文書偽造罪と詐欺罪①

2019-02-09

文書偽造罪と詐欺罪①

滋賀県長浜市に住んでいるAさんは、V銀行から住宅ローンの融資を受けたいと考えていましたが、V銀行が融資をする借入条件の年収に届かない年収でした。
そこでAさんは、源泉徴収票や所得証明書を偽造して、実際の収入よりも多い収入のあるような偽の源泉徴収票や所得証明書を作成しました。
そしてAさんは、それらの偽の書類をV銀行に提出し、住宅ローン3,500万円を融資してもらいました。
しかしその後、Aさんの収入が嘘であったことや、提出された書類が偽物であることが発覚し、V銀行が滋賀県木之本警察署に届け出たことで、Aさんは詐欺罪有印公文書偽造・同行使罪などの容疑で滋賀県木之本警察署に逮捕されてしまったため、Aさんの家族は京都府滋賀県刑事事件に対応している弁護士に相談しました。
(※平成31年2月6日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・文書偽造罪と詐欺罪

今回のAさんは、収入部分を偽った源泉徴収票や所得証明書を作成し、住宅ローンの融資を受けていますが、どの部分でどういった犯罪が成立しうるのでしょうか。

【文書偽造罪】
まず、Aさんは偽の源泉徴収票や所得証明書をV銀行に住宅ローンの審査のために提出する目的で作成しています。
この点につき、文書偽造罪が成立すると考えられます。

文書偽造罪の言う「偽造」とは、一般的に、その名義でその文書を作成する権限がないにもかかわらず、勝手に他人名義で文書を作ってしまうことを指します。
そして、単にすでに存在している他人名義の文書の内容を変更することは「偽造」ではなく「変造」と呼ばれるのですが、「変造」と呼ばれるのは文書の非本質的部分を変更した時だけです。
つまり、他人名義の文書の内容を変更した時でも、その変更された部分が文書の本質的部分である場合には「偽造」したと認められるのです。

今回のAさんの行為をこれに当てはめて考えてみましょう。
Aさんが変更したのは源泉徴収票と所得証明書の収入の部分です。
源泉徴収票とは給与等の支払額や源泉徴収額を証明する文書であり、所得証明書とは所得とそれに対する住民税の課税金額を証明する文書です。
両者のこうした性質からすれば、収入額は源泉徴収票と所得証明書の本質的な部分といえますから、それを勝手に偽ったAさんはこれらの文書を偽造したと言えそうです。

文書偽造罪といっても、偽造する文書の種類により、成立する犯罪名が異なります。
例として2つの文書偽造罪を挙げてみます。

刑法155条1項(有印公文書偽造罪)
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

刑法159条1項(有印私文書偽造罪)
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

この2つの違いは、文書の作成者が誰か、という点です。
公務員や公務所が作成する文書で印章を使用する文書を偽造した場合には、「有印公文書偽造罪」が成立しますし、私人の作成する文書で印章を使用する文書を偽造した場合には「有印私文書偽造罪」が成立します。
今回のAさんは、会社が発行する源泉徴収票と、役所が発行する所得証明書を偽造しています。
ですから、それぞれ「有印私文書偽造罪」と「有印公文書偽造罪」が成立すると考えられるのです。
なお、こうして偽造された文書を使用した場合には、文書偽造罪だけでなく、偽造文書を行使した罪も成立します。

このように、文書偽造罪はそもそも「偽造」になっているのかという点からも争われる可能性のある犯罪であり、何を偽造したかによっても罪名や法定刑の変わってくる複雑な犯罪です。
文書偽造罪でお悩みの際は、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士までご相談ください(お問い合わせ:0120-631-881)。
次回はAさんについて成立しうるもう1つの罪である詐欺罪について取り上げます。