業務上横領事件の加害者が独力で示談交渉をした結果、被害届を出されて逮捕された事例

業務上横領事件の加害者が独力で示談交渉をした結果、被害届を出されて逮捕された事例

犯罪行為で得たお金

業務上横領事件の加害者が独力で示談交渉をした結果、被害届を出されて逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都府山科警察署は、京都市山科区にある和菓子製造会社で経理責任者として働いていた男Aを、業務上横領罪の疑いで逮捕した。
Aは、原材料の取引先への支払業務を基本的に一人で担当していた。
ギャンブルにハマったAは、お金欲しさに、実際の取引額を水増しした金額を支払ったかのように関係書類を作成して会社に報告し、その水増し分を自身の口座に振り込むようになった。
Aは、初めのうちは数万円程度を水増ししていたが、次第に大胆になり数十万円規模の水増しを繰り返すようになった結果、他部署から数字がおかしいとの指摘があり、Aの行為が勤務先Vの知るところとなった。
Vとしては、Aが謝罪して示談金を支払う旨を伝えてきたので、事件を内々に処理して表には出さないつもりだったものの、示談金の額をめぐって折り合いがつかない状態が続いた。
示談交渉でAが執拗に示談金の減額を求めてきたので、Vは、Aが開き直って謝罪する意思がないのだと考えて被害届を提出したところ、Aは京都府山科警察署に逮捕された。
(フィクションです)

業務上横領罪とは

刑法253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

業務上横領罪とは、「『業務』上自己の占有する他人の物を横領」する罪です。
業務上横領罪「業務」とは、金銭その他の財物を委託を受けて占有・保管することを内容とする職業もしくは職務をいうと解されています。

京都府山科警察署によると、Aは、会社の経理担当者として、会社のお金を管理する立場にあり、和菓子原材料の購入代金の支払業務を担当していたようです。
したがって、Aの職務は、業務上横領罪における「業務」に該当し、業務上横領罪が成立する可能性があります。

ところで、男は「他人の物を占有」していたと言えるのでしょうか?
Aの支払業務では、会社の銀行口座にあるお金を、取引先の口座に振り込む形で行っていたようですから、物理的にAの手の触れる所にお金があったわけではないようです。
判例は、横領罪における「占有」とは、物に対する事実上の支配だけでなく法律上の支配も含むと解釈しており(大判大正4年4月9日)、法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人のものを処分しうる状態のことを言います。

本件について見てみると、Aは原材料の購入のため、会社の口座にあるお金を、取引先の口座に振り込んでいたようです。
このように、Aは、経理担当者として、銀行のお金を自由に支払いにあてることができる地位にあったようですから、Aは、他人の物である会社のお金を占有していたと言えそうです。
仮に、これを勝手に引き出して私的に使用した場合には、業務上横領罪が成立する可能性があります。

そして、本罪の行為は、横領することです。
横領とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、他人の物に対し経済的用法に従って所有者でなければできないような処分をする行為です(最判24年3月8日)。
本件では、男は、会社のお金を引き出し、ギャンブルの元手として使用したようです。
お金を使うことは、その所有者にしか許されない行為ですから、Aのした行為は横領に当たる可能性があります。
以上から、本件では業務上横領罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

本件では、Aは、自分で示談交渉を行った結果、もともとAの業務上横領事件を大っぴらにする意思はなかったVの神経を逆撫でしてしまい、被害届を提出されて逮捕されるに至ったようです。

仮に早期に示談が成立した場合には、不起訴処分を得られる可能性がありますし、仮に起訴されたとしても量刑の判断でAに有利に働く可能性がありますから、早期に示談を成立させることは非常に重要です。
もっとも、本件のように、加害者自ら示談交渉を行うのは得策ではありません。
事態がこじれて良くない方向に進んでしまう可能性があります。
そこで、示談交渉は交渉のプロである弁護士にお任せすることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、業務上横領事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、被害届が提出されるのを防ぎ、事件化を防げる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部ご相談ください。

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