覚せい剤取締法違反

1.覚せい剤取締法ついて

薬物の全般を規制している一般法は存在せず、それぞれの薬物の種類ごとに法律が制定され、取締まられています。

具体的には、下記のとおりです。
●覚せい剤:「覚せい剤取締法」          ~ 本稿にて ~
●大麻:「大麻取締法」        ※詳しくは ~大麻取締法違反
●麻薬等:「麻薬及び向精神薬取締法」 ※詳しくは ~麻薬及び向精神薬取締法
●あへん:「あへん法」

覚せい剤取締法では,覚せい剤の輸入・輸出,所持,製造,譲渡・譲受,使用等が禁止され,それぞれに厳しい罰則が科されています。

覚せい剤を営利目的で輸入,輸出または製造した場合は,法定刑に無期懲役が含まれているため,裁判員裁判の対象事件となります。

法は,フェニルアミノプロパン(「アンフェタミン」)、フェニルメチルアミノプロパン(「メタンフェタミン」)を覚せい剤としていますが、わが国で覚せい剤として乱用されるのは主にメタンフェタミンです。

2.覚せい剤の危険性

初心者の場合、1回あたりの使用料は約0.02グラムですが、覚せい剤は体制を生じやすく、使用を重ねると同じ量では効果を感じにくくなり、徐々に使用料が増えてゆきます。

常習者では、1日に数回使用し、その合計量が1グラム程度という使い方をする方もいます。

覚せい剤の薬理作用としては以下のものが挙げられます。

①中枢神経興奮作用

覚せい剤を使用することにより、興奮作用が出ますが、不安、不穏、混乱などが生じます。

②交感神経刺激作用

覚せい剤の急性作用によって、激しい動悸や息苦しさ、発汗などの身体症状が現れることもあります。

③異常体験の出現

乱用を続けていると、離脱期の倦怠感や意欲低下などの不快体験が強く意識され、猜疑心が強まり、些細なことにこだわるなどの行動が見られます。

更に、乱用を続けると、病的に強い妄信を抱くことがあります。

④耐性と逆耐性

使用を続けていると、薬理効果が薄れ、多量を窃取するようになります。

一方、長期にわたり反復使用すると、逆に覚せい剤に対する感受性が増し、一定期間摂取を中断した後に、少量の覚せい剤を摂取した後に、急性中毒につながりやすいといわれています。

3.薬物事件の刑罰について

「薬物四法」の刑罰は下記になります。

なお、大麻の使用については、覚せい剤取締法などと異なり刑罰が規定されていません(使用に近接して大麻を所持していたり、譲り受けていたりするため、それらの行為で処罰される可能性は十分あります)。

 覚せい剤麻薬大麻あへん
 覚せい剤覚せい剤原料ジアセチルモルヒネ(EX.ヘロイン等)ジアセチルモルヒネ以外(EX.コカイン・LSD・MDMA・マジックマッシュル―ム等)向精神薬(抗うつ剤等)
輸入
輸出
製造
(単純)
1年以上の有期懲役
(営利)
無期若しくは3年以上の懲役または情状により1000万円以下の罰金併科
(単純)
10年以下の懲役
(営利)
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科
(単純)
1年以上の有期懲役
(営利)
無期若しくは3年以上の懲役又は情状により1000万円以下の罰金併科
(単純)
1年以上10年以下の懲役
(営利)
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科
(単純)
5年以下の懲役
(営利)
7年以下の懲役又は情状により200万円以下の罰金併科
(単純)
7年以下の懲役(製造なし)
(営利)
10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科
(単純)
1年以上10年以下の懲役
(製造なし、採取)
(営利)
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科
所持
譲渡
譲受
 (単純)
10年以下の懲役
(営利)
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科
(単純)
7年以下の懲役
(営利)
10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科
(単純)
10年以下の懲役
(営利)
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科
(単純)
7年以下の懲役
(営利)
1年以上10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科
(譲渡及び譲渡目的所持に限る)
(単純)
3年以下の懲役
(営利)
5年以下の懲役又は情状により100万円以下の罰金併科
(単純)
5年以下の懲役
(営利)
7年以下の懲役又は情状により200万円以下の罰金併科
(単純)
7年以下の懲役
(営利)
1年以上10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科
施用
使用
(単純)
10年以下の懲役
(営利)
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科
(単純)
7年以下の懲役
(営利)
10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科
(単純)
10年以下の懲役
(営利)
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科
(単純)
7年以下の懲役
(営利)
1年以上10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科
  (単純)
7年以下の懲役
(吸食のみ)
栽培     (単純)
7年以下の懲役
(営利)
10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科
(単純)
1年以上10年以下の懲役
(営利)
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科   

4.覚せい剤取締法Q&A

①覚せい剤取締法違反については量刑上、どのような事情が考慮されますか?

