[事例紹介]京都市の殺人未遂事件で実刑判決となった事例

京都市で起きた殺人未遂事件で実刑判決となった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都市内の解体工事現場で一緒に働いていた男性を工具で刺したとして、殺人未遂の罪に問われたベトナム国籍の技能実習生の男(28)の裁判員裁判の判決公判が17日、京都地裁であった。
安永武央裁判長は「被害結果は重大」として、懲役8年(求刑懲役10年)を言い渡した。
判決によると、2020年12月7日、同市北区の解体工事現場で、とび職男性=当時(30)=を先端のとがったレンチで刺し、首の骨を折るけがや後遺障害を負わせるなどした。
(中略)
判決理由で安永裁判長は、技能実習生の男が男性の背後から首を狙ったとして殺意を認定した上で、男性からの攻撃はなく正当防衛は成り立たないと判断した。
一方で、2人の間で生じたトラブルには、技能実習生が日本で置かれている環境や文化的背景の違いなどがあるとして、「その点については同情することができる」とも述べた。

(6月17日 京都新聞  「工具で同僚刺した技能実習生に懲役8年判決 京都地裁、正当防衛認めず」より引用)

殺人未遂罪

まず、殺人罪は、刑法第199条で「人を殺した者は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役に処する。」と規定されています。

この殺人罪は、未遂であっても処罰され、それが今回の報道の事例で問題にもなっている殺人未遂罪です。(刑法203条)
殺人未遂罪は、殺人罪が「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」と具体的に法定刑が定められていることと異なり、「殺人未遂罪はこの法定刑」というように具体的な法定刑が定められているわけではありません。
刑法203条の条文は、「第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。」とあるだけです。
こうしたことから、殺人未遂罪も殺人罪と同様に、有罪となれば死刑または無期もしくは5年以上の懲役という範囲で刑罰が決められることになります。

しかし、殺人罪(既遂)と殺人未遂罪では、「その犯罪を遂げたかどうか」が異なるため、実際に言い渡される刑罰は、全く同じ態様のことをして殺人罪となったときよりも殺人未遂罪になったときの方が刑罰が減軽される可能性が高いと考えられます。
刑法43条でも、「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」と未遂罪の場合には刑罰を減軽することができると定められています。

刑罰が減軽される度合いについては、刑法68条で定められており、殺人未遂罪の場合、
・死刑を減軽するとき:無期の懲役若しくは禁錮又は10年以上の懲役若しくは禁錮(刑法68条1号)
・無期の懲役又は禁錮を減軽するとき:7年以上の有期の懲役又は禁錮(刑法68条2号)
・有期の懲役又は禁錮を減軽するとき:その長期及び短期の2分の1を減ずる(刑法68条3号)=殺人罪の「5年以上の懲役」の2分の1=2年6カ月の懲役

が刑罰の減軽の限度であるといえます。

今回取り上げた事例では、男性に殺人未遂罪により懲役8年の実刑判決が下っています。
殺人罪の「5年以上の懲役」という下限を上回った判決ですから、刑法68条3号のような刑罰の減軽はなかったようですが、検察官の求刑よりも2年短い懲役刑の言い渡しとなっており、被告人の立場や文化の違いなどの情状が考慮された可能性が考えられます。

殺人未遂事件などの重大犯罪では、重い刑罰が下されることが予想されますから、刑事裁判にも特に入念な準備が必要となってきます。
適切なタイミングで適切な活動を行うためにも、早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。

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