の別室に在席する証人に対して行われていましたが、改正法では同一構内以外の裁判所(別の裁判所)でも、一定の場合にビデオリンク制度が導入されることとなりました。

【退廷制度】

裁判所は、証人が充分な供述をできないと判断するときは、「被告人」や「傍聴人」を一時退廷させることができます。

上記事項は被害者対応の一部です。また、各制度には細かな要件が設けられているため、被害者の方の具体的な事情・犯罪の内容等によって利用できる制度が異なってきます。

被害者対応に関して疑問点やご相談がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までお問い合わせください。事件解決に向けた親身で全力のサポートを致します。

 

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