使用罪については、使用量、使用回数、使用期間、使用方法等が重視され、依存性、親和性の程度を判断することになります。

覚せい剤事犯においては、乱用者は1回あたり通常、約0.02~0.03グラムを0.25ccの水に溶かして静脈注射するとされていますので、1回あたりの使用量が上記量を超えている場合には依存性が高いと判断されることになります。

覚せい剤使用者においては、0.02グラムから使用を始めたが効果が薄くなると使用量を増やす傾向がありますので、1回あたり2グラム使用しているとかなり依存していることが分かります。

②覚せい剤事犯で起訴猶予の可能性はありますか?

覚せい剤事犯では、起訴の可能性は非常に高いです。

そのため、起訴猶予は期待しない方がよいと考えられます。

③覚せい剤事犯では保釈は難しいですか?

情勢の変化に応じて保釈率はいくらか変動しており、再犯者であっても保釈許可が出ているケースもあります。

保釈に影響するポイントとしては、

(1)公訴事実に対する認否(否認だと認められない方向へ)
(2)公訴事実の内容(量が多い、公訴事実が多数にわたると認められない方向へ)
(3)密接な関係者の存在(共犯者がいると認められない方向へ)
(4)前科の有無(同種前科があると認められない方向へ)

が挙げられます。

また、保釈金の相場はおよそ150万円程度です(保釈金は逃亡等がなければ裁判が終わると返還されます)。

所持と使用など,複数の起訴事実の場合は150万円よりも高額になることがありますし,所持量によっても金額に差が出てきます。

※保釈金を準備できないときは、日本保釈支援協等の立替え制度を利用することも考えられます。

④再犯を犯した場合、執行猶予が難しいですか?

法文上は前刑執行終了から5年以上経過すれば(全部)執行猶予を付すことができますが(刑法25条1項2号)、実際には、それほど短期間で執行猶予付判決をえることは難しいです。

相場として、前刑執行終了から7~8年といわれていますが10年程度の経過でも実刑を言い渡されているケースもあります。

なお、刑法が改正され一部執行猶予制度が設けられたことに伴い、前刑執行終了から5年以内に再犯を犯した場合(極端な例としては「刑務所から出所してすぐに薬物使用して逮捕」)に一部執行猶予が適用される可能性があります。

一部執行猶予について詳しくは ~一部執行猶予をめざす~ へ

⑤薬物事犯では示談ができませんが、反省の意を表す方法として何がありますか?

しょく罪寄付という制度があります。

しょく罪寄附とは、道路交通法違反、覚せい剤取締法違反など「被害者のいない刑事事件」や「被害者に対する 弁償ができない刑事事件」などの場合に、被疑者・被告人が事件への反省の気持ちを表すために、公的な団体等に対して行う寄附です。

被告人の反省の態度を示す情状として有利な量刑事情となりえますが、効果については被告人の資力、その行為と寄付金額のバランス、誰がお金を出したか等も考慮されることから一概に大小を論じることは困難です。

⑥薬物からの離脱のための方策はありますか?

薬物事犯においては、薬物の依存症となっている方が多く、治療やカウンセリングにつなげ、薬物を止められる環境を作ることが大切です。

カウンセリングには、精神科医や臨床心理士等の専門家によるカウンセリングも考えられます。

また、薬物依存リハビリテーションセンター(例えばDARC)等に通うことも有益です。更に、専門の治療医院に入・通院することも挙げられます。

一方、本人が治療やカウンセリングを望んでいなくても、家族が被疑者・被告人の薬物使用に悩んでいるような場合、DARCなどの自助グループに関連した薬物事件の家族会などがあります。

また、各地の保健所が薬物離脱について相談に乗ってくれます。

⑦違法捜査があったと考えられる場合、弁護士はどのような活動を行うのですか?

