改正法情報・その他

  1. 刑事訴訟法の改正
  2. 通信傍受法の改正
  3. 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)
  4. コンピュータやインターネットに関する犯罪
  5. 刑法など改正点

 

1.刑事訴訟法の改正について

時代に即した刑事司法制度を構築するため、刑事訴訟法が改正されました。

具体的には、「取調べの結果得られる供述調書への過度に依存することから脱却する」というものです。

被害者および事件関係者を含む国民への負担にも配慮しつつ、真正な証拠が検出され、被告人側においても、必要かつ十分な防御活動ができる活発で充実した公判審理を実現するという狙いもあります。

以下では、今後施行予定である改正点のうち、いくつかをピックアップしてみます。

 

(1)取調べの全過程の録音録画制度の導入

  1. 裁判員裁判対象事件及び検察独自捜査事件で身体拘束中の被疑者取調べについては録音・録画義務を認め、機器の故障や被疑者による拒否など一定の例外事由を除き、全過程の録音・録画が行われます。
  2. 検察官は、対象事件に係る被疑者調書として作成された被告人の供述調書の任意性が争われたときは、当該調書が作成された取調べ等における被告人の供述及びその状況を録音・録画した記録媒体の証拠調べを請求しなければなりません。

詳しくは、~取調べの可視化を参照~

 

(2)司法取引制度

司法取引には2種類あります。

1つは、自分の罪を認めるのと引換え、国家が恩恵を与える(例えば不起訴等)ものです(自己負罪型)。もう1つは、被疑者・被告人が、共犯者等の他人の犯罪事実の捜査や訴追に協力することと引き換えに、弁護人の同意のもと検察官が恩典を付与することを合意するものです(捜査協力型)。

今回の刑事訴訟の改正では、後半の捜査協力型が規定されました。

但し、すべての事件に適用されるのではなく、薬物銃器犯罪を中心とした組織犯罪として行われる可能性の高い犯罪と、財政経済犯罪(いわゆる租税法、独禁法又は金融商品取引法)に限定されています(但し、今後、拡大の可能性があります)。

そして、被疑者・被告人に与えられる利益・恩恵は、「不起訴、罰金、一定の求刑にする」というものです。

ただし、以下の問題点等があり、今後の運用・動向が気になります。

  1. 虚偽供述のおそれが高い。
    司法取引をする人は、特定の犯罪の主犯格の者より下位の共犯者であることが多いと予想され、責任転嫁の供述を行うことが危惧されています。
  2. 捜査官の想定通りの供述が作られる危険性
    被疑者・被告人御取調べにおいて、捜査官が、捜査官が想定する内容の供述を示唆しながら、司法取引を働きかけて、被疑者・被告人に大きな利益・恩典を示し、捜査官が想定する内容の供述を得ようとすることが危惧されています。

 

(3)刑事免責制度

刑事訴訟法146条で「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる」として保障された証言拒絶権を、その証人の刑事事件についてその証言及び当該証言から派生して得られた粗油子の使用を禁止することと引き換えに、はく奪する制度です。

なお、対象事件は限定されていません。

しかし、刑事免責の対象となる人は、他人の犯罪についての情報を有しており、しかも、刑事訴追を受けるおそれがあるものであることから、通常、被疑者または参考人として、実際に捜査官からの取調べを受けている者と思われます。

そこで、自らが刑事責任から免れるために、検察官に刑事免責制度を利用してもらいたいと考えて、検察官に迎合して、検察官が求めているような内容の供述をして、他人を引込み、他人に責任を転嫁するような虚偽供述を行うおそれ等が危惧されています。

 

2.通信傍受法の改正

通信傍受法とは、捜査機関が通信関連会社(NTT等)に出向いて組織的犯罪を取り締まるために通信を傍受する法律のことです。

現在、対象の犯罪としては「薬物関連犯罪」「銃器関連犯罪」「集団密航犯罪」「組織的殺人」の4つですが、対象犯罪が大きく広がる予定です。

(1) 爆発物使用、未遂(爆発物取締罰則1条、2条)

(2) 刑法関係
(ア) 現住建造物等放火(刑法108条)、未遂
(イ) 殺人(刑法199条)、未遂
(ウ) 傷害、傷害致死(刑法204条、205条)
(エ) 逮捕監禁(刑法220条)、逮捕等致死傷(刑法221用)
(オ) 未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐等(刑法225条~228条)
(カ) 窃盗(刑法235条)、強盗(刑法236条)、強盗致死(刑法240条)、未遂
(キ) 詐欺等(刑法246条、246条の2)、恐喝(刑法249条1項)、未遂

(3) 児童ポルノ等の不特定多数に対する提供等、提供等目的による製造等(児童ポルノ規制法7条6項、7項)
※新しく加えられた犯罪の傍受令状の発布には、当該罪に当たる行為が、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限る」という組織要件が加わっていますが、この要件が不明確であり、ちょっとした共犯事件でも対象犯罪にあたる可能性があるとの指摘がされています。
また、国民のプライバシーを不当に侵害するおそれがあることも懸念されており、本法律の運用には慎重さが要求されます。

