預かっていた自動車を無断で売却したとして横領罪の疑いで逮捕された事例

預かっていた自動車を無断で売却したとして横領罪の疑いで逮捕された事例

逮捕される男性

預かっていた自動車を無断で売却したとして横領罪の疑いで逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都府伏見警察署は、京都市伏見区内に住む会社経営の男性を横領罪の疑いで逮捕した。
男は、3年前から海外勤務をすることとなった知人から「帰国するまでの間、車を預かって欲しい」「預かってもらっている間は自由に使ってもらって構わない」と頼まれたため、経営する会社の駐車場にその自動車を停めていた。
ところが、経営する会社の負債が膨らみ立ち行かなくなったため、男は返済のためその自動車を売却した疑いが持たれている。
帰国した知人が、そのことに気づき被害届を提出したことで捜査の端緒となった。
男は取調べに対し「借金を返すため会社にあるめぼしい財産を片っ端から売る中で、知人の物ということを忘れてうっかり売却してしまった」と容疑を否認している。
(フィクションです)

横領罪とは

刑法252条1項
自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。

本件では、男は横領罪の疑いで逮捕されています。
横領罪とは、簡単にいうと他人から頼まれて預かった物などを自分の物にしてしまう犯罪です。
252条1項の横領罪が成立するための要件を①主体、②客体、③行為の3つの側面から見ていきましょう。

まず①主体すなわち、横領罪を犯すことができるのはどのような人物かについて。
252条1項の横領罪を犯すことができるのは、他人の物を占有(財物の事実的な支配や管理)する者に限られます。
本件では、男は、知人から頼まれて知人の自動車を預かっていますから、横領罪の主体にあたる可能性があります。

次に横領罪の②客体は、条文上「自己の占有する他人の物」とされていますが、文字通り自己の占有する他人の物すべてが客体となるわけではありません。
占有を離れた物を横領する行為については、刑法254条の占有離脱物横領罪が成立します。
したがって、252条の横領罪の客体となるのは、持ち主から頼まれて預かった場合のように、委託信任関係を原因として事実上または法律上支配力を有する状態下にある他人の物に限定されます。
本件では、男は知人から頼まれて自動車を預かっていますから、252条の横領罪が規定する客体にあたる可能性があります。

そして③本罪の行為は、横領することです。
横領とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、他人の物に対し経済的用法に従って所有者でなければできないような処分をする行為です(最判24年3月8日)。
本件では、男は、知人から自動車を預かるよう頼まれていたにもかかわらず、当該自動車を売却しています。
物を売るという行為は、その物の所有者にしかできない行為ですから男の行為は横領に当たるといえそうです。

加えて、横領罪が成立するためには、故意すなわち男が横領にあたる行為を認識しながら実行したことが必要です。
警察が疑っているように、男が、自身の借金を返済するために知人の物とわかっていながら自動車を売却したのであれば、故意もあったということになり、横領罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

横領罪は被害者のいる犯罪です。
多くの場合、本件のように、被害者が被害届を提出したことをきっかけに捜査機関の捜査が始まります。
加害者と被害者は見ず知らずの他人ではなく、元々物を預けるというような関係性があることから、被害弁償がされれば被害届を出さない被害者もいらっしゃるようです。
したがって、きちんと謝罪と被害弁償をすれば被害届が提出されず、事件化を防げる可能性があります。
仮に、被害届が提出され事件化してしまった場合であっても、被害者との間で示談が成立していれば、不起訴処分となったり、執行猶予付き判決が得られる可能性もあります。
もっとも、加害者自ら、示談成立のための条件を交渉した場合、強気にいきすぎて被害者の神経を逆撫でする可能性がありますし、逆に相手のいうことをなんでも飲んでしまい不利な示談条件となってしまう可能性もあります。
そこで、示談交渉は、交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、横領事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分や罪の減軽、執行猶予付き判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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