会社内におけるセクハラ行為の刑事事件化回避について②
事例
Aさんは、京都市下京区にある会社の社員として勤務しています。
勤務中に女性社員Vを気に入ったので、ことあるごとに不意にVさんの腰や尻を触るなどのセクハラ行為を行っていました。
ある日、Vさんの弁護士からAさんの自宅に内容証明郵便が届き、「上記セクハラ行為について慰謝料を支払ってほしい。告訴状を提出する用意もある」と記載されていました。
Aさんは、警察の捜査を受けるような事態は回避したいと考えています。
(事例は事実に基づくフィクションです。)
不同意わいせつ罪
前回のコラムでは、Aさんの行為が京都府迷惑行為等防止条例違反にあたる可能性があると解説しましたが、不同意わいせつ罪として扱われる場合も考えられます。
刑法176条1項
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
(省略)
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
(省略)
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
不同意わいせつ罪とは、簡単に説明すると、被害者が同意していないにもかかわらず、被害者の身体を触ったり、自己の身体を触らせたりすると成立する犯罪です。
今回の事例では、Aさんが不意にVさんの腰や尻を触ったようです。
突然触られたVさんはAさんの行為に同意しないと意思表示する時間がなかったといえるでしょう。
また、Aさんの方がVさんよりも会社内での立場が上だった場合、上司と部下という関係性から同意しない旨の意思表示が困難であったと判断される可能性もあります。
ですので、Aさんの行為が不同意わいせつ罪が規定するわいせつ行為にあたると判断された場合、Aさんに不同意わいせつ罪が成立する可能性があるといえます。
示談と弁護士
Aさんのセクハラ行為が京都府迷惑行為等防止条例違反や不同意わいせつ罪などの犯罪を構成する可能性がある以上、Vさんに被害届を出されてしまうと、警察による捜査が始まり、Aさんは被疑者という立場に置かれてしまう可能性があります。
先ほど解説した不同意わいせつ罪では、罰金刑の規定がなく、有罪になれば執行猶予を得られない限り、刑務所に行かなくてはいけません。
Vさんの弁護士から、「慰謝料を払ってほしい」旨の郵便が届いていることから、Aさんが慰謝料を払うことで、刑事事件化されずに済む可能性があります。
示談を締結することで、刑事事件化するリスクを減らせる可能性がある一方で、示談で合意したことは誠実に履行する必要がありますから、軽はずみに示談を締結したはいいものの示談の条件を履行できないとなってしまうと、再度刑事事件化するリスクが高まるおそれがあります。
示談交渉がうまくいったからといって、一旦表明した謝意を翻すような態度をとれば、おそらくVさんは納得しないでしょう。
示談を締結する前に、提示された示談条件で示談を締結してもいいのかどうか慎重に検討することが重要だといえます。
提示された内容で示談を締結してもいいのか悩まれる方や相手の弁護士に連絡を取ることを不安に思う方も多いかと思います。
示談やセクハラ事件についてお悩みの方は、早期に弁護士に相談し、示談交渉についてアドバイスを受けることが大切だと言えるでしょう。
また、行った行為が犯罪の構成要件にあたらない可能性もありますから、一度弁護士に相談をすることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件・少年事件に精通した法律事務所です。
セクハラ事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。