 

3.組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)

組織的に行われる殺人や詐欺などに対して、刑法などで定められる通常の刑罰よりも重い刑罰をし、犯罪収益の没収を行い、組織的な犯罪を根絶することを目指したものです。

例えば、振り込め詐欺グループのメンバーに適用されます。

 

4.コンピュータやインターネットに関する犯罪

①電子計算機損壊等業務妨害罪(234条の2第1項)

現代では、コンピュータを使って業務が行われることがほとんどです。

そこで、本罪は,コンピュータに対する加害行為を手段とするものを業務妨害罪の一類型とするとともに、偽計・威力業務妨害罪よりも重く処罰しています(5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する)。

 

②不正アクセス禁止法

他人のコンピュータに直接あるいはネットワークを通じて、他人のID番号やパスワードなどを利用して他人になりすまして、あるいは、コンピュータの弱点(セキュリティホール)をついて不正にアクセスし、他人のコンピュータを利用できる状態にする行為を禁止する規定です(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)。

 

③不正指令電磁的記録に関する罪(刑法168条の2第1項)

「正当な理由がないのに」「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」コンピュータウイルスを作成、提供する行為および「正当な理由がないのに」コンピュータウイルスを人の電子計算機における実行の用に供する行為が処罰されます(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)。

なお、「正当な理由がないのに」「人の電子計算機における実行の用に供する目的」で行われるコンピュータウイルス等の取得行為(コンピュータウイルス等であることを知ったうえで、これを自己の支配下に移す一切の行為)、保管行為(コンピュータウイルス等を自己の実力支配内に置いておくこと)も処罰されます(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)。

 

④電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)

コンピュータを使用して虚偽のデータを作成したり、虚偽のデータを使用して不正な処理を行ったりした場合に処罰される犯罪です(10年以下の懲役)。

例えば、ATM機により他人の預金を自己の口座に振替送金する行為が挙げられます。

 

⑤支払用カード電磁的記録に関する罪(163条の2)

クレジットカードのスキミングをしてカード情報を取得した場合に支払用カード電磁的記録不正作出準備罪が成立します(10年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。

なお、スキミングをしなくとも、スキミングに使用するスキマーや不正なカード作成の原材料を用意した場合も処罰されます(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。

また、人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、不正に作られた電磁的記録を構成部分とするクレジットカードその他の代金・料金支払用のカードまたは預貯金の引出用カードを所持した場合にも処罰されます(5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する)。

つまり、不正に作られた支払用カードの場合には、これを(人の財産上の事務処理を誤らせる目的で)所持するだけで、本罪が成立し処罰されます

 

⑥電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2)

人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利・義務・事実証明に関する電磁的記録を不正に作った場合に成立罪する罪です(5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。

例えば、窃取したキャッシュカードから磁気ストライプ部分を複写、印磁し、別のカードを不正に作出したうえ、これを利用してATM機 から現金を窃取したときは、私電磁的記録不正作出罪、同供用罪と窃盗罪が成立し、牽連犯(※)となります。

(※)牽連犯とは、数罪を犯した場合でも、犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れる場合は、訴訟法上一罪と扱われることをいいます。
そして、最も重い刑で処断されることとなります(刑法54条1項後段)。

 

5.刑法など改正点(平成28年6月23日施行)

刑事訴訟法改正の狙いの1つとして、「真正な証拠が検出され被告人側においても、必要かつ十分な防御活動ができる活発で充実した公判審理を実現する」というものがありますが、これを担保すべく刑法、その他法令において「証拠隠滅等の罪の法定刑」が引き上げられました。

 

①証人不出頭(刑事訴訟法151条)、宣誓証言拒絶(同161条)

⇒1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
※証人として召喚を受け正当な理由がなく出頭しない者に対して科せられます。

 

②犯人蔵匿等(刑法103条)、証拠隠滅等(104条)

⇒3年以下の懲役又は30万円以下の罰金
※罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿(隠匿場所の提供)し、または隠避(蔵匿以外の方法により官憲による発見・逮捕を免れしめるべき一切の行為)した場合に処罰されます。
例えば、身代わり犯人として出頭すると犯人隠避罪が成立します。
一方、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者に対して科せられます。

 

③証人等威迫(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)

⇒2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
※自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者に対して科せられます。

 

④組織的な犯罪に係る犯人蔵匿、証拠隠滅、証人威迫等の罪(組織犯罪処罰法7条1項1号~3号)

⇒5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
※組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律には本罪の特則規定が置かれており、禁錮以上の刑が定められている罪に当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われた場合、その罪に係る犯人隠避、証拠隠滅、証人等威迫に該当する行為について処罰されます。

 

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