下着泥棒で示談①

2019-08-02

下着泥棒で示談①

Aさんは、京都府京丹後市の会社に勤務していますが、ある日、帰路にあるとあるマンションの1階のベランダに女性の下着が干してあるのが目に入りました。
Aさんは、それを見て、「どんな女性が住んでいるのだろう」と思い、帰り道にその部屋の様子を気にするようになり、Vさんという女性が住んでいることを知りました。
そしてついに、AさんはVさんの部屋のベランダ内に侵入し、干してあったVさんの下着を盗み出しました。
下着がなくなったことに気づいたVさんは、京都府京丹後警察署下着泥棒の被害に遭ったと相談しました。
京都府京丹後警察署が捜査をした結果、防犯カメラの映像などからAさんの犯行が発覚し、Aさんは下着泥棒をした住居侵入罪・窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、Vさんに謝罪し示談したいと考えており、Aさんの家族もそれに賛成していますが、どのようにしたらよいのかわからずに困っています。
(※この事例はフィクションです。)

・下着泥棒は何罪が成立する?

まずは今回Aさんがしてしまった下着泥棒行為について、何罪が成立しうるのか、そしてどういった刑罰が考えられるのか検討してみましょう。

~住居侵入罪~
最初に、AさんはVさんの下着を盗むためにVさんの部屋のベランダに侵入しています。
これは刑法130条にある住居侵入罪にあたります。

刑法130条(住居侵入罪)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

住居侵入罪にいう「住居」とは、一般に人の起臥寝食に使用される場所を指しています。
今回のAさんはVさんの部屋のベランダの内側にまで入っていますが、マンションの部屋のベランダは、部屋と一体になっているものと考えられ、Vさんが支配・管理している場所であると考えられます。
そのため、Aさんの入ったベランダの内側は、部屋の中ではありませんが住居侵入罪のいう「住居」と考えられます(「住居」でないと判断された場合でも、「建造物」には該当すると考えられ、その場合は建造物侵入罪として立件されることが考えられます。)。

そして、住居侵入罪の「侵入」は一般的に管理者の同意のない立ち入りを指すとされています。
Aさんは下着泥棒をするためにベランダ内に立ち入っているのですが、下着泥棒をしようという人に立ち入りを許可する人はいないでしょう。
下着泥棒をすることは「正当な理由」ともいえません。
したがって、Aさんはベランダに「侵入」していると考えられ、住居侵入罪にあたると考えられるのです。

~窃盗罪~
加えて、Aさんは下着泥棒をしてVさんの下着を盗んでいます。
物を盗んでいることから刑法235条の窃盗罪にあたると考えられます。

刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

「他人の財物」とは、他人が事実上管理・支配する物のことを指します。
今回の下着泥棒の事例では、Vさんの下着が「他人の財物」となります。
下着はベランダに干されていたものではありますが、先ほどの住居侵入罪でも触れたように、ベランダはVさんが事実上管理している場所であり、そこにあった下着にもその管理・支配は及んでいると考えられます。
その下着をAさんは盗んでいるのですから、Aさんには窃盗罪が成立すると考えられるのです。

なお、窃盗罪の成立には、「不法領得の意思」といって、本来の持ち主を排除して自分が持ち主であるようにふるまい、かつ、そのものの本来の用法に従ってそれを利用する意思が必要とされています。
Aさんが盗んだ下着をどのようにしているのかは事例には詳しく書いていませんが、Vさんのもとから下着を盗み出して自身の物とし、Vさんの下着というそのものに価値を見出して所持していたり利用していたりするなど効用を享受していれば、たとえAさんが実際に下着を身に着けるなどの典型的な使用方法でなかったとしてもこの意思があると認められます。

以上のことから、Aさんの下着泥棒行為は住居侵入罪と窃盗罪にあたると考えられます。

・下着泥棒の刑罰は?

Aさんの下着泥棒事件では、住居侵入罪と窃盗罪の2つの犯罪が成立します。
こうした場合、どういった刑罰が下される可能性があるのでしょうか。

Aさんの下着泥棒事件では、下着泥棒をするためにベランダ内に入る、という態様がとられています。
つまり、下着泥棒=窃盗罪という目的のために、ベランダ内に侵入する=住居侵入罪という手段を使っています。
複数の犯罪が成立した際に、その犯罪がこうした目的と手段の関係になる場合、「牽連犯」という考え方を使って刑罰の重さが考えられます。
牽連犯となった場合、複数成立している犯罪のうち最も重い法定刑で処断するとされています。
今回のAさんの場合、窃盗罪の法定刑が「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」で、住居侵入罪の法定刑が「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」であるため、より重い窃盗罪の法定刑の範囲で刑罰が下されることになるでしょう。

このように、「下着泥棒」と1個の単語にまとめられるような刑事事件でも、複数の犯罪に触れることもあります。
複数の犯罪がかかわる刑事事件では、どのような見通しになるのかもなかなか分かりづらいです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした刑事事件のご相談も、刑事事件専門の弁護士が丁寧にお受けいたします。
まずはお気軽にご相談ください。