電車での過失傷害事件
電車での過失傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
Aさんは、京都府舞鶴市内を走る電車内で、大きなスーツケースを荷物棚からおろす際、不注意からそのスーツケースを隣に座っていた利用客Vさんの顔に激しくぶつけてしまいました。
Vさんは鼻血を出すほど強く顔面を打ち付けており、駅に着いた際にAさんとVさんは一緒に駅員の元へ向かいました。
その際、Aさんがさほど反省した様子を見せていなかったことからVさんは激怒し、京都府舞鶴警察署に被害を届け出ると言ってきました。
Aさんは、「わざとぶつけたわけではないがそれでも犯罪になるのか」と不安に思い、京都府内の刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・不注意で人に怪我をさせてしまった…犯罪になる?
人に暴行をして怪我をさせたり、怪我をさせるに至らなくても人に暴行をしたりすれば、刑法の傷害罪や暴行罪に当たることは皆さんご存知の通りでしょう。
刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
では、今回のAさんのように、不注意で暴行を加えてしまい、相手に怪我をさせたような場合、これらの犯罪は成立するのでしょうか。
傷害罪や暴行罪は故意犯と呼ばれる犯罪であり、暴行の故意=相手に暴行をするという意思や認識が認められなければ犯罪として成立しません。
つまり、今回のAさんがスーツケースをVさんにぶつけてやろうという意思をもっていない限り、傷害罪や暴行罪は成立しないということになります。
ただし、スーツケースがぶつかりそうであることを分かっていながらあえて「ぶつかってもいいだろう」と思ってぶつけたような場合には、いわゆる「未必の故意」が認められ傷害罪や暴行罪が成立する可能性もあるため、詳細な状況を専門的に検討することは必要です。
・過失傷害罪
では、Aさんのように不注意で人に怪我をさせた場合には、なんの犯罪も成立する可能性はないのかというと、そうではありません。
刑法には、過失傷害罪という犯罪が規定されています。
刑法第209条第1項(過失傷害罪)
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
過失傷害罪は、過失=不注意によって人を傷害してしまった時に成立する犯罪です。
つまり、今回のAさんのケースのような場合には、過失傷害罪が問題となるのです。
では、どんな時に過失傷害罪の「過失」(不注意)が認められるかというと、結果の発生が予見でき、さらに、その結果を回避する義務に違反した場合に限って過失が認められるとされています。
例えば今回の事例の場合、荷物棚からスーツケースをとる際に、スーツケースを落とすなどして他の乗客にぶつかってしまうことが予想できたか、その結果を回避するためにAさんはなんらかの対策を取っていたか、といったことが検討されることになるでしょう。
単に「不注意だった」というだけで過失傷害罪の成否が判断されるわけではないため、やはり専門家の弁護士に詳細な事情とともにアドバイスをもらうことが必要とされるでしょう。
なお、過失傷害罪は親告罪(刑法第209条第2項)となっていますので、告訴がなければ起訴されません。
ですから、過失傷害事件では迅速に示談を締結することによって不起訴処分の獲得など、寛大な処分を得ることができます。
そういった点からも、早めに弁護士に相談・依頼することが重要と言えるでしょう。
ふとした不注意から刑事事件の当事者になってしまうこともあります。
弁護士のサポートを受けることで、突然の刑事手続きへの不安や疑問を解消することにつながります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が刑事事件の始まりから終わりまでフルサポートいたします。
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