偽造大型免許で刑事事件①偽造有印公文書行使罪
偽造大型免許から刑事事件に発展したケースで特に偽造有印公文書行使罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にある運送会社で働いています。
ある日、Aさんは上司から、「Aさんが大型トラックを運転できるようになると任せられる業務も増えて助かる。給料もアップするし大型免許を取得してみたらどうだ」と話されました。
Aさんの会社では、大型免許を取得すると給料が上がる給与体系になっていました。
Aさんは普通運転免許しかもっていなかったため、その話を聞いて大型免許を取得することに決め、上司にもその旨を伝えました。
しかし、教習所に通って試験を受けたものの、Aさんは大型免許の取得試験に落ちてしまいました。
それでも給料が上がることなどをあきらめきれなかったAさんは、インターネットで偽造運転免許を購入できることを知り、自分の名義の偽の大型免許を購入し、上司に大型免許を取得したとして報告し、偽造大型免許を提示しました。
その後、Aさんは大型免許取得者として給料を上げてもらい、いわゆる大型トラックを使用する業務をこなしていました。
すると後日、Aさんは京都府京田辺市の道路で行われていた京都府田辺警察署の交通検問で運転免許証の提示を求められ、偽造大型免許を提示しました。
そこで警察官に偽造大型免許が偽物であることを見破られ、Aさんは無免許運転による道路交通法違反と偽造有印公文書行使罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんが家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に相談したところ、Aさんには詐欺罪の成立も考えられると伝えられました。
(※令和2年1月8日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)
・偽造有印公文書行使罪
今回のAさんについて、まず成立が考えられる犯罪として、偽造有印公文書行使罪という犯罪が挙げられます。
刑法158条(偽造公文書行使等)
第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
参考:刑法155条1項(有印公文書偽造罪)
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
Aさんがインターネットで購入したのは、偽造されたAさん名義の大型免許です。
そもそも、大型免許などの運転免許証は各都道府県の公安委員会によって発行されるものです。
Aさんが手に入れた偽造大型免許は、本来であれば公安委員会=公務所もしくは公務員が作成するべき文書であり、さらに公安委員会の印章(簡単に言えばハンコ)が用いられている文書です。
それを公安委員会ではない、運転免許証を作成する権限のない第三者が作成したものですから、Aさんの手にした偽造大型免許は、刑法155条1項のいう「公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造」した物であるといえます。
つまり、Aさんの購入した偽造大型免許は刑法158条の「第154条から前条までの文書若しくは図画」であるといえます。
Aさんは、その偽造大型免許を利用して大型トラックを運転し、京都府田辺警察署の交通検問で提示しています。
さらに、Aさんは会社の上司にも偽造大型免許を大型免許を取得したとして提示しています。
これらの行為はこの偽造大型免許を使っていることにほかならず、「行使」しているといえるでしょう。
そのため、Aさんはこれらの偽造大型免許の使用それぞれについて、偽造有印公文書行使罪に問われていると考えられるのです。
今回のAさんはすでに偽造された大型免許を購入しているようですが、自分で大型免許を偽造してしまったような場合は、さらに有印公文書偽造罪も成立することになります。
運転免許証の偽造や偽造された運転免許証の利用だけでも、これだけの犯罪が成立してしまうのです。
どちらも非常に重い刑罰が設定されていますから、これらの刑事事件の当事者となってしまったらすぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、偽造有印公文書行使罪や有印公文書偽造罪のご相談も刑事事件専門の弁護士がお受けいたします。
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