心中事件で逮捕されたら

2019-11-06

心中事件で逮捕されたら

心中事件逮捕について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

【事件】
京都市伏見区に住むAさんは,夫が友人の連帯保証人になっていたために突然多額の借金を抱えることになってしまいました。
Aさん夫妻は共に働いて返済していましたが,しばらくすると体に無理が出てしまい次第に返済も滞っていきました。
Aさんらはしだいに精神が疲弊していき,もう死んで楽になりたいと考えるようになりました。
そしてAさんは夫に心中することを提案し,夫もこれを受け入れました。
ある晩,Aさんは寝ている夫を包丁で刺し,自身も死のうとしましたが死にきれず,京都府伏見警察署に通報しました。
駆けつけた京都府伏見警察署の警察官によって,Aさんは殺人未遂罪の容疑で現行犯逮捕されました。
Aさんの親族がこの逮捕を聞き,Aさんの話を聞いてやってほしいと弁護士を依頼。
依頼を受けた弁護士逮捕されているAさんのもとへ接見に向かいました。
(フィクションです)

【心中と犯罪】

心中とは,本来は相思相愛の仲にある男女がその愛情が変わらないことの証として双方合意の上で自殺することをいいますが,現在では広く複数人が合意の上で死を遂げる場合も心中と呼ばれます。
被害者に死ぬ意思がなかった場合は無理心中と呼ばれることもあります。

無理心中の場合は殺人罪(刑法第199条)やその未遂に問われることになりますが,被害者が死ぬことに同意していたり希望していた場合は刑法上どのような扱いを受けるのでしょうか。

刑法が規定する罪の多くは,被害者の同意の上で行われた行為は違法性がないものとして犯罪として成立しないものが多いです。
しかし,たとえ被害者の同意があっても,自殺を助けた場合には,人命の重さから医療行為における安楽死のような場面を除いて罪に問われる可能性が出てきます。

【自殺関与罪と同意殺人罪】

刑法第202条は,「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ,又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は,6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する」と自殺関与罪同意殺人罪を規定しています。

この条文によって
①自殺教唆
②自殺幇助
③嘱託殺人
④承諾殺人
の4つの類型が処罰されうることになります。

まず,①自殺教唆と②自殺幇助とを併せて自殺関与罪と表現します。
この2つは自殺者が自身の手で命を絶つことが共通しています。

教唆とは,そうするよう唆して相手をその気にさせることです。
自殺教唆の場合ですと,自殺する気がなかった人を唆して自殺する気を起こさせ,実際に自殺に至らせることで自殺教唆に問われます。

対して幇助とは,ある行為がしやすくなるように,道具を与えたり助言するなどして行為者を助けることを意味します。
自殺幇助の場合,自殺をしようと考えている人に自殺するための道具を与えたり,場所を提供したり,その他アドバイスをすること等がこれにあたります。

そして,③嘱託殺人と④承諾殺人とを併せて同意殺人罪といいます。
この2つは死にたいと願っている者を他者が殺害する点で自殺関与罪と異なります。

嘱託殺人とは,死ぬことを望む者の依頼を受け,手を下してその者を殺すことをいいます。
承諾殺人とは,殺害されることに同意するように積極的に持ちかけ,同意を得た上で殺すことをいいます。
一般に,被害者に死ぬことへの同意があったかどうかは,少なくともその行為によって死亡する可能性があることを認容していれば同意があったものと判断されます。
よって,死ぬことを意欲していたり願望していたりしていたことは必要とされません。

自殺関与罪同意殺人罪普通殺人罪(区別するためにあえてこの表現をします)は,実際上区別するのが難しい場合が多いです。
自殺や殺人について同意していたのかどうかは被害者の内心の問題であり,それを証明することは難しいからです。
そして,被害者が自殺の方法によって死亡しても,原因に他者からの強い働きかけがあり被害者に自殺するほかないと思わせていたのであれば,自殺教唆ではなく,自殺者を実行行為者とする普通殺人罪を構成する場合があります。
また,自殺することを決意している人のために毒物を食事に混ぜたり,ガスの元栓を開くことなどは,一見して自殺幇助罪なのか同意殺人罪なのか区別できません。

こうした心中事件では,自殺関与罪同意殺人罪にあたるのに殺人罪の容疑で立件されるなど不当に重い罪に問われる事態を回避するために,お早めに法律の専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。
自殺関与罪同意殺人罪殺人罪の被疑者となってしまった方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。