行き過ぎた職務質問や捜索があった場合には、違法捜査があったとして押収された覚せい剤や尿の鑑定書などの証拠能力を排除(これらの証拠を証拠として使えないようにすること)してもらうよう裁判所に働きかけることが考えられます。

また、証拠能力が排除されなくても、違法捜査により被告人が精神的ダメージを受けたこと、あるいは、事後の違法捜査を防止すべきこと等を考慮し、一般情状事実として主張し減刑を求めていくことも考えられます。

覚せい剤取締法違反に関する弁護活動

1 覚せい剤取締法違反事件で執行猶予

覚せい剤取締法違反事件については、所持や使用をして逮捕されるケースが非常に多いです。

また覚せい剤は依存性が高く、再犯者も非常に多いという点が特徴です。

覚せい剤取締法は、覚せい剤の輸入、輸出、製造、所持、使用などで懲役刑を規定しています。

そのため、起訴されると無罪や執行猶予にならない限り、懲役刑で刑務所へ入ることになります。

初犯の事件の場合、再発防止策を講じることで執行猶予になる可能性はあります。

しかし、覚せい剤は依存性が高いため、繰り返し覚せい剤など薬物犯罪を起こしている場合には、厳しい判決が予想されます。

執行猶予判決の獲得へ向け、被疑者本人の真摯な反省や薬物依存症への治療、家族などの監督環境を整える等して、社会の中で更生するべきであることを説得的に主張していきます。

一旦刑務所に入ってしまうと、刑期を終えた後の社会復帰に時間がかかることや、再就職が難しいなど不都合が生じます。

実刑判決を避け、執行猶予を獲得したい場合には、すぐに弁護士へご相談ください。

2.依頼者の方と相談しつつ、必要であれば矯正プログラムの検討とともに証拠提出の上、再犯防止に向けてサポート

薬物事犯を起こした方には、再犯をされる方が多い傾向にあります。

犯罪行為を辞めたいと思いながらも、自らをコントロールできずに繰り返してしまう方が多いです。

このような場合には医療機関などの専門機関への受診と治療などを行い、根本からの改善を試みることもご提案いたします。

3 覚せい剤取締法違反事件で事実を争う

覚せい剤の所持や譲り渡し等の事件では、たとえば中身を知らされず運ばされた場合のように、違法な物とは知らずに行った行為で検挙されることが考えられます。

違法性の認識については、それが覚せい剤であるという認識までは要求されず、違法な薬物であるという程度の認識で足りるとされているため、知らなかったという弁解はなかなか通用しませんが、本当に知らなかったような場合には、犯罪が成立しないのですから、客観的な状況をもとに無実であることをしっかりと主張する必要があります。

4 覚せい剤取締法違反事件で身柄拘束を解く

覚せい剤取締法違反事件の場合、逮捕から勾留、起訴、起訴後勾留と身柄拘束が長期化しやすいといえます。

覚せい剤の入手ルート、共犯者などについて証拠隠滅をしやすいことなどがその理由とされています。

しかし、長期の身柄拘束は、その後の社会復帰にも悪影響を及ぼします。

刑事事件の経験豊富な弁護士は、逮捕・勾留段階から不服申し立てを行い、また起訴後には、適宜保釈請求をするなど、早期に身柄拘束を解くための弁護活動を行います。

5.裁判員裁判について

営利目的の輸出・輸入・製造の場合には、裁判員裁判対象事件となります。

裁判員裁判では、連日の集中審理が行われますので、そのために入念な事前準備が必要となります。

弁護士としては、公判前整理手続きの中で、積極的に証拠の開示を求めるとともに、弁護側からの主張を立て、何処が争点となるのかをしっかりと把握したうえで、公判での訴訟活動に向けた準備を行う必要があります。

裁判員裁判では、集中した審理を行うために、公判までに膨大な資料を精査し、何が有利な証拠となるのかを見極めたうえで、しっかりとした主張構造を整える必要があります。

裁判員裁判において、充実した弁護を行うためには、高い弁護技術が求められます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に扱っており、数多くの刑事事件の経験を基に、裁判員裁判についてもお力になれるはずです。

覚せい剤事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へお問い合わせください。

覚せい剤取締法違反事件の経験豊富な弁護士による最善のアドバイスを受けることができます。

刑事事件を専門に取り扱う弁護士が、直接「無料相談」を行います。

被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。

 

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら