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SNS上で同僚を「反社」などと中傷した疑いで逮捕

2024-01-14

SNS上で同僚を「反社」などと中傷した疑いで逮捕

逮捕、連行される男性

SNS上で同僚を「反社」などと中傷した疑いで男が逮捕された事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都市中京区の営業会社で働くAは、自分と営業成績を争っている同僚のBが、期末に強引な手法で契約を取りにいった様子を見て、SNS上で「Bは反社。契約をとるためなら汚い手段を躊躇なくとってくる。」などとBを中傷する内容の投稿をした。
これを知ったBは京都府中京警察署に被害届を提出したところ、Aは名誉棄損罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)。

名誉棄損罪

刑法230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

刑法は、名誉棄損罪を規定することで、社会が人に対して与えるプラスの評価を守ろうとしています。

本件で、Aは「公然と」「事実を摘示して」人の名誉を棄損したといえるのでしょうか?

まず、「公然と」とは、摘示された事実を不特定または多数人が認識しうる状態をいいます(最判昭和36年10月13日)。
不特定とは、相手方が限定されていないという意味です。
多数人とは、社会一般に知れわたる程度の人数という意味であり相当の多数であることを必要とします。
本件では、Aは、SNS上でBを反社だとする投稿をしています。
SNSに投稿された内容は、だれでも見ることができますから、Aによって摘示されたBが反社だとする投稿は、不特定の人が認識しうる状態にあったといえますから、「公然と」人の名誉を棄損したといえそうです。

次に、「事実を摘示」したといえるかも問題となります。
ここでの事実とは、事実証明の対象となりうる程度に具体的であり、かつ、それ自体として人の社会的評価を低下させるような事実をいいます。
Aの「Bは反社」とする投稿は、真実かどうか証明の対象となりうる程度に具体的です。
加えて、反社であるといわれると、Bさんは世間から関わってはいけない悪人だと思われて社会的評価が低下する可能性があります。

以上より、Aは、公然と事実を摘示して人の名誉を棄損したとして、名誉棄損罪が成立する可能性があります。

条文にも書いてある通り、ここでの事実とは、真実だけでなく虚偽の事実も含まれます。
したがって、仮にBが本当に反社でありAの投稿が真実であっても名誉棄損罪の成立は妨げられません。

なお、条文の規定上、名誉棄損罪の成立には、現実にBの名誉が棄損されたことが必要であるかのように思えます。
しかし、被害者の名誉が現実に棄損されたかどうかの判断は非常に困難ですから、判例によれば被害者の名誉が現実に侵害される必要はありません(大判昭和13年2月28日)。

できるだけ早く弁護士に相談を

名誉棄損罪親告罪、すなわち検察官が起訴するために被害者などの告訴が必要な犯罪です(刑法232条)。
名誉棄損罪親告罪とされるのは、起訴されることで、かえって被害者の名誉を侵害する恐れがあるためです。
実際に他人の名誉を毀損する行為をして、被害者が告訴をした場合、起訴前に告訴を取り消してもらえるかどうかが非常に重要になってきます。
告訴の取下げに成功すれば、不起訴処分となり前科がつくこともないからです。

もっとも、不特定の人の目に触れる形で、自分のことを「反社だ」などと言って、社会的な評価を下げさせかねない発言をしてきた加害者に対して、被害者は強い処罰感情を抱いている可能性が高いです。
したがって、加害者が自ら示談交渉をして、告訴の取下げを含めた示談を成立させるのは困難です。
そこで、示談交渉のプロである弁護士に示談交渉をお任せすることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、名誉毀損事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行い、告訴を取り下げてもらうことで不起訴処分を得ることができる可能性があります。
一度起訴されてしまうと、告訴を取り下げることはできません。
ですので、可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部ご相談ください。

足を踏まれて激怒し相手に土下座を強要した事件

2024-01-05

足を踏まれて激怒し相手に土下座を強要した事件

胸ぐらを掴む男性

コンビニで誤って足を踏んできた相手に対し、土下座と謝罪を強要した事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事案

京都市西京区にあるコンビニで買い物をしていた男性(46)が、下校中の男子高校生(16)に足を踏まれたことに激怒し胸ぐらを掴んだうえ、「痛いなぁ!謝れ!土下座しろ!」などと大声をあげて謝罪と土下座をさせた。
被害にあった男子高校生は、友人と話しながら店内を歩いており、周囲のようすを確認できておらず誤って男の足を踏んでしまった。
被害男子高校生が泣きながら帰宅し両親が被害届を提出したため、西京警察署は店内のカメラから男を特定し、強要罪の疑いで一度署まで出頭するよう要請している。
(事案はフィクションです。)

強要罪

刑法223条1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

強要罪が成立するには、①強要の手段として脅迫・暴行を加えたこと、②人に義務のないことを行わせたこと、又は人の権利行使を妨害したこと、③強要の手段である脅迫・暴行と、強要の結果との間の因果関係が必要です。

本件では、男は男子高校生の胸ぐらを掴んでいます。
強要罪における暴行とは、人に対する有形力の行使を意味しますから、男の胸ぐらを掴む行為は強要罪における暴行と言えそうです(①)。

次に、男は男子高校生に謝罪と土下座をさせていますから、これが人に義務のないことを行わせたことになるのかが問題となります。
たしかに、悪気はなかったとしても人の足を踏んでしまったのであれば、法的義務はなくても、社会倫理上謝罪すべき義務があるといえるかもしれません。

この点、強要罪における義務とは、法的義務に限定するという立場(法的権利義務限定説)があります。
この立場に立てば、足を踏んだことに対して謝罪することは法的義務ではない以上、強要罪における義務を男子高校生は負っていないことになり、男は義務なき行為をさせたとして強要罪が成立する可能性があります。

これに対し、強要罪における義務とは、法的義務に限定されず社会倫理上の義務も含むという立場(無限定説)があります。
この立場に立てば、男子高校生には人の足を踏んでしまったため社会倫理上謝罪する義務があるといえそうであり、社会倫理上謝罪する義務があるのであれば強要罪における義務に含まれることになります。
そうすると、男は、男子高校生が負っている義務をさせたことになりますから、強要罪は成立しない可能性があります。

もっとも、本件で男は、謝罪だけでなく土下座までさせています。
うっかり人の足を踏んでしまったとしても、土下座させるのはやりすぎでしょう。
法的にはもちろん社会倫理的にも土下座をする義務はないと思われますから、土下座させた点をとらえて、男が「人に義務のないことを行わせた」といえそうです(②)。
したがって、男には強要罪が成立する可能性があります。

さらに①暴行と②土下座の因果関係も必要です。
本件では、高校生は男に胸ぐらを掴まれて怒鳴られたために土下座したようなので、因果関係もあるといえそうです(③)。
以上より、本件では強要罪が成立する可能性があります。

出頭の前に弁護士に相談を

本件では、被害届を受けた西京警察署が男を特定して出頭するように要請しています。
出頭すれば、取調べを受けることになります。
取調べでは、調書にサインを求められる可能性があります。
取調べの結果を記した調書はサインすることで裁判になったときの強力な証拠となるので、不利な調書の作成を防ぐためにも取調べの前に何をどう話すのか精査する必要があります。
もっとも、法的な知識が十分になくては、精査することは困難です。
そこで、法律のプロである弁護士に一度ご相談されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、強要事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
初回の相談は無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。
無料法律相談のご予約は、0120-631-881にて受け付けております。

偽装心中!愛人をだまして一人で心中させた男が殺人罪で逮捕

2023-12-24

偽装心中!愛人をだまして一人で心中させた男が殺人罪で逮捕

逮捕、連行される男性

愛人をだまして一人で心中させた男が殺人罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事案

京都府伏見警察署は、京都市伏見区に住む薬品関係の会社を経営する男(45)を殺人罪の疑いで逮捕した。
京都府伏見警察署によると、男は妻子ある身であったが不倫関係にある秘書から「奥さんと別れて私と結婚してほしい。できないなら一緒に死のう」と心中を迫られた。
男は心中するつもりはなかったが、その場にあわせ「一緒に心中しよう」と答え、致死量を超える薬を2人分用意し、相手に先に飲ませて自殺させ、自分は飲まなかったとのこと。
(フィクションです)

殺人罪と自殺関与罪

刑法199条 殺人罪
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

本件で男は、199条の殺人罪の嫌疑で逮捕されています。
しかし、亡くなった女性は、男が用意した致死量の薬を自ら飲んで自殺したとのことですので、殺人罪ではなく202条の自殺関与罪とはならないのでしょうか?

刑法202条 自殺関与罪
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ(…)た者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

202条の自殺関与罪は、さらに自殺教唆罪自殺幇助罪に分かれます。
自殺教唆罪とは、自殺意思のない者を唆して自殺を決意させ、自殺を行わせることです。
自殺幇助罪とは、自殺の決意を有する者の自殺行為を援助し、自殺を遂行させることです。
本件では、女は自分から一緒に死のうと心中をもちかけていますから、男が一緒に死んでくれるという条件付きであるものの自殺の決意を有していたといえそうです。
加えて、男は、致死量の薬を用意して自殺行為を援助し、女に自殺を遂行させています。
したがって、202条の自殺幇助罪が成立するのではないでしょうか?

偽装心中

結論として、判例は、偽装心中のケースでは一貫して199条の殺人罪を適用しています。
最高裁は、女性から心中を申し出られ同意したが、途中で気が変わったのに後を追うように誤信させて女性のみに毒物を飲ませて死亡させた偽装心中の事案にて、被害者は加害者の欺罔の結果、加害者の追死を予期して死を決意したのであり、「その決意は真意に添わない重大な瑕疵ある意思」であるから、殺人罪に該当すると判示しています(最判昭和33年11月21日)。

本件も、被害者の女性は、加害者の男性が一緒に死んでくれると騙されて、死ぬことを決意したようですから、仮に男に死ぬつもりがないと知っていれば、被害女性は死のうとはしなかったでしょう。
そうすると、被害女性の死ぬ決意は、真意に添わない重大な瑕疵ある意思といえます。
判例に従えば、本件でも殺人罪が成立する可能性が高いでしょう。

身体拘束の長期化のおそれ

殺人罪は、刑法の規定する犯罪の中でも法定刑が重くなっていますから、裁判の結果下される量刑も重くなる可能性が高いため、逃亡のおそれがあるとして釈放や保釈が認められづらい犯罪です。

警察に逮捕された被疑者は、逮捕から72時間以内に、「勾留」という逮捕に引き続く10日間の身柄拘束の必要性について、検察官と裁判官から判断されます。
弁護士は、検察官と裁判官に対し、勾留に対する意見書を提出することができますから、このタイミングで釈放を求めることができます。
したがって、早い段階で弁護士に相談して、意見書を提出する機会を逃さないことが大切です。

仮に、釈放されずに起訴された場合、次にすることができることは裁判所に対する保釈請求です。
保釈が認められた場合、保釈金を支払うことで身体拘束から解放されます。

たしかに、殺人罪釈放保釈が認められずらいものの、絶対に釈放保釈が認められないわけではありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件の豊富な弁護経験のある法律事務所です。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約は、0120-631-881にて受け付けております。

人気ラーメン店で食中毒⁉業務上過失致傷罪で書類送検

2023-12-20

人気ラーメン店で食中毒⁉業務上過失致傷罪で書類送検

手錠とガベル

人気ラーメン店で食中毒が発生し、店長が業務上過失致傷罪で起訴された事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事案

ラーメンの激戦区として知られる京都市左京区にある人気ラーメン店「さしすせそ」本店で、食中毒が発生した。
「さしすせそ」本店でラーメンを食べた人たちが、腹痛や下痢を訴え病院に運ばれたことがきっかけで保健所の検査が入り、同店の名物である生チャーシューを原因とする食中毒だとわかった。
厚労省は、豚肉の中心部の温度が63℃で30分以上加熱するよう求めているところ、同店の店長は、この基準を知らなかったためにを同基準を満たさない調理をしていたとのこと。
京都府下鴨警察署は、同店長を業務過失致傷罪で書類送検した。
(フィクションです。)

業務業過失致傷罪とは

刑法211条前段
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

業務上過失致傷罪「業務」とは、「人が社会生活上の地位に基づき、反復継続して行う行為であって、他人の生命、身体等に危害を加えるおそれのあるもの」です(最判昭和33年4月18日)。
上記の業務概念は①社会生活上の地位に基づくこと、②反復継続性があること、③生命・身体に対し危険な行為であること、の3つの要素からなりたっています。

本件で書類送検されたのは、ラーメン店の店長ですから、飲食業者という社会的地位に基づいてラーメンを製造し提供していると言えます(①)。
また、ラーメン店を開業しているわけですから、反復継続性も問題なく認められるでしょう(②)。
それでは、ラーメンの製造、提供は③生命・身体に対し危険な行為といえるのでしょうか?
ラーメンの製造、提供は、厚労省の基準にしたがって適切に調理されている限り、危険な行為にはならないといえるでしょうが、今回のように食べ物は適切に調理されなかった場合、食中毒を招き腹痛や下痢、最悪の場合には死に至ることさえあります。
したがって、ラーメンの製造、提供は、生命・身体に対し危険な行為であるといえるでしょう(③)。

ですので、本件のラーメン店「さしすせそ」の店長がラーメンを製造する行為は業務上過失致傷罪「業務」に該当する可能性が高いといえます。

加えて、業務上過失致傷罪は、「業務上必要な注意を怠」ったといえることが必要です。
本件に即していえば、ラーメン店「さしすせそ」の店長は、チャーシューを作るにあたって、豚肉の中心部の温度が63℃で30分以上加熱する必要があったところ、それを知らずに不適切な調理をしていたようですので、業務上必要な注意を怠っていたといえそうです。

今回、業務上過失致傷罪が問題となっていますから、その成立には傷害結果が生じたことも必要です。
傷害とは人の生理機能を侵害することをいいます(大判明治45年6月20日)。
本件の被害者は腹痛や下痢をうったえていますから、店長は、人の生理機能を侵害したと評価される可能性があります。

以上から本件では業務上致傷罪が成立する可能性があります。

できるだけ早い段階で弁護士に相談を

業務上過失致傷罪は被害者のいる犯罪です。
早い段階で被害者に真摯な反省と謝罪を伝え、示談を成立させることで事件化を防いだり不起訴処分を獲得することができるかもしれません。
仮に、起訴されたとしても示談が成立していることをふまえて量刑が軽くなる能性もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、業務上過失致傷罪を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、事件化や起訴を防ぐことができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約は、0120-631-881にて受け付けております。

『爆弾をしかけた』と私立大学に電話して業務を妨害した男

2023-12-13

『爆弾をしかけた』と私立大学に電話して業務を妨害した男

手錠とガベル

『爆弾をしかけた』と私立大学に電話して業務を妨害した疑いで、男が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都市左京区にある私立大学に、『大学構内に爆弾を仕掛けた。農薬の研究を中止しないと爆破する』などと電話があった。
京都府下鴨警察署は、威力業務妨害罪の疑いで、会社員の男性(34)を逮捕した。
(フィクションです)

威力業務妨害罪とは

威力業務妨害罪とは、威力を用いて人の業務を妨害するおそれのある行為をすると成立する犯罪です(刑法234条)。

威力業務妨害罪が成立するための要件は以下の3つです。
①業務妨害手段として「威力」を用いたこと
②妨害の対象が「業務」であること
③妨害行為により業務が妨害されるおそれがあること

「威力」について

まず、威力とは人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことを意味します。
具体的には、殴るなどの暴行を受けた場合や「殺すぞ」などと脅迫された場合のほか、多数人で集合して怒号する行為も含まれます。
近年の裁判例を見てみると、上記定義にぴったりあてはまらないような行為であっても、公然と行われる妨害行為を広く「威力」を用いたものとする傾向が見られます(中森「刑法各論」74頁、山口「基本判例に学ぶ」55頁)
本件の場合、男は仕掛けた爆弾を爆破すると脅迫しているので、業務妨害手段として「威力」を用いたと評価できるでしょう。

「業務」について

次に、業務とは、職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務とされています(大判大正10年10月24日)。
例えば、タクシーの運転手がお客さんを目的地まで運ぶための車の運転や、洋食屋さんの店員がお客さんに提供するオムライスをつくる行為などは業務にあたります。
逆に、休日にツーリング目的で自家用車を運転する場合や、お母さんが夕食にオムライスをつくる行為は、社会生活上の活動ではないため業務に該当しません。
本件では、男が脅迫の電話をした先である大学では、大学職員や研究者が働いています。
彼らは継続して大学の事務手続きや研究などをしているわけですから、社会生活上の活動を継続して行っているといえますので、彼らの仕事は業務妨害罪における業務に該当します。

③妨害行為により業務が妨害されるおそれがあること

本件のように、大学に爆破予告がされた場合、大学職員は脅迫電話への対処のため学生等を非難させたり警察に通報したり、本来すべき業務に支障をきたす危険性があります。
研究者も本来すべき研究活動を中止して、避難せざるをえないかもしれません。
したがって、本件の男の爆破予告は業務を妨害するおそれがあったといえるでしょう。

以上より、本件では業務妨害罪が成立する可能性があります。

威力業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。(刑法233条234条)
ですので、威力業務妨害罪で有罪になった場合には、懲役刑が科される可能性があります。

弁護士に相談して事件の早期解決を

威力業務妨害罪は被害者が存在する犯罪です。
被害があればその被害弁償をして被害者と示談を成立させることが、事件の早期解決にとって重要となります。
被害届が出される前に示談が成立すれば、警察沙汰にならずにすむかもしれませんし、仮に事件化した後に示談が成立した場合でも起訴前であれば、不起訴処分となるかもしれません。

もっとも、爆破予告された被害者からすると、加害者と直接連絡をとることを怖いと思うのが自然ですし処罰感情も高いでしょうから、示談交渉に応じてくれない可能性があります。
そこで、示談交渉は交渉のプロである弁護士にお任せすることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、威力業務妨害事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、事件化や起訴を防ぐことができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約は、0120-631-881にて受け付けております。

タバコを注意され逆上した男性が相手の自転車を破壊した事件

2023-12-06

タバコを注意され逆上した男性が相手の自転車を破壊した事件

ハンマーを振りかざす男性

タバコを注意され逆上した男性が、相手の自転車を蹴って壊した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事案

京都市左京区にあるマンションの駐輪場でタバコを吸っていた住人(56)が、同マンションに住む大学生に喫煙を注意されて大声で激怒し、同大学生の自転車を蹴って前輪のホイールを変形させた。
加害者の住人は、騒ぎに気づいた周辺の住民からの通報でやってきた京都府下鴨警察署の警察官に器物損壊罪の容疑で現行犯逮捕された。
(事例はフィクションです。)

器物損壊罪とは

器物損壊罪を規定する刑法261条は、「他人の物を損壊し、または傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」としています。
まず、ここでいう「他人の物」に公用文書、私用文書、建造物又は艦船は含まれません。
これらのものを壊すなどして使えなくした場合には、器物損壊罪ではない別の犯罪が成立します(刑法258条〜260条)。

次に、「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為のことを言います。
物理的にものを壊して使えなくさせる行為はもちろん、食器に尿をかける行為のように心理的に物を使えなくさせる行為も含まれます(大判明治42年4月16日)。

本件では、加害者は被害者の自転車を蹴って前輪を変形させたとされています。
前提として、自転車は公用文書等ではありませんから器物損壊罪の対象だと言えます。
自転車の前輪が変形した場合、前輪を左右から挟み込んでいるフロントフォークに引っかかり前に進めなくなったり、進めたとしても真っ直ぐ進めなくなります。
したがって、加害者が自転車を蹴った行為は、自転車を本来の用途通りに使えなくさせる行為、すなわち自転車を損壊する行為であり、器物損壊罪が成立する可能性があります。

親告罪とは

器物損壊罪は、親告罪といって、告訴がなければ起訴されない犯罪です(刑法264条)。
告訴とは、被害者をはじめとする告訴権者が捜査機関に対して、犯罪にあったことを申し出て犯罪者の処罰を求めるための手続きです。
被害届という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
被害届は、犯罪にあったことを捜査機関に申し出る点で告訴と共通しますが、犯人の処罰を求めているということまで意味するものではない点などで異なります。
本件では、被害にあった大学生が告訴をしない限り検察官は起訴することができないこととなります。

なるべく早く弁護士に相談を

起訴されなかった場合、有罪となることも前科がつくこともありません
したがって、器物損壊罪を犯してしまった場合、告訴されるかどうかが非常に大きな意味を持ちます。
仮に、一度告訴されたとしても、起訴される前に被害者が告訴を取り下げてくれれば、やはり検察官は起訴することができなくなります。
したがって、器物損壊罪を犯してしまった場合、被害者に謝罪や被害弁償をして告訴をしないように、仮にすでにされていた場合は取り下げてもらうようにお願いする必要があります。

もっとも、加害者本人が直接被害者側とこのような示談交渉をするのは望ましくありません。
被害者は通常、加害者に対して強い処罰感情を有していることが想像されますから、示談交渉に応じてもらえない可能性が高いです。
仮に、応じてもらえたとしても、相場より高い被害弁償の額を要求され、折り合いがつかず交渉が決裂し告訴される可能性もあります。

そこで、示談交渉のプロである弁護士にお任せすることをおすすめします。
第三者的立場から弁護士が被害者と交渉をすることで、被害者が感情的になり生産的でない言動をすることを避けることができるかもしれません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
逮捕前であれば、初回無料で弁護士に相談していただけます。
逮捕後の場合には、弁護士を留置場まで派遣させていただきます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
詳しくは0120-631-881までお電話ください。

【事例紹介】ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件②

2023-12-01

【事例紹介】ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件②

人を刺そうとしている人の影

前回のコラムに引き続き、センター職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
今回のコラムでは、裁判員裁判について解説します。
殺人未遂罪については前回のコラムで解説していますので、殺人未遂罪に興味のある方は、前回のコラムをご覧ください。

事案

(前略)京都府警右京署によると、同日午前7時50分ごろ、同センターの男性職員(65)=西京区=が同僚の男にサバイバルナイフで左脇腹を刺されて重傷を負い、救急搬送された。同署は殺人未遂の疑いで、下京区小稲荷町、同センター職員の男(59)を緊急逮捕した。
(中略)「殺してやろうと思って刺したのではない」と容疑を否認している。

(11月16日京都新聞「ごみ処理場の男性職員が同僚に刺され重傷 殺人未遂の疑いで緊急逮捕」より引用)

裁判員裁判って?

本件報道によると、容疑者は殺人未遂罪の疑いで逮捕されているとのことです。
仮にこのまま殺人未遂罪で起訴された場合、原則として裁判員裁判となります。

裁判員裁判では、国民の中から選ばれた裁判員6人が裁判官3人とともに、被告人が有罪かどうか、有罪の場合にはどのような刑にするのか決める制度です。
このような国民が裁判に参加する制度は、アメリカやフランスなど欧米でも行われており、司法に対する国民の信頼向上につながることが期待されています。

裁判員裁判になるのはどのような事件?

起訴された刑事事件の全てが裁判員裁判となるわけではありません。
裁判員裁判の対象事件は、①死刑又は無期の懲役・禁固にあたる事件もしくは②法定合議事件(裁判所法26条2項2号)のうち故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた事件です(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項)。

具体的には、殺人罪現住建造物等放火罪傷害致死罪保護責任者遺棄致死罪など、国民の関心が高い重大な事件がこれに該当します。
ですので、本件容疑者が殺人未遂罪で起訴された場合には、原則として裁判員裁判によって裁かれることになります。

裁判員裁判に詳しい弁護士に相談を

上述のように、裁判員裁判では普通の国民が裁判員として審理に加わります。
裁判員は法律の専門家ではないため、専門用語を多用するのではなく、裁判員に向けてわかりやすく丁寧な説明をすることが必要不可欠です。

また、裁判員裁判では、裁判員がいることを踏まえて迅速な裁判の実現のため通常の刑事裁判とは手続きが異なる部分があります。

裁判員裁判の参加する刑事裁判に関する法律49条では、「裁判所は、対象事件については、第一回の公判期日前に、これを公判前整理手続に付さなければならない。」と規定しており、裁判員裁判が行われる場合には、公判前整理手続を行う必要があります。
公判前整理手続では、犯罪にあたる行為や罪名の明確化、争点や重要となる証拠の整理などが行われます。
公判前整理手続後に新たに証拠を提出することは原則できなくなりますので、公判前整理手続で、有利になるような証拠を集め証拠請求をする必要があります。
万が一、公判前整理手続で十分な証拠を得られない状態に陥ってしまいますと、裁判員裁判で窮地に立たされる可能性が非常に高いです。
そういった事態をさけるためにも、刑事事件に精通した弁護士に相談をすることが望ましいといえます。

加えて、裁判員裁判では、裁判官と裁判員の双方の意見を含む過半数の意見により決まります(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律67条1項)。
ですので、少しでも科される罪を軽くするためには、裁判官だけでなく、裁判員に対するアピールも必要になってきます。
先ほども述べましたが、裁判員は国民から選ばれた一般人ですので、法律の専門的な知識に触れたことがない方がほとんどだと思います。
そういった裁判員の方にも弁護士の主張を認めてもらうためには、わかりやすい弁論を行う必要があります。

公判前整理手続や弁論の仕方に工夫が必要など、裁判員裁判は通常の刑事裁判と比べて、非常に特殊ですので、裁判員裁判が控えている方は、裁判員裁判に詳しい経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
刑事事件に詳しい弁護士に依頼し、スピーディな裁判員裁判の手続を踏まえた弁護活動を行うことで、少しでも良い結果を得られるかもしれません。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は0120-631-881にて受け付けております。

【事例紹介】ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件①

2023-11-29

【事例紹介】ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件①

人を刺そうとしている人の影

ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪の容疑で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事案

(前略)京都府警右京署によると、同日午前7時50分ごろ、同センターの男性職員(65)=西京区=が同僚の男にサバイバルナイフで左脇腹を刺されて重傷を負い、救急搬送された。同署は殺人未遂の疑いで、下京区小稲荷町、同センター職員の男(59)を緊急逮捕した。
(中略)「殺してやろうと思って刺したのではない」と容疑を否認している。

(11月16日京都新聞「ごみ処理場の男性職員が同僚に刺され重傷 殺人未遂の疑いで緊急逮捕」より引用)

殺人未遂罪

刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

大まかに説明すると、殺人罪は人を殺した場合に成立する犯罪です。
ただ、人を殺せば必ずしも殺人罪が成立するわけではなく、殺人の故意がある場合にのみ成立します。
殺人罪の故意とは、簡単に言えば、人を殺そうとする意志です。
例えば、交通事故で人を死亡させてしまった場合、加害者は被害者を殺そうと思って事故を起こしたわけではないでしょうから、殺人罪ではなく過失運転致死罪などの別の罪が成立することになります。
一方で、殺す意思をもって車で人を轢き殺した場合には、故意が認められますから、殺人罪が成立することになります。

また、殺人罪未遂であっても罰せられます(刑法第203条)ので、殺す意思を持って人に危害を加えた結果、その人が死に至らなかった場合でも殺人未遂罪として罰せられることになります。

本件では、容疑者が同僚の左脇腹をサバイバルナイフで刺し、殺人未遂罪の容疑で逮捕されたようです。
本件の容疑者は「殺してやろうと思って刺したのではない」と容疑を否認していると報道されていますが、容疑者に被害者を殺そうとする意志があったかどうかは、どのように判断するのでしょうか。

繰り返しになりますが、殺人罪殺人未遂罪が成立するためには、人を殺そうとする意志が必要です。
ですが、加害者が人を殺そうと思って危害を加えたのかについては、加害者以外知りようがないことです。
であれば、加害者が殺す意思を持っていたかどうかは加害者にしか判断できず、加害者が殺す意思はなかったと容疑を否認すれば、故意がないことを否定できませんから、殺人罪は成立しないことになってしまいます。

ですので、殺す意思があったかどうかについては、加害者の供述以外にも、動機や凶器の有無、危害を加えた箇所や回数、加えた力の強さなど客観的な部分も含めて総合的に判断されます。
例えば、ハンマーで人の頭を数十回殴って殺してしまった場合に、殺すつもりはなかったと、殺す意思を否定した場合であっても、ハンマーで頭を数十回殴れば人が死ぬことは誰でもわかることですから、殺す意思があったとして殺人罪が成立する可能性が高いです。

本件では、容疑者が被害者の脇腹をサバイバルナイフで刺したとされています。
腹部には重要な臓器が多数ありますし、サバイバルナイフであれば1度刺されただけでも致命傷を負いかねません。
ですので、本件では、殺す意思があったと判断され殺人未遂罪が成立するおそれがあります。
また、殺す意思があったかどうかについては、様々な観点から複合的に判断されますので、本件も含め、ナイフで腹部を刺した場合でも殺人罪殺人未遂罪は成立せず、傷害罪傷害致死罪にとどまる可能性もあります。

殺人罪と釈放

殺人罪殺人未遂罪は、他の犯罪と比べて科される量刑が重くなる可能性が高いため、逃亡のおそれがあるとして釈放や保釈が認められづらい犯罪です。

刑事事件では、逮捕されてから72時間以内に、検察官が勾留請求をする必要があるかを判断します。
勾留請求が必要だと判断された場合には、検察官によって勾留請求がなされ、裁判官が勾留の判断を行います。
弁護士には検察官が勾留請求を行う前と裁判官が勾留の判断を行う前の計2回、勾留請求に対する意見書を提出する機会、すなわち釈放を求める機会があります。
この2回の機会を失ってしまうと、勾留満期である勾留決定後10日までに釈放を求めることができるのは勾留決定後に行う裁判所への準抗告の申し立ての1回のみになってしまいます。

勾留満期を迎える際には、一度だけ勾留期間10日間延長することができます。
この際にも弁護士は勾留延長請求に対する意見書を検察官や裁判官に提出することで、釈放を求めることができますし、勾留延長が決定した後に準抗告を申し立てることが可能です。

また、釈放されずに起訴された場合には、裁判所に対して保釈請求を行うことになります。
保釈の場合には、勾留中釈放とは異なり、保釈金を納める必要があります。
保釈が認められた後に保釈金を納めることで、身体拘束が解かれることになります。

先ほども述べたように、殺人罪殺人未遂罪の場合は釈放が認められづらく、一度も釈放保釈がされないまま裁判に突入してしまう可能性が高いです。
釈放保釈が認められづらいとはいえ、必ずしも釈放保釈が認められないわけではありません。
弁護士が釈放保釈の必要性、家族の監督により逃亡のおそれがないことを訴えることで、釈放保釈が認められる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
弁護士に相談をすることで釈放保釈を実現できる可能性がありますので、ご家族が逮捕された方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービスのご予約は、0120-631-881までご連絡くださいませ。

3歳男児を浴槽に放置し溺死させた容疑で保護責任者遺棄致死罪で逮捕された事件

2023-11-26

3歳男児を浴槽に放置し溺死させた容疑で保護責任者遺棄致死罪で逮捕された事件

3歳男児を浴槽に放置し溺死させた容疑で保護責任者遺棄致死罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事案

交際相手の息子を浴槽に放置して溺死させたとして、京都府警宇治署は30日、保護責任者遺棄致死の疑いで、宇治市の建設業の男(29)を逮捕した。
逮捕容疑は30日未明、男の自宅浴室で、交際相手の女性の長男(3)と入浴した際、湯が張られた浴槽内で男児を放置したまま立ち去り、溺死させた疑い。
同署によると、男は、入浴していた男児が玩具を欲しがり、取りに浴室から約20分間離れ、見つからずに戻ったところ、男児がうつぶせで溺れていたと話している。(中略)男は「間違いない」と容疑を認めているという。

(京都新聞7月31日「3歳男児を浴槽に放置し溺死させた疑い」より引用)

保護責任者遺棄致死罪とは

保護責任者遺棄致死罪(刑法219条)とは、保護責任者遺棄罪を犯した結果、意図せず被害者を死亡させてしまった場合に成立する犯罪です。
保護責任者遺棄罪は、218条に規定されています。

刑法218条
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。

保護責任者遺棄罪は、客体と主体が限定されています。
まず、客体は「老年者、幼年者、身体障害者又は病者」です。
幼年者が何歳までを指すのか明確ではないですが、旧刑法336条1項は8歳未満と規定しており、裁判例を見ると2歳から14歳までの実子4人を家に置き去りにした事案で遺棄罪の成立を認めたものがあります(東京地裁昭和63年10月26日)。
本件報道では、死亡した被害者は3歳とのことですから、幼年者にあたると言えるでしょう。

次に主体は「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者」です。
「保護する責任」はどのような場合に発生するのでしょうか?
通説や判例では、法律契約条理などが保護責任が生じる根拠としてが挙げられます。
例えば、幼児の世話をしている親は保護責任者に該当しますし、実の親でなくとも子供の世話を依頼しているベビーシッターなども保護責任者にあたります。

本件では、容疑者が交際相手の3歳の息子を浴槽に放置したとされています。
本件の容疑者は保護責任者に該当するのでしょうか。

先ほども述べたように、通説や判例では、法律契約条理などの観点から保護責任の有無を判断します。
法律は民法などの法律で規定されているものを指します。
例えば民法第730条では、直系親族は互いに扶け合わなければならないと定めていますので、親は子供について保護責任があると解すことができます。
契約については、委任契約などが当たりますので、ベビーシッターなど子供の世話を委任する契約を結んだ場合には、ベビーシッターにも保護責任があると考えられます。
次に条理ですが、これは社会通念などを指します。
ですので、世間一般的に見て保護責任があると認められるような状況であれば保護責任が認められることになります。
例えば、交際相手の連れ子の面倒を頻繁に見ていた場合、実子や契約に基づいた関係でなくとも、他所から見ると保護責任があるように映るでしょうから、連れ子の場合でも保護責任があると考えられます。

本件報道では、容疑者は3歳の交際相手の息子との入浴途中に当該被害男児を放置して、自分だけ外に出たとされているようです。
報道から察するに、容疑者は被害男児をお風呂にいれていたようですので、被害男児の世話をしていたと解されます。
条理の観点からみて、被害男児の世話をしていたと考えられる容疑者は保護責任者に該当する可能性があります。

「遺棄」とは

保護責任者遺棄罪の行為は「遺棄」「不保護」です。
両者の違いは、主体と客体との間に場所的離隔が生じるものかどうかで区別されます。
場所的離隔を要する遺棄は、さらに移置置き去りに分類されます。
移置とは、要扶助者を危険な場所に移転させることをいい、置き去りは行為者が離れていき要扶助者を危険な場所に放置することを言います。
不保護とは、間近にいて世話をしないことです。

本件報道によりますと、容疑者は入浴中に、3歳の被害男児を湯が張られた浴槽内に放置して一人だけ浴室の外に出て行ったようです。
浴槽にどれくらいのお湯が張られていたのかはわかりませんが、3歳の子供では少量のお湯でも溺れる可能性は十分にあります。
1分目を離しただけでもその間に浴槽で溺れてしまうおそれもあり、大人の目がない場所で子供を浴槽に放置する行為は子供の命を脅かす可能性がある危険な行為だといえます。
ですので、本件報道の、3歳の被害男児を浴槽に20分放置したとされている行為は「置き去り」、つまり「遺棄」に該当する可能性があります。

以上より、本件では保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。
そして、本件では遺棄の結果、被害男児は死亡しているとのことなので、保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性があります。

なるだけ早く弁護士にご相談を

保護責任者遺棄致死罪の罰則は、3年以上20年以下の有期懲役であり(刑法219条、218条、205条、12条1項)、非常に重たいです。
また、保護責任者遺棄致死罪が問題となる事件では、殺人の故意があると評価され保護責任者遺棄致死罪ではなく殺人罪が成立してしまう可能性があります。
殺人罪の法定刑は、死刑又は無期もしくは5年以上の懲役です(刑法199条)。
殺人の故意がなかったのであれば、取調べ段階で警察官や検察官に対して、その旨をはっきり主張する必要があります。
もし、取調べ殺人の故意があったと受け取られかねない言動をしてしまった場合、それが証拠として用いられて殺人罪が成立してしまうかもしれません。

取調べでどのように対処するかによって、量刑だけでなく成立する犯罪まで変わってしまう可能性がありますから、取調べ前に何をどのように話すか精査する必要があります。
もっとも法律の知識がない人にとって、何をどう話すか精査することは非常に困難です。
そこで、法律のプロである弁護士になるべく早く相談することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
経験豊富な弁護士になるべく早い段階で会うことで、今後の見通しや取調べに対して的確なアドバイスを受けることができます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談のご予約は0120―631―881にて受け付けております。

京都市バスの運転手の胸ぐらを掴み、公務執行妨害罪の疑いで川端署の警官に逮捕された事件

2023-11-15

京都市バスの運転手の胸ぐらを掴み、公務執行妨害罪の疑いで川端署の警官に逮捕された事件

被害者の胸ぐらを掴む暴行を加える加害者

京都市バスへの駆け込み乗車を拒まれ腹を立てた男が、運転手の胸ぐらを掴んだとして公務執行妨害罪の容疑で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事案

京都市バスの車体をたたき、運転手の胸ぐらをつかんで運転を妨害したとして、京都府警は19日、放射線技師の男(65)=京都市中京区=を公務執行妨害の疑いで逮捕し、発表した。「走って乗ろうとしていたのに発車したので腹が立った」と容疑を認めているという。
川端署によると、男は3月28日午後8時ごろ、女性運転手(40)の胸ぐらをつかみ、運転業務を妨害した疑いがある。男は熊野神社(京都市左京区)前の停留所を出発したバスを追いかけ、後部のドア付近をたたき停車させて乗り込んだ後、車内では「走っているのがわからんのか、ぼけ」と暴言も吐いたという。(後略)

(2019年6月19日 朝日新聞デジタル「駆け込み乗車拒まれ「ぼけ」市バス追いかけ妨害容疑」より引用)

公務執行妨害罪と職務

刑法95条1項は、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」として公務執行妨害罪を規定しています。

公務執行妨害罪は、公務員による公務の円滑な執行を守ることを目的として規定されています。
ですので、公務執行妨害罪が成立するためには、公務員の職務の執行に対して、暴行や脅迫が加えられる必要があります。
例えば、職務時間外に暴行や脅迫が加えられた場合、公務員による公務の円滑な執行が妨げられることはないので、公務執行妨害罪は成立しません。

では、本件の京都市バスの運転手がバスを運転する行為は公務員の職務にあたるのでしょうか。
判例では、公務員の職務について、「ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれる」としています(最判昭和35年3月1日)。
京都市バスの運転手は公務員にあたりますので、京都市バスの運転手の主な業務であるバスを運転する行為は、間違いなく公務員の職務に該当するでしょう。

公務執行妨害罪の暴行、脅迫

公務執行妨害罪における「暴行」とは、公務員に向けられた不法な有形力の行使をいいます(最判昭和37年1月23日)。
先ほども書きましたが、公務執行妨害罪の規定は、公務員による公務の円滑な執行を守ることを目的としており、公務員の身体の安全そのものを守ることを目的としているわけではありません。
したがって、暴行が公務員の「身体」に向けられていることまでは要求されていない点が特徴です。
ですので、警察官が押収した証拠品を壊す行為など、一見すると暴行にはあたらないような行為でも、公務執行妨害罪が規定する「暴行」に該当します。

また、公務執行妨害罪が規定する「脅迫」についても、脅迫罪が成立する行為よりも広く規定されています。
ですので、脅迫罪では脅迫にあたらないような害悪の告知であっても、公務の執行が妨害されるおそれがあるのであれば、公務執行妨害罪が規定する「脅迫」にあたります。

本件では、容疑者の男は公務員である京都市バスの運転手の胸ぐらを掴んだとされています。
胸ぐらを掴む行為は間違いなく暴行にあたりますので、実際に容疑者が京都市バスの運転手の胸ぐらを掴んだのであれば、公務員に向けられた不法な有形力の行使があったと評価できます。
したがって、報道されている容疑者の行為は公務執行妨害罪が規定する「暴行」にあたる可能性が非常に高く、容疑者に公務執行妨害罪が成立する可能性があります。

できるだけ早く弁護士への相談を

公務執行妨害罪では、被害者が警察官の場合は現行犯逮捕されることが多いですが、本件のように被害者が警察官以外の場合には現行犯逮捕はされずに後日逮捕されるケースもあります。

当然、逮捕されてしまうと、いつも通り仕事に行くことはできません。
逮捕はある日突然されますから、前もって職場に欠勤の連絡を入れることもできず、無断欠勤になってしまう可能性が非常に高いです。
逮捕後、勾留されてしまうと、勾留期間は最長で20日間にも及びますから、長い間、職場と連絡をとれない状況に陥ってしまうことも少なくありません。
長期間、職場に連絡を入れられないことで、上司に逮捕されたことを知られてしまうおそれがありますし、無断欠勤が続き連絡が取れないことで解雇されてしまうことも考えられます。

逮捕前に弁護士に相談をしておくことで、弁護士が警察官へ働きかけを行い、逮捕を回避できる可能性がありますし、逮捕された場合でも早期に身柄開放活動を行うことで、勾留されずに釈放を認めてもらえる可能性があります。
早い段階で動くことで、あなたやご家族様にとって有利に進むこともあるでしょうから、公務執行妨害罪などの刑事事件を起こしてしまった際は、なるべく早く弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、公務執行妨害事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
身柄開放活動に精通した弁護士に相談をすることで、早期釈放を実現できるかもしれません。
公務執行妨害罪でお困りの方は、できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